一日目
改稿いたしました。(8/26)
「さてと、いい加減世界作り始めた方がいいよなー」
セルゼルノは豪快な伸びをして、面倒臭そうに懐から本を取り出した。
「……まぁいいや。とりあえず地球造るか」
これでも神である。
人差し指を立て、指先に、ビー玉ほどのガラス玉を作る。その中にどす黒い煙を思い浮かべ充満させると、玉の輝きが急速に失われてゆき、最終的に、濁ったどす黒い色の玉になる。
「――――で、どうすんだっけ?」
考えることもせず、片手間に本を開く。
「あぁ、そうだそうだ」
指先のビー玉をいったん掌に転がすと、セルゼルノはその表面に軽く息を吹きかける。
途端に中の黒煙が青白く染まり、中心から現れた極小の大地に雨となって降り注がれる。しかしやっている方はビー玉が青白く光っているようにしか見えず退屈だった。
早くも耐えかねたセルゼルノは、出来かけの地球を拳を開いてソフトボール大にまで膨らませると、振りかぶって放り投げた。
「……まぁあんなもんだろ。次だ次」
大切な事なのでもう一度言うが、これでも神である。
再度片手間に本を開き、バラバラと雑にページを捲る。
「あぁ……そうだ、最初に太陽造っとかないと明暗が生まれないんだっけ」
最重要事項の一つを今更のように思い出し、セルゼルノは先程と同じ容量で指先にビー玉を出現させた。そして書かれていた通り中心に灼熱の赤い玉を思い浮かべ、両手を広げて急速に膨れ上がらせる。
「しまった。……でかく造り過ぎたかな」
視界一杯に広がる炎の壁を前にして、セルゼルノは涼しい顔で言う。
しばらく見入っていると、何故か跳ね返ってきた地球がものすごい速度で太陽に突っ込み、蒸発して黒点となった。
「ギャアアァァーーーーーーーーーーーーーッッ!! 地球が滅亡したぁぁぁぁーーーーーー!!」
そう、この時、セルゼルノは最重要事項その〝一〟を完全に失念していたのである。
『その一、空間は、基準となる物質を生成することで限界が生まれる。』
放り投げた地球はその限界まで到達し、勢い余って跳ね返ってきたのだった。
「やべぇ、どうしよう。どぉうしよう。いきなり地球滅亡しちゃったよ。
まだミトコンドリアすら生まれてねぇのに……」
狼狽し、当てもなくその場を右往左往する。
しかし考えれば考えるほど頭が真っ白になり、そうして一日が終わった。