美しい花 前編
ありがとう、ごめんなさい。
俺は、高校三年生の横山猛。父とは会ったことがない。
生まれた時からずっと母と二人暮らしだ。母は毎日働き大変なはずなのに笑顔を絶やさなかった。そんな母がいてくれたおかげで今の自分がいると思い感謝している。
「よう!」
こいつは同じクラスの友達天野大河だ。
「お前はいつも元気だな」「猛の方は進路決まったか?」
ちなみに俺は自分のために苦労してる母にこれ以上大変な思いをさせたくないため、一応就職を希望しているが、本当は大学に進みたいと思ってる。「あぁ 、一応」
「ふーん まぁ俺は決める決めない以前に親の会社に強制的に入れられるからな、お前が羨ましいわ」こいつの親は一応地元では有名な企業を経営している。
「うわ、もうこんな時間か、早く帰らないと叱られるわ、じゃあまた明日な」「おう、じゃあな」
この後、俺は中学生のときから付き合ってる彼女の桜と下校をする。桜は、同じ学校で隣のクラスだ。桜は面倒見が良くみんなから好かれるタイプで俺と付き合ってるのに何回も告白されてる。毎回断ってはいるが、その都度俺は嫉妬する。なぜこんな小さな男と付き合っているのか自分でも疑問に思うことがある。そろそろクラスに迎えに来る頃だ。
「待ったー?」「いや、大丈夫、じゃあ帰ろっか」
桜とは家が近いから特別何かないときは毎日一緒に帰ってる。
「そういえば、桜は進路決まったの?」「うーん、一応進学かなって思ってるよ。猛は?」「俺は…就職かな」
「ふーん」「なんだよ」「猛、昔は大学行くって言ってたじゃん。なんで就職にしたの?」「俺だって色々あるんだよ」「猛、無理してない?」
桜のいうことはいつも図星だ。だから逆にそれに対抗する嘘を考えるのが結構難しい。
「俺は、早く就職して稼いで金持ちになりたいんだよ」
「そっか、それならいいんだけど」
本当は私はわかってる猛は母子家庭で大変な母親を少しでも早く楽にさせてあげようと就職にしたことを、でもそのことを言うと猛はあまりいい顔をしない。
「そういえば今日うちくるか?」「え、いいの?」
「あぁ、母ちゃんも桜に久しぶりに会いたいって言ってたし、桜がいいなら来いよ」「やった!いく!」
猛のお母さんは猛とは逆でとても気さくで優しい人だ。
中学生のときから付き合ってるから結構猛のお母さんにはお世話になってる。
そこで猛の携帯が鳴った。
「もしもし、あぁ、行くって、うん、じゃあ」
「お母さん?」「うん、桜が来るか聞いてきた、楽しみにしてるってさ」「本当?嬉しいな、猛のお母さん優しいから大好き」「それは母ちゃんに言ってくれ」
俺は一見無愛想な感じだが、母ちゃんにも桜にも本当感謝してる。2人がいなかったら俺はどんな人になってただろうかと恐ろしくなることがある。
「ただいま」「こんにちは、お邪魔します」
「あらおかえり、こんにちは桜ちゃん、どうぞ上がって」
「失礼します」「桜ちゃんよくきたね。いうも猛が迷惑かけてると思うけどどうか見捨てないであげてね」「おい!母ちゃん」
そこで桜は笑いながら答える「迷惑かけてるのは私の方ですよ、私は猛に何回も救われてますから」
そう、私も父親が数年前に離婚していない。猛とは違い何年間も一緒に過ごしてきた父親がいなくなるときとても悲しくなり、何にもする気が起きなかった。そんなとき、クラスの女子たちが私の親が離婚して苗字が変わったことを影で噂するようになった。そんなとき猛と出会った。不器用な猛なりに私を慰めてくれた。
「おいお前、お前苗字変わっても名前は桜だろ。なんも変わらねーじゃねーかよ」
そのとき私は猛の優しさに出会い少しずつ笑顔が戻ってきた。そして、気づいたら一緒にいる時間が長くなった。私は告白しようとしたとき、猛に呼び出され逆に告白された。私は、驚きと喜びで泣いてしまった。そのとき猛は
「おい、俺なんか変なこと言ったか」と必死な猛を見て
