ペレサVSウィリアナ
「トゥーナどうするつもりだよ。ずっと待ってるつもりか」
「仕方ないじゃない!こっちには手のだしようがないのよ
相手が引っ込むのを待つしかないじゃない」
いやいや相手訓練してたし合成獣作ってたし戦う気みなぎってたし。
しかも標的ここにしてるの聞いたし。
「姫様失礼します!!!」
突然兵士の一人が入ってくるが声にどこか聞き覚えがある。
「ロッツか」
「その声は同士か」
やはりあたりだったようだ。
「何よあなたたち知り合い?」
「いろいろある。用件は?」
「ちょっとそれ私のセリフ!」
「実は姫様宛てにこのような書状が」
弓矢に括り付けられた跡のある手紙を取り出す。
「矢文ね」
「中を」
「わかってる」
中を確認すると書いていたものは宣戦布告ともうひとつの件について書かれていた。
『これから我々ペレサ軍国は貴国に宣戦布告する。
ただし、これらの条件を呑めば戦争は取りやめ、同盟の誓いを立てよう』
一つ、王女トゥーナを我が妃として差し出すこと。
二つ、国土の三分の二をペレサ領に差し出すこと。
三つ、国の作物の四割をペレサに献上すること。
以上の条件が満たされれば戦争を中断しよう。
賢明な判断を期待する』
譲歩というにはあまりに横暴な内容だった。あたかもそれが目的で戦を仕掛けているとしか思えないほどに。
「姫様...」
「わかってる。お願い私に力を貸して、ペレサを倒すために」
「私たちの命は貴女に預けております。なんなりとご命令を」
「全軍迎撃用意!!ペレサを迎え撃て!!」
「はっ!!」
命令を下すトゥーナは一人の少女ではなく一人の国王だった。
「いいのか?合法的に結婚できたんじゃね」
すこし意地悪かと思ったがこれぐらいやってみたくなる。
「私は政略結婚じゃなくて本当に愛した人と結婚したいの。身分や階級なんて関係ない。本当に好きになった人と」
一国の国王であるまえにトゥーナは一人の少女だった。
普通に泣いて怒ってそして笑って恋もする普通の少女だった。
「それがお前の夢か」
「自分勝手なのはわかってる。それでもこれだけは捨てたくない。捨てたら私は私でなくなる」
「いいよ、勝手結構おおいに結構だ。なぜならお前は家臣に報告もなく俺を雇った。十分勝手だ、だったら勝手も弱音も全部吐いちまえ」
トゥーナは涙をポロポロとこぼしていた。
「私は好きな人と結婚したい。この国のひとにこれ以上苦痛を与えたくない
この国の子供がちゃんと笑ってお酒飲んで家族に看取られて死ねるぐらいまで平和な国にしたい。
そのために私の力になってハヤト!!」
「俺はあんたの影だ。いつもそばからあんたが気づかなくても見ていてやる」
ハヤトの決意表明だった。
ハヤトはこんな何もない世界で自分を雇って、必要としてくれたトゥーナに感謝していた。
だから支えてやろうとおもった。
あの掴めば壊れそうな心を。
「トゥーナ...偶然...か」
ハヤトも戦争の準備を始めることにした。
「今回は攻城戦か?」
「正しくは防城戦よ。こちらとしては勝ち目がないもの」
ハヤトたちの最大の関門は合成獣とあの総統らしき男。
特にあの男にいたっては十中八九勝てるかどうかの危険な勝負になるだろう。
「頼りにしてるわよ。姿も見せない影さん」
「期待されても困る」
「ほら来たわよ」
ペレサの軍勢およそ数万が歩いて進行してくる。
その先を一頭の馬が早駆けしてくる。
「トゥーナ女王!条件を呑めば我々ペレサは兵を退く腹積もりであるがいかがなされる!!」
「条件は呑まない!貴方と結婚するぐらいなら死花を咲かせてやるとそっちの愚王に伝えなさい!
そして私たちは平和を掴むために負けるつもりはないわ!
よく言い聞かせておきなさい!」
「今の言葉。そのまま伝え申し上げる」
馬は帰っていく。
「よくやった」
「ありがと、喜ぶのは勝ってからよね」
「当たり前だ。さあみんなお前の合図を待ってる。
ここからはお前の仕事だ」
「皆ぁっ!!!私たちはぁっ!!!ペレサに勝ってぇっ!!!この国を平和にしてみせるっ!!!だからみんなの命を私に預けなさいっ!!!!」
トゥーナの激励で兵士がみな雄たけびを上げる。
「じゃあ俺はさきに行くぜ」
「待って」
「なんだよ締まった感じだったのに」
「絶対帰ってきて。私を一人にしないで」
「任せろ」
ハヤトは先陣を切って敵へと走り去っていった。