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ゲーマー忍者の異世界無双   作者: 世捨て人
六章・戦王の鍵
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奥義発動

八番目、確かに戦王はそう言った。

まるでハヤトが何であるかを知るように、自分のことのようにそういった。だが、ハヤトはなんのことだかわからない。

こいつは自分のなにを知っているのか、様々な疑問を混ぜてこう聞いた。

実にシンプルに。


「お前はなにを知っている?」


戦王は腕を組んで、考える仕草を取る。

なにかを考えているのか、それとも答えるかどうかを迷っているのか。

そして、答えはこれだといわんばかりに腰から刀を引き抜き、ハヤトに向けてゆっくりと振り下ろした。

それはさきほど見せた太刀筋とは打って変わり、なんの変哲もないただ振っただけにすぎなかった。

だが、その斬撃は遅れてやってくる。


「っ...!?」


振っただけの行動が、地面を切り裂く斬撃となって飛んできたきたのだ。

ゆっくりとした所作とのギャップに、誰もがそこに見入り反応が鈍くなる。それはハヤトも例外ではなく、数瞬刀を構えるまでの動作が遅れる。


「ぐぁっ!!」


どうにか、本当にかろうじてガードしたハヤトだが、息つく暇もなく次の斬撃が来る。

今度は時間を与えないつもりか、さきほどとは違い迅い斬撃である。

さきほど裂いた地面をなぞるように斬撃が飛んでくる。

ハヤトは、これまでの戦いのカンをフルに使い、見えない斬撃を躱し逆に斬撃を放つ。


戦王はハヤトの自分を真似したような斬撃を、蚊でも払うがごとく軽く払ってみせた。

ハヤトも攻撃の手は休めない。もう一度斬撃を繰り出し、今度は斬撃の後ろに自分の身を隠して接近する。

戦王が斬撃を払えばハヤトの刀が戦王の体を裂く算段だ。


(とったっ!)


そう思われた瞬間、戦王は誰もが思いつかないような方法を取る。

それは、目の前にしたハヤトでさえも想像だにしていなかった。

なんと、腕の力だけで打ち消してみせたのだ。

カモフラージュにしていた斬撃が消え、ハヤトが前に出ることになる。


ここまできてしまった以上、もう退くわけにはいかない。

ハヤトは右下から思い切り斬り上げる。

しかし、それは無策にただ我武者羅にした攻撃にもならない攻撃、戦王は面白くないと刀をその手で掴んで止める。


「さきほどの剣はどうした?鈍っておるぞハヤト」


ハヤトは必死に握られた剣を引き離そうとするが、戦王の握力でコンクリートが固まったように刀は抜ける気配がない。

そんなハヤトの頭上に、戦王の拳が振り上げられる。


「水遁・水龍爆鎖」


ハヤトの口から出た水流が、戦王の体を縛り上げていく。

その隙に、一度距離を取る。

その瞬間に水龍の縛りが解かれてしまった。かなり強引に引きちぎったというのが正しい言い方だろう。


たった数分の攻防で、ハヤトは肩で息をするほどに疲れが出ている。

精神力と集中力を同時にもっていