夏の終わりの妖怪談
『妖怪』
みなさんはこの言葉を聞いてどんな姿を思い浮かべますか?
水木しげる先生が描く、鬼太郎や猫娘やぬりかべといった妖怪達ですか?
都市伝説に出てくる口裂け女や人面犬といった妖怪でしょうか?
一般的に、妖怪は小さい頃の方が見ると云われていますが、大人になってから、それも働きだしてから、僕は数多くの妖怪達を見るようになりました。
そして、どれも人の姿をしているのです。
今回は、僕が大人になってから出会うようになった、本には載っていない、世にも恐ろしい妖怪達の話をしようと思います。
まず妖怪、俺我俺我。
何でも自分が一番じゃないと気がすまないんですね。この妖怪は。
普通の人間だと思って話しかけていたら、痛い目にあいます。
いつの間にか自分の話にすり替わって、自慢話に変化させていますね。この妖怪は。
怖いですね。恐ろしいですね。
似たような妖怪に、魔雲斗徒利がいます。
ここ間違えやすいです。テストに出ます。
俺我俺我の方が素です。天然です。天然妖怪です。
魔雲斗徒利の方が悪意がある場合がありますね。養殖妖怪です。
まぁ、どっちもクソです。
次に、妖怪、重箱隅付憑。
まるで重箱の隅を突いてくるように、ミスを指摘してきますね。いや、ミスを期待してますね。
なまはげの「悪い子はいねぇか」のように。
中年ハゲの「ミスした奴はいねぇか」です。
まるで取り憑かれたように『監視』という妖術を使い、精神攻撃を仕掛けてきます。
「今やろうとしてました」なんて言おうものなら、『それは言い訳』という、世にも恐ろしい言霊を投げてきます。
怖いですね。恐ろしいですね。
でも、嫌な妖怪ばかりでもないんです。色んな姿の妖怪がいます。少し会社から離れてみましょう。プライベートでもいるんですね。
妖怪、隠須田蝿。
久しぶりにみんなと会って食事をしようとしたら、ちょっと待ってとばかりに、スマホを取り出し、パシャリ。
飯が冷めるじゃねーかと。
どこに行っても何を見ても、スマホ越しに、パシャリ。
大丈夫。君の心の容量は、スマホの容量に負けていない。
自信を持って、スマホを置いて。
目で記憶しよう。心に刻もう。
妖怪は飯が好きなのか、隠須田蝿のほかにも出てきます。
妖怪、レモンかけ娘です。
かけないんですね。聞いてくるんです。
「レモンかけていい?」 「レモンかけていい?」
鶏の唐揚げに何の恨みがあるんでしょう。
でも、レモンかけ娘はとても優しい妖怪なのかもしれません。
「かけていいよ」と、答えるとブシャーっとかけて居なくなるのです。座敷わらしのようなものかも知れませんね。
最近、街を歩いていると、人の足にまとわり付く妖怪をよく見ます。
妖怪、『葦葉矢似』です。
そんなに急いで、どこに行くのだろう。
この妖怪は人間をどこに向かわせているのだろう。
サラリーマン、OL、学生、大学生。色々な人の足にまとわり付いています。きっと自分の足にも。
そんな時は、日陰に座り、ひとつ深呼吸をしています。
社会に出てから色々な妖怪に出会うようになりました。これからも、もっとたくさんの妖怪に出会うでしょう。
良い妖怪。悲しい妖怪。寂しい妖怪。優しい妖怪。
あなたの会社や学校にもいませんか?
上司や先輩に腹を立てていませんか?
嫌なこともあるでしょう。舌打ちすることもあるでしょう。
だけど上司や先輩が悪い訳ではないんです。だって彼等の所為ではなく、彼等にまとわりついている、妖怪達の所為なのですから。
そんなことを思いながら、今日も僕は日常を歩いて行くのです。
色々な妖怪達と共に。