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ボクサー異世界へ行く  作者: 如月文人
第一章 ようこそ異世界へ
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第一章 其の二


「とはいえ何から手をつけたもんだかな~」


 冒険者ギルドに併設された酒場の丸テーブルの椅子に座り、

 俺は天を仰ぎながら、そう呟いた。


 ちなみに俺の所持金総額は十万レム(約十万円)らしい。

 初期の所持金としては、多い方だがこんな金少し使えば

 すぐ無くなる。 だから無駄使いはできない。

 それと冒険者ギルドの注意事項と規約は簡単にまとめるとこうだ。


1.冒険者ギルドの利用。

 冒険者ギルドに登録することで、

 冒険者ギルドの様々なサービスを受けることが可能。


2.冒険者ギルドのサービス内容

 全世界における冒険者ギルドでは、仕事の斡旋、報酬の受け渡し、

 素材の買取、貨幣の両替等のサービスを行なっている。

 

3.登録情報

 登録された情報は冒険者カードにて、冒険者自身が管理する事となる。

 カードを紛失すれば再発行は可能だが、

 初回のみ罰金10000レム(約一万円)で再発行。

 二度目以降の紛失から罰金50000レム(約五万円)に加え、

 ランクが一つ下がった状態での再登録となる。


4.冒険者ギルドの脱退。

 各ギルドに申し出れば、手数料なしで脱退が可能。

 再登録は可能で、初回だけ脱退前のランクで再登録が可能。

 二度目以降は最低ランクのEからとなる。


5.迷惑、禁止行為

  以下に定める行為を禁止する。

 .各国の法令に違反する行為

 .ギルドの品位を著しく貶める迷惑行為

 .無許可での依頼の売買、転売行為

 .他の冒険者の依頼を妨害する行為、及び度を過ぎた暴力行為

 これらの禁止行為が認められた場合、

 罰金と冒険者資格の停止、あるいは永久剥奪。


6.違約金の発生

 請け負った依頼を失敗すると、違約金として報酬の約三割を支払う。

 期限は約半年間。 違約金を支払えなければ、冒険者資格は停止及び剥奪。


7.ランク

 冒険者はその実力に応じて、SからEまでの六段階でランク分けされる。

 ランクが高い程、様々な特典がある。 例えばギルドのサービスの割引き、

 ギルドの銀行の利子が増えたり、時として無料で受けられるサービス等が増える。


8.昇級と降級

 依頼を一定回数成功させることで、昇級することが可能。

 ただし、昇級せずランクを現状維持にする事も可能。

 また、一定回数連続で依頼を失敗することで、

 一つ下のランクへと降級する事もある。

 更に迷惑行為、違反行為、暴力行為があった際にも罰として、

 降級させられる事がある。


 以上が世界各地共通の冒険者ギルドでの注意事項と規約らしい。

 もっともこの全ての条項を真面目に覚えている奴は居ないだろう。

 ネトゲーで言えばゲーム内規約を暗記するようなものだからな。


 とりあえず冒険者ランクは最低のEからだ。

 後、職業ギルドや職人ギルド、冒険者主宰のギルドもあるらしい。

 職業ギルドでは各職業ごとの訓練を行い、職人ギルドは武器や防具を

 製造する鋳造ちゅうぞう。 手に入れた素材で防具を縫う裁縫。

 また料理の腕を上げる調理などの職人が集うギルドらしい。


 この辺は今は上げる必要はないな。

 冒険者主宰のギルドは連合ユニオンと呼ばれ、

 ネトゲーでいえばユーザー主催のギルドにあたる。

 チームとかレギオンとか言われるアレだ。 まあこれも今は必要ないだろう。


 とりあえずまずは職業ギルドへ向かうか。

 確か各職業ギルドの登録料は3000レム(約三千円)か。

 武器や防具も買う必要あるし、使う金は最小限に抑えておこう。


 その時、ポンポンポンと後ろから誰かに右肩を叩かれた。

 条件反射的に後ろを振り返ると、

 妙な既視感を感じさせる美少女が立っていた。


 栗色のしっとりした質感のセミロングの髪。

 猫のような大きな目。 手足も長く、スタイルも良い。

 そしてその胸元はとても膨らんでおり、思わず目を奪われる。


 だがその身につけた衣服はやや場違いであった。

 黒いブレザーのジャケット、白いブラウスの胸元に青いリボン。 

 スカートはチェック柄のライトグリーン。 まんま鏑崎学園の女子の制服である。


「もしかして雪村先輩?」

「もしかして真理亜か?」


 お互い確認するようにそう言った。

 間違いない。 ボクシング部の女子マネージャーの朝比奈真理亜だ。

 そうか、こいつも異世界に転生したのか。

 考えてみればあり得る話だ。 だが何処か安堵する俺。


「……お前も異世界に転生したのか?」

「はい、なんか一から人生をやり直すのは面倒だったので、

 どうせなら色々好条件で異世界に転生する事にしたんですよ。

 なんか女神さんが言うには、雪村先輩も居るらしいから、

 なんか楽できそう……じゃなくて心強いと思って」


 おい、今楽できそうって言ったよな?

