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戻れないもの

 日常の変化は極限へ達した。最早、転移したあの世界と遜色は無くなった。

 

 建物の統一性は失せ、街に〈亜人種〉が店を構えて誰もが〈人間〉として扱われている。人々の服装は好き勝手を極めこれまでのものに、毛皮、鱗、鎧、サイバーと、場違いなぞ知らないようだ。


 そしてゼノムの端末をONにしていれば、どこからか勝負の爆音が聞こえる。


「決闘、コマ、射出機構……」


 更にスイッチを切り替え、目まぐるしいホログラフを見る。全対象のせいなのだが。


「あっ!? 『向こう側』だった人だ!」

「やっべ!」


 少女に指差しで身バレしたので壁を走る。


 あの時は完全に失念だった。そりゃ、生死をかけた上に、神と戦った事のある人物が、あんなDMMORPGをしてトップに行かない方がおかしいのだ。


 身元は完全に特定され、ほとんどの情報が回された。誰だよ、寝大を晒した奴は。


 壁を、屋根を駆け抜けて目的地へと到着した。


「また窓からかよ……〈暗殺〉って認識阻害とかあったよなぁ?」

「俺の体内のゼノム由来が、他人のそれに共鳴してんだよ」

「……言われてみれば、俺自身の感知能力ではない……」

「んで、こいつはまだ寝てんのか?」

「ククラが言うには、断固拒否だそうだ」


 病院の一室、そこで雅人は眠り続けている。原因はゼノムのような、彼自身のせい。


 

『持ち合わせているけど言おうか? 俺の出身校はな』


 どことも知らない学校での事件が続いた。正しく別人のようだった。


『演技上手いな』

『演じる必要がないからね。身を守る為に逆を言うなんて無いし』

『なぁ、さと』

『それで呼んでいいのは』


 本当に知らない地名と住所が飛び出た。雅人の血の気がなくなっていくのが見えていた。


『……ゼノ』

『ゼノムだ。二度と間違えるな』

『………』

『終わったな』


 俺達が入室した時には遅かった。雅人の精神か魂は、完全に停止していたのだから。



「やはり、どうしようもないか…」

「可能性はある。独自の転移陣で向こうに」

「どうなっていると思う」


 河東に問い詰める。ゼノムという異分子を楽しめる存在、戦乱や天災は全て予定と想定の中、そんな女神が治めるのが世界だ。ここをゼノムに解放し、好きに使わせているのだろう。

 そんな彼女が他の世界で地獄を創らないはずがない。きっと、この世界でも知らぬ所で、血を血で洗うような事態は起きている。いや、起きている場所も俺達(プレイヤー)は知っている。


「PvPのように、レイドのように。画面の向こうは『現実』だった。仮に雅人が異世界に行っていたとして、戦闘は免れない」


 キャラがリアルとなって動画配信をした。『彼ら』は元より生きていたのだ。それがただ、液晶や紙を通して見えて、フィギュアや着ぐるみとして触れられた。これが俺達の世界。


「しかし〈無〉はお望みではなくってな」

「ゼノム……」


 ここもあっちも、多分、全ての天上に座する存在が現れた。少しは伸びたはずの能力も、奴には一切通じない。


「〈無〉に誘うって、本当に邪悪だな」

「択を狭めた気がしないんだけどね」

「どっちが呑まれたか、認めるか。四択なんですがそれは」

「俺が呑まれたとして決別のような事はしたぞ。性癖と思想に大差ないし?」


 転生し街を使えず、配下を殺され知り合いを殺し、一度は愛妻を失い、神に追放され、女神を弄び、【邪神】と決着した男。本当にゼノ・クラックと大差がないのだろうか。少なくとも【邪神】は出現しそうにない。


「さてと、次の大会の願いを聞き届けなきゃ」

「なぁ、ゼノム。最近の囚人が…消えたわ」


 用件が終わり次第、ゼノムは消えた。


「なぁ、雅人。常に悪ノリな悟って考えてみれば、ゼノムで良いもんだぜ」

「うーん。聞こえていた場合、地獄に突き落としたね」


 認め切れず崩壊した奴が悪いが、治らないのも目覚めが悪い。

設定集のように 邪神 はあるけど

別にこっちでやってもいいよね!


追記:力がなくて続かない時が一番、困るわ

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