私は泣き止み笑顔になった。そのとき猛も笑顔になりとても嬉しかった。それ以外にも、私が教科書忘れたとき貸してくれて自分が忘れたことにしてくれた。不器用だが、何気ない優しさの猛が大好きだ。
「そういえば桜ちゃん、ご飯食べてく?」「ありがとうございます、ぜひ」「よかったねたけちゃん」「おい、その呼び方はやめろよ」部屋に笑い声が響いた。
「とても美味しかったです、ごちそうさまでした」
「またきてね桜ちゃん」「はい、お邪魔しました」
「送ってくよ」「いいよ、家すぐそこだし、じゃあ、また明日」「おう、じゃあな」手を振り桜は帰った。
「本当いい子よね」母ちゃんが少し嬉しそうなのを見て少し俺も嬉しくなった。よし、風呂に入って寝るか
朝起きるともう母ちゃんはいない、朝早くから仕事に行っている。用意された朝食を素早く済ませ俺は家を出た。
「よっ!」朝は大河と登校している。
「おはよ」「おいおい相変わらず猛は無愛想だなー」
俺と正反対な性格な大河だが、一番の親友だ。出会ったのは高校からだが、元からああいう性格の大河は入学した日から色々な人と親しそうに話していた。それを俺は遠くから見ていた。そうすると大河は近づいてきてこう言った。
「君、なんていうの」「俺は横山猛」「よろしく!俺は天野大河、これから仲良くしてくれよな!」「こちらこそよろしく」
そのときは、あまり話すことがなかったが2年になったとき修学旅行の2人部屋でたまたま一緒になった。もともとあまり人と話すことがなかった俺はどうせ何も話さず寝るだろうと思っていた。しかし、大河と話していると話が終わらず結局徹夜でいろんなことを話した。大河は、中学生のとき不良だった。小学生の頃おとなしいためいじめにあっていた。そして、いじめた人を倒すために不良になったらしい。しかし、いろんな人と話すうちに不良にならなくてもいじめられないことがわかり、高校入学とともに、更生したらしい。その他にもいろいろな武勇伝を聞かされた。一方的に大河の話を聞かされたが俺は笑いが絶えず楽しかった。それ以降、大河とともに行動するようになり、少しずつ絆が深まった。
「そういえば、大河、進路希望調査出した?」「出したよ、適当に親の会社の名前書いた。猛は?」「俺は…大学進学って書いた。」
昨日の夜母ちゃんに言われた。お前進路どうするのかと、俺は就職と答えた。すると母ちゃんは「お前が無理してることくらいわかってんだよ、大学までは出してやるからもう少し母ちゃんを頼りな」俺は涙が出た。
「そうか、よかったよ」「なんで?」「お前、修学旅行のとき大学進学して大手企業に勤めたいって言ってたの忘れてないぜ、がんばれよ!」「あぁ、ありがとう」そうこうしているうちに学校に着いた。
「おはよう!」先に着いていた桜が通った。
「あ、桜ちゃんおはよ、じゃあ俺は2人の邪魔したくないから先教室行ってるから」「おい、大河待てよ」
そして退屈な授業が終わって放課後
今日は、大河と遊ぶ約束をしているため桜とは一緒に帰らないだから桜の教室に行って、じゃあねとだけ伝えてから行く。隣の教室に行くと桜はいた。
「桜、えっと、じゃあまた明日」「うん!じゃあね猛」
「よし猛行くべ」「あぁ」その日、桜といつも通り帰ってれば運命は変わったのだろうか
「今日はどこ行く?ボーリングでも行っちゃう?」
「なんでもいいよ」「じゃあ、ボーリングで決定だな」
ボーリングを終えるともう夜になっていた。
「じゃあな、猛、今日はありがとな!」「こちらこそ。じゃあまた明日、じゃね大河」「ばいばいー!」そう告げると大河はそそくさと帰って行った。俺も帰ろうとしたとき後ろで女性の悲鳴が聞こえた。駆けつけると強盗が女性の鞄を取ろうとしている。やめろよと強盗を女性から離そうとしたとき、隠し持っていた拳銃で撃たれた。
葬式が終わった。もうこの世に猛はいない。18年間共に過ごしてきた猛とはもう会えない。こみ上げてくる涙が止まらない。そこに桜ちゃんがきた。桜ちゃんはいっぱい泣いたせいか目が腫れている。「おばさん、猛はもういないんですか。これは夢ですよね。」としがみついてきた。
