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『全天録』チャート:オークゥ

「では、ここに手を加えるとするか」


 懐かしき、そして忌まわしき景色に戻って来た。自惚れ、犯され、捨てられたあの世界に。


「グギョオォォォォォォォォォォ!!」

「そうか、まだ通常の〈竜〉であったか」


 敵の察知が早く、強襲されたが何も問題ない。過去の我でさえ突破したのだ、短縮を目的とした今の我が術にかかれば。


「一撃だ〈王竜掌〉」


 大振りの割には速い尻尾の横薙ぎに乗り、背後より心臓を捉える。滅亡の波動を掌底により流し込めば、一瞬にして生命に終わりを齎す。


「烏に貪られ、なおも尽きぬ魔力が動かしたのか」


 覚えていなかった部分が鮮明に見られる。どうしてあぁなったのか、が実際に行われているのは収穫だ。


「支配領域とするには……やはり烏共の巣であろう」


 こういったダンジョンの制覇基準を、ゼノム世界で学習した。少なくとも場所と敵種族のコンプリートは必要であり、後は縛りプレイ的な条件だった。


「偶然にも出来るやも知れんから」


 烏を〈投擲〉で撃破する事が、条件に含まれている可能性がある。ちょっとした手間で、解決出来るならやるべきだ。


 前の時から烏は我を食料として見ていない。間違いなく持ち運べる大きさと重さのはずなのに、何もして来ない。先の〈竜〉が頂点であり、新たな頂点となった我を避けているのだろう。


「この砦は餌場でしかないのか?」


 烏の行動を観察して、砦や遺跡部分には巣はなかった。卵も見当たらないのは疑問でしかなく、下手をすると、アロクルの定めた魔法的出現方式である可能性が出た。


「まぁ、良い。強制世代交代だ」


 銀星芒に〈竜気功〉を当てる。すると一直線に脳天を狙いに来た。


「貴様も血の気が多いものよのう」


 初撃を回避された銀星芒は、翼を畳んで我を見据えている。静かなる殺意に満たされた目に、生を感じる。

 あぁ、ゼノムが我らに勝負をかけるのはこういう場面でしか、発生しえぬ情があるからだな。


 烏が跳ぶ。我の頭上へ岩を落とし、背後には氷の棘を置き、自らの周囲からも弾を出して、嘴での一突きを通しにかかっている。


「〈集核拳(エル・フィスト)〉」


 〈風皇之陽威(エア・スティラ・エル)〉の副産物の拳を、銀星芒の嘴に合わせる。


 衝突して粒が飛散するのが見える。が、烏の生気に衰えを感じなかった。

 思えばわざわざ戦う必要がないからと、我もゼノムも放置しており、そして焼失したのがこの世界であり。検証という意味では、ゼノムは全てを試していないのだ。


「化物がすぐ側に在るとはな!」

「ガア!」


 烏は体勢を整え、空へと向かった。恐らく〈竜〉として戦って欲しいのだろう。


「良かろう。禁忌へ成りし皇族の真なる力を味わい、感謝しながら果てよ」


 身体が変化してゆくが、二週目では感じた事のない熱が出ている。一週目と違い〈竜〉の誇りが深く輝いているおかげと思えた。


「流石に〈神龍〉形態は無理か。十分だがな」


 烏が〈ブレス〉の溜めを始めた。中々にレアな行動と思えるが、ゼノム知識の中に〈リバース〉があった事を思い出す。


「礼に応じる。〈風皇之陽威〉」


 口の前に魔法陣が浮かび、魔力が収束する。互いに最終技法を出したのだから、何も悔いる事はない。


 灰色の空に閃光が走る。遅れて来るは衝撃波。安定した飛行が困難になり落ちながら下を見れば、建物は何も起きていないかのように健在だった。



「死せる地としてはこんなものか。後は鍛練と装飾をしつつ、ゼノムが来るのを待つ」


 何度も核撃を行い風と土地を殺しきった。ゼノムの到来が待ち遠しい。


「んんっ?」


 遠く、山を越えた先に業火が見えた。世界を焼いている炎がある。


「まだ奴等は来ておらん……【邪神】か?!」


 自力での脱出が不可能な状態で【邪神】による過去改変。非常に不味いが、打てる手はない。


「オウガ!」


 絶望の状況に聞き慣れた声がした。何故か、煌びやかなヤハラとクレア、そしてゼノが駆け込んでいる。


「外で何かあったようだな」

「内乱よ! この絵は長く持たない!!」


 本当に訳が分からない。大幅に世界がズレた事以外、何も見ようがない。


『ともかく、ここでゼノを殺しておいて! 衝撃的な出会いなんだから!』

『キルカウントのタイミング。重要』


 不安になるが、ズレの修正を図るようだ。確かに死んだタイミングというものは、強烈に覚えているものだろう。


「知らんな。我を連れたくばせめて、その力を示すが良い」

「状況を解っているの?! このままだと消滅するのよ!!」

「我は〈竜〉が皇族ぞ。環境程度で我が決めた事を、変えてなるものか」

「……流石だぜ、やはりロリ王族ってのはデカイ……ではいざ、勝負!」


 この男は相変わらずの性癖であった。

追記:作業場と姿勢が同じだと、すげえデジャブが出やすい事を理解した

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