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『晴』
降り注ぐ陽の光に照らされて、乾き罅割れた地面には、いくつもの影が出来ていた。
しかし人気のない道路に立つ者の足元にだけは、衰えなく陽が照りつけている。
代わりにその者の姿は影を纏うように黒く、その輪郭は蜃気楼の如くぼやけている。
存在すら曖昧なその者は、あるのかもわからない口を開き、しゃがれた声で呟く。
「見ツけた」
その不確かな視線は、薄暗い路地裏の脇に倒れ込む、一人の少女に注がれていた。
ぼんやりと形の残る両足で、一歩一歩、確かめるように近付いて行く。
足音一つ立てぬその両足は、まるで質量を感じさせない。