「私もそう思いたいけどこれは現実なのよ。桜ちゃん本当に猛のことありがとね。猛は幸せだったと思う。」そこに大河君が来た。「猛のお母さんほんとごめんなさい。」そういうと大河君は土下座をした。そして大河君も号泣している。「大河君は悪くないのよ。だから頭を上げてちょうだい。猛はあまり学校のこと話す子じゃなかったけど、よくご飯中に大河君の話をしてくれたの。そのとき猛とても楽しそうだった。大河君友達でいてくれてありがとう」
そう私はかけがえのない存在を失った。
家に帰るとまた涙がこみ上げて来た。猛の部屋に行くと、そこには静寂とした空気が漂っていた。部屋を片付けていると、小学生の頃一緒に行った旅行の写真が飾ってあった。その写真を抱きしめて私はいつまでも悲しんでると猛が怒ると思って立ち上がった。その日の夜は眠れなかった。いつも当たり前のように眠れることが幸せだったということに気づいた。
朝起きると、いつものように猛の部屋に行く。だがそこには猛の姿はない。写真の猛に行って来ますといい家を出た。
俺は誰だろう。ここはどこだろう。
目が覚めると、見知らぬ公園にいた。全然記憶がない。
どうすればいいかわからずとりあえずさまよい歩いた。
前におばさんが歩いている。おばさんに話しかけてみた。
「あのすいません、ここはどこですか」するとおばさんは
「ここは石巻市だよ」と答えた。どうすればいいかわからずとりあえずこのおばさんに助けを求めることにした。
「あの、自分が誰だかわからないんです。」おばさんの表情が固まった。そうなるのも無理はない。いきなり知らない人に場所を聞かれたと思ったら、今度は誰かわからないなんて言われるもんだから。しかし、おばさんの反応は意外だった。「なら、とりあえず身元がわかるまでうちにくる?」行くあてもない俺はその言葉に甘えることにした。
おばさんの家に着くと温かいご飯とお風呂を用意してくれた。そして、着替えまで貸してくれた。「あの、俺と同じくらいの子がいるんですか」するとおばさんは少し悲しい顔をして答えた。「そうだよ。生きてたらね」俺は瞬時に察した。聞かないほうがよかったことなのかもしれない。
しかしそのあとおばさんは笑ってこう答えた。「なんだかあなたをみているとあの子を思い出して。あの子の部屋だけどよかったら使って、明日は仕事休んであなたが誰なのか一緒に探してあげるから」部屋に案内されると綺麗に片付いた部屋の中に一つだけ花畑で撮ったのであろう、おばさんとその息子と思われる人の写真が飾ってあった。これがおばさんの子どもか。写真を見ているうちにめまいがして倒れるようにベットに倒れこんでしまった。その日の夢は不思議だった。見たことのない男と学校に行き、見たことない女と家に帰っていた。「よっ!猛」その男は背中をパンと叩いて来た。「帰ろ!猛」と嬉しそうに女は笑っていた。そこで目が覚めた。あいつらは誰だ。「たける?」
気づいたら朝になっていた。起きるとおはようとおばさんが言ってくる。「おはようございます」「あなた名前思い出せないんだっけ」「はい」「そうね、とりあえず本当の名前思い出すまで名前つけてあげるよ。翔くんなんてのはどうかな?」ぶっちゃけ、よくわからないが名前をつけてもらったのが少し嬉しかった。「ありがとうございます」
「そんな堅苦しい敬語使わないで」おばさんの優しさに救われた。本当は自分が誰なのか思い出せないのは辛かったが、このおばさんのおかげで楽になった。おばさんが誰かに電話している。「あ、大河くんちょっと家に来てくれない?」
するとその10分後に家のインターホンが鳴った。
おばさんが駆け足で玄関に向かう。「お邪魔しまーす」といい男が家に入ってくる。俺は思い出した。この人は夢に出て来た大河って人だと。すると大河は話しかけてきた。
「俺は大河これからよろしくな!」「よろしく…」