 ……まあいい。 なんだかんだで心知れた仲間の存在は助かる。

 しかしこいつが異世界転生するとは、少々意外だ。


「しかし意外だな。 真理亜なら好条件で前の世界で

 人生をやり直すと思ってたが、異世界転生を選ぶとはねえ」

「いえ凄いセレブで超美少女で超イケメンの幼馴染がいる環境で

 リスタートオナシャス! って言ったら女神さんに怒られました」


 ……コイツ、思考回路が俺と同じだな。

 というか真理亜ってこんなキャラだったっけ?

 部活では世話好きの皆から好かれるマネージャーだったが。

 まあ俺に限らず誰でも人前では本性は隠すか。


「ふうん、まあ誰でもそう思うよな」

「ですよね。 でも私って元々美少女じゃないですか?

 だから前の世界で人生やり直しても新鮮味がないというか。

 それにこういうファンタジーな世界に憧れてたので。

 こう見えてファンタジー系のネットゲーム愛好家でしたので」


 さらりと美少女と言う辺りが凄いな。

 というか真理亜もネトゲーしてたのか。 少し意外だ。


「ふうん、参考までに聞くがなんてネトゲー?」

「ドラゴンズ・エクシードです。 オフラインでも有名な!」


 ……世間は狭いな。 こんな近くにリアルの知り合いが居るとはな。

 でもこの辺りの情報は伏せておこう。 なんか俺の勘がそう言っている。

 しかしこいつ転生の際に胸をすんげー盛りやがったな。

 前は自己主張の欠片もなかったが、今は自己主張の塊だ。


「ちょ、ちょっと何処見てるんですかっ!?」

「いやすんげー盛ったな、と思って……」

「ハア? そういう先輩も足明らかに長いですよね?」

「……いや実は短足を気にしていたので」

「……私も貧乳だけが唯一のコンプレックスでして」


 そう言ってお互い押し黙る。

 うん、アレだ。 この話題は止めておこう。


「ところで真理亜は何処まで手続きを済ませたんだ?」

「冒険者ギルドに個人情報を登録して、職業ジョブ

 魔術師マジシャンを選びました。 これから職業ギルドに

 向かおうと思ってたところで、先輩を見つけたという感じです」

「ふうん、俺と大体同じだな。 ちなみに俺は拳士フィスターだ」

「へえ、それって拳で戦う前衛職ですよね? 少し意外ですね。

 先輩はもうボクシングが嫌いになってたと思ってたので」

「別に嫌いにはなってはないさ。 リアルの世界では永遠の二位止まりだから

 自分の才能に見切りをつけただけさ。 でもこの世界じゃまだ右も左も

 わからない状態だ。 ならば最初は少しでも自分の得意分野で勝負すべきだろ?」

「へえ、意外に考えてるんですね。 私は単純に魔法職が可愛くて楽そうだから、

 選びましたよ。 ネトゲーの方でも魔法職でしたからね」


 ふうん、真理亜は魔法職だったのか。

 イメージ的に回復役ヒーラーと思っていたので、少し意外だ。


「んじゃさ、とりあえずこれから職業ギルドへ行くけど、

 ちょくちょくこの酒場で待ち合わせしないか?

 ほら? お互い顔見知りだし、何かと気楽だろ?」

「あれー? もしかしてデートのお誘いですか?」

「違えよ。 お互い色々情報交換出来たら便利だろ?」

「まあそうですね。 先輩って意外と頼りになるし、

 なんか楽させてくれそうなので、私はいいですよ」


 意外とは失礼な! というか楽させてくれそうって。

 もしかして真理亜は学校ではかなり猫を被ってたのか?

 でもまあ良かろう。 なんにせよ、他に知り合いも居ない。

 とりあえず最初のうちは二人で行動した方が色々と便利だろう。


「んじゃ俺は職業ギルドへ行って来るわ。 暇な時にはここに顔出して

 おくから、そのうちレベル上げやギルドの依頼でも一緒にしようや」

「はいはい、じゃあ私も職業ギルドへ行って来ますね。 

 先輩、色々期待しているので、私に楽させてね!」


 やれやれ、現金な女だ。

 とりあえず職業ギルドへ行くか。

 闘気ってのも気になるし、最初が肝心だ。

 そう思いながら、俺は冒険者ギルドを後にした。





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― 新着の感想 ―
[良い点] ギルドのシステムが詳細で素晴らしいですね。 ヒロインのキャラも好きです。
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