『全天録』チャート:ルシュフェル
友人が騎士にハマったようだな……。
黒い深い世界、罪人の檻、敗者の在りし場。
「そう……貴様が比較的、干渉しやすいのはここだ」
【『「とはいえこれ以上は無理だよ」』】
「【外】の誰であろうな…【邪神】【有】【癒の者】それ以外の誰であっても、遥かなる存在」
【『「規格外過ぎる。まさか俺が狂うとは」』】
ルシュフェルは〈奈落〉に一週目の通りに落とされ、全てを待っていた。
そして謎に声がすればそれは、ヴェラドのものである。
彼女が幽閉されておおよそ二年、〈万象庫〉を見た限りでは、まだ初代の神が存在している時だ。そこに最後の神が声を届けている。
「という事はやはり【外】には筒抜けか。所詮はその程度と」
【『「最初から観察しているだろうさ。ゼノムの性格に近いんだぞ」』】
「ふぅ……余はここであの男を待つ事しか出来ぬ」
【『「俺は時々しか声を送れない」』】
「よいよい、ゼノムに暴かれぬようにするのも重要なのだ」
『最初から』。それは、彼女達が掌の上でしかない事を示している。何をしようが、【外】の観測可能域から出る事はない。
【『「どのみち俺達はするのさ。外からのを」』】
神が全てを創ったのだから、当然だ。どの言動も可能な時点で、【外】の想定内。
「ではなヴェラド」
【『「…制限時間が見えるのかい?」』】
「既知なのだから【本体】を使おうが、かまうまい」
【『「またね。クレイス」』】
嫌みのようにヴェラドは別れを告げた。ルシュフェルは無心となり、漆黒の世界を感じる。
『偉大なる自由が為に堕ちた明星よ。善しも悪しも見せるは六対が翼。美徳と大罪の間に揺れるは人の様。深淵を覗きし人が失うものを、汝は持ち続け、監獄にて唯一の光明を射す。今こそ、その対を地上へ齎せ〈獄頂翼顕現〉』
ルシュフェルの前に門が開かれる。覚えていた詠唱とは異なるものの、召喚対象としては唯一なのだから問題ない。ゼノムならば『全天録』へ自身の発想を使うように、改変していても自然だ。してこそゼノムだ。
「余を喚ぶのは貴様か……?」
(ウヒョー黒髪の艶がパネェ。肌は白く四肢はエロス。しかも目が補食対象を見る目だ。あぁ美人の舌に転がされて食事ということで体内に落ちる。そこから吸収ということでの一体化……身近な存在になれるって良いよね)
「そうだとも。こちらから質問がある」
安定の変態だった。そして大きな差異が出ている。
『ククラとやら』
[うぃー、秘匿回線なんで気ぃせんといてや]
『何故、シュアがこの場に居る?』
[速報。ゼノム氏、略奪愛を実行した模様]
『……シュアが無事にフェリオスに到着して、通常通り猪が試練に向かい、その間に?』
[的確過ぎて笑うしかない]
ルシュフェルも笑うしかない。変化がないようにしたいものが、ゼノムによって変わるのだから。
試練への追加条件だけで済ませれば、本来の流れと変わらないはずである。
『シュア、ゼノムとは』
『お城の中だよ?』
事前に会った訳でもなく、突発的な衝動で世界が変わるとは。最早【邪神】対策など考えている状況ではない。
このように秘匿回線で会話しながら、本来と同様に話を進める。
「其方、何かが接近しておるぞ」
「シュアを頼む」
「そんな命令で良いのか?」
「今、やるとは思えないからな」
存在しないはずのシュアに対しては、普通の対応をゼノムはする。しかし、こうした読みは何なのだろうかと、ルシュフェルは思った。
(…む…!)
適当に景色を見渡すルシュフェル。そこにはもう一人のゼノムがいて、不意に目が合ってしまう。
彼の声は常に【外】混じり。このルシュフェルの心の揺れは、間違いなく視られた。
『ククラ、もう一人のゼノムが接近している』
[適当に流しとけ。〈奈落〉で【外】付きヴェラドと会話してんなら、今更感があるし]
もう一人のゼノムが、歩きから加速して一瞬で間を詰めた。
「【やはり】【見えているな?】」
「ふっ……真意は語らんぞ」
「【俺にはどうでもいい事だ】【ルーシーを可愛がる】【シュアと遊ぶ】【あれには情報を渡さない】」
ルシュフェルの頬を撫でながら、ゼノムはそう言った。あれ、というのは間違いなく『全天録』を再生しているゼノムだろう。
【外】は、動作を面白がっている証明であった。
追記:
初のぶつ切りの気がする。
え?チャートの意味が明らかに違う? 立てても崩れるものだからね
シカタナイネ