「なんかこいつ猛みたいだな」すると大河はヤバイって顔をしてすぐに話をそらした。そしておばさんが言った。「この子名前も覚えてないらしいからとりあえず翔って名前をつけたから思い出すまではその名前で呼んであげて」
「おっけーっす。とりあえず俺が翔を学校連れていくから。」えっ、学校。思いもよらぬ展開に少し動揺した。しかし、この大河って人と一緒にいるとなんか少し安心していける気がした。「じゃあ翔をよろしくね」「わかりました!じゃあ言ってきます」といい大河とともに学校へ向かった。「俺はさ、おばさんの息子の猛ってやつの友達だったんだよ。猛さ、あまり話さないやつだったけど、なんか一緒にいると楽しかったんだよね」「猛ってやつはなんで死んだの?」「あいつは強盗に襲われてる人を助けようとして刺されたんだよ、最後まであいつは思いやりのあるいいやつだった、その日俺が遊びに誘ったんだよね。もし誘ってなかったらって考えると今でも後悔してる」そのときとっさにこう言っていた。「大河のせいじゃない」大河は驚いた顔をしていた。そして学校へ着く。おばさんが学校に連絡していてくれたおかげでクラスには席が用意してあった。一応おばさんは俺が親戚の子供ってことにしているらしい。すると隣の女が話しかけてくる。
「はじめまして!私は桜、よろしくね!君は?」「俺は翔」「猛の親戚なんでしょ?」「まぁ…」この女どこかで見たことある気がする。そうか、思い出した。大河も桜も夢に出てきた人たちだ。でもなぜ初対面の人が夢に出てきた。俺はこの2人と会ったことがあったか。いやもしあるとしたらはじめましてなんて言わないだろう。疑問が残るがとりあえずその日の授業が終わった。授業が終わると隣のクラスから大河が、迎えに来る。「よし、帰ろうか」大河と一緒に下校する。家に帰るとおばさんが迎えてくれた。
その日は早めにベットに入った。ふと、昨日の夢を思い出す。すると、強烈なめまいに襲われた。気づくと朝になっていた。今日は土曜日だから、学校がない。おばさんに連れられるように、どこかへ連れて行かれる。そこは最初に気づいたときにいた公園だった。「ここはね小さい頃猛とよく遊んだ公園だよ。ここにくると猛が戻ってくるんじゃないかってさ。あ、ごめんねいきなり暗い話をして」
「いや大丈夫です。その猛君って人の話もっと聞かせてください」「うんわかった。猛は生まれた時から父親がいないの。いつも仕事の私を気遣ってくれるいい子だった」
そのあと少し猛って人の話を聞いて家に戻った。
「いきなり連れ出してごめんね。これ大河君と桜ちゃんの電話番号だから、必要な時はかけて」
俺は2人の電話番号をもらったが携帯がない。そのことを伝えるとおばさんが携帯ショップへ行き契約してくれた。
「あの、まず知らずの俺にここまでしてくれるのはなぜですか?」するとおばさんは「私の勝手な感情だけど、あなたが猛と似ていて、あなたといるとまた猛と暮らしてるような気がして。あなたはいまは私の息子みたいなもんだからあんまり気を遣わないで」「あ、ありがとうございます」
家に帰り早速大河に電話してみた。かけるとすぐに大河が出た。「あ、もしもし?」「翔です」「あ、翔か、いま何してんだ?」「特に何も」「んなら、桜ちゃんでも誘ってどっかご飯でも行くか?」「いいの?」「おう!とりあえず桜ちゃん誘っとくから、揃ったらお前んち行くから!」
「了解」「んじゃあなー」と言うと大河は電話を切った。
俺も準備を始める。するとおばさんが来て、「これお小遣い、今の生活に慣れるまではお小遣いあげるから、慣れてきたらバイトでもしてみなさい」「ありがとう。お母さん」え、俺は今お母さんと言ったのか。無意識のうちに出たその言葉にとても驚いた。20分が経った時インターホンが鳴った。おそらく大河だろう。「行ってきます」と言い家を出る。やはり大河だった。「こんにちは」桜が丁寧に挨拶する。なぜか2人といるととても落ち着く自分がいた。
