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日常7


一緒に音楽を聴いたあの日は一瞬で過ぎ去り、「気づいたらベットの上」のような気分だった。家族や友人との会話もなんとかこなしていたが、頭には入ってきていない。授業なんて尚更だ。



ふう。と、息をついて目を閉じる。少しずつ眠くなってきた。今日はとってもいい日だったね、明日はもーっといい日になるよねっと心の中のハムスターに呼びかけつつ、微睡みに意識を委ねた。









それからの日々は更に八代さんを意識してしまって、言葉が出てこない状況が続いたが、なんとか許容範囲内だと思う。まあ、元々がひどかったというのもあるかもしれないが。




また特に意識はしていないものの、週に一回程度、お互い屋上へ集まって音楽を聴く会は続いていた。僕としては毎日でも通いたかったが、なんとなく一人で考え事をしていたいという八代さんの邪魔になるような気がして、週に2、3回は屋上へ行って八代さんが来れば勝ち。こなければ負けのような気持ちで過ごしていた。





そんな生活が続き、世間では気温がぐんぐんと上がっている。学校内でも旅行や家族でのレジャーの話も出てきて、みんなそれぞれに浮かれていた。




「はい。ということで。夏休みに入る前に臨海学校があります。海や川の危険性や集団行動を学ぶ機会ですので、みなさん浮かれた気持ちで参加しないように。しおりを配布しますので…」




と先生のありがたいお言葉を右耳から左耳へ。カーテンが閉まっていても熱は通すのか、窓際の席はとても暖かくて意識を持っていかれそうになる。うとうとと、もしかしたら白目を向いていたかもしれないが、1番後ろの席なので問題はないだろう。




休み時間になり、渡が何人かの友人を連れてこちらの席へ近づいてきた。




「高瀬、臨海学校だってよ!楽しみだよな。蒸し暑い天気、綺麗な海、クラスメイトとみんなで遊ぶ二泊三日…彼女を作るチャンスだぜ…」




この熊は本当に誰かを狙っているのか。目が本気である。ちょっと血走っていて怖さがすごい。

話は変わるが、何故あんなに授業中は眠いのに休み時間になったら目が冴えるのだろうか。この熊もさっきまで爆睡していたくせに、休み時間に入った途端このザマである。




「彼女か。出来るとか思ったことなかったけど、居たら毎日楽しそうだよな」




と、僕が最近流行りの草食系っぽいことをつぶやくと、渡は驚愕したように




「何故燃えない!学生時代に彼女のできない生活でいいのか!」




「別にそれなりに今も楽しいからいいよ」




「こいつは本当にダメなやつだ!」




とテンポよくトントンと話が進む。渡は心底理解できないというような顔をしながらも、「そんな君でも燃える話があるんだよ…」と顔を近づけてきた。でかいし暑苦しい。あっちいけ。




「なんと、この臨海学校には肝試しがあるんだよ!しかも、安全を配慮して先生がお化け役兼監視。俺らが二人一組を作って設定されたコースを歩くんだ。どうだ、この先は言わなくてもわかるだろう…くふふふ」





引いた。




「その笑い方はどうにかしたほうがいいとして、お化けなんて嫌だな。怖いし」




「お化けを怖がる女の子を体を張って守ったのちにってのがお約束だろ!」




「ええぇ。無理」




「こいつぁダメなやっちゃ!」




いつものような掛け合いをしているうちに、ふとあることに気づいた。本当に男女ペアなのだろうか。

そのことについて渡に聞くと、僕の学年は男が4人多いだけなので、不幸な人は4人しか出ないとのこと。150人くらいいて4人ならよっぽど運がない人なのだろう。あと、渡とだけは嫌だと心の中で神様に祈っておいた。






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