2人に連れられて、地元で有名なラーメン店に入る。食事を済ませると、近くのファミレスへ行き、猛の話になる。「そういえば言ってなかったけど、桜ちゃんは猛の彼女だったんだ」と大河が言うと、桜ちゃんは少し悲しげな表情をする。大河と桜は猛の友達と彼女か。俺がその2人と仲良くしてるのをもし猛が見ていたらいいかがするのだろうか。そのあと色々な話をして、気づくと午後5時を過ぎていた。「そろそろ帰るか!猛の母ちゃん心配するだろうし」と大河が言い、2人とともに家に帰る。帰ると、おばさんがご飯を用意して待っていてくれた。
「楽しかった?」「はい、とても、桜ちゃんは猛君の彼女さんだったんですね」「うん、そうなのとてもいい子でしょ?」ご飯が終わり、風呂へ向かう。風呂に入ると色々なことを考えてしまう。自分は誰なのだろうか。もし親がいるとしたらなぜ探さないのか。そこでまためまいがする。そのとき不思議な映像がフラッシュバックする。そこは花畑だった。今のはなんだ。もやもやしたまま、風呂を後にする。ベットに入ると。その日は夢を見た。今度は知らない男が出てきた。しかし、その顔はどこかで見た気がする。その疑問は起きるとすぐに解決した。「あれは、猛だ」
でもなぜ俺の夢に、もしかして今の俺に対して怒っているのか。まぁ、怒られても仕方がないくらい今の俺は恵まれている。猛には申し訳ないが自分が誰なのかわかるまではとりあえずここでお世話になるしかない。
季節が変わり、雪の量が増えた頃学校では進路について騒いでいた。俺はどうすればいいかわからずとりあえず、その場しのぎをしていた。しかし、このまま卒業して何もしないわけにもいかない。そんなとき大河は自分の父親の会社で働くことを提案してくれた。そのおかげでとりあえず卒業後の進路が決まった。だが、重要なことがある。それはまだ自分が何者かわかっていないことである。そんなんでこれからやっていけるのだろうかと不安が募る。
そしてあるとき事件が起きる。おばさんと一緒に猛のお墓に行ったとき、いつもより強烈なめまいに襲われる。気づくとそこは病院のベットだった。
「気がついた?」おばさんが心配そうに声をかける。
「一体何が?」するとおばさんは「猛のお墓に行ったとき、翔がいきなり倒れたの」たしかに、お墓に行ったとこまでは記憶がある。そのあと何が。そういえばいままで長い夢を見ていた気がする。必死に思い出すと、夢に猛が出ていたことを思い出す。猛に何かを言われた。しかしそれが何か思い出せない。自分が何者かも疑問だが、いつも突然やって来るめまいはなんなのだろうか。猛は俺に何かを伝えようとしているのか。考えれば考えるほどその穴にハマっていく。診断結果は異常無かったため、すぐに退院した。家に帰るとすぐ大河と桜が家に駆けつける。心配してわざわざお見舞いに来てくれたのだ。そういうのがとても嬉しかった。こんないい友達と彼女そして、母親を残し死んで行った猛がなんともかわいそうだった。夜になり2人が帰り、少し早めに寝た。その夜、また夢を見た。猛が出て来た。「思い出せ、だが思い出したときお前は無かったものになる、お前がやりたいことをやれ、俺に気を使うな、お前の喜びは俺の喜びだ」なんなんだ、猛の言っていることがさっぱりわからない。猛に意味を訪ねたとき、目が覚めた。とてもモヤモヤする。しかし、猛に言われたことは鮮明に覚えている。俺の喜びが猛の喜びでもあると言われた。それはどういうことだろうか。リビングに行くとご飯が置いてあったがおばさんは仕事に行っていた。食事を済ませ準備が終わったころ、大河が迎えに来る。そして一緒に登校する。「なぁ翔、もう少しで長い休みになるだろ?」「え、そうなのか?」「おまえ知らなかったのか?来週から卒業式直前まで俺ら3年生は休みなんだよ。そこで考えたんだけど、俺と桜ちゃんと翔でどっか旅行でもいかないか?」誘ってくれたのは嬉しかった。だがさすがにそれは猛に悪い。でも猛は俺に気を使うなと言ってくれた。その言葉もあり、俺はその誘いに乗ることにした。その後不思議な出来事が起こることをそのときは誰も知らなかった。
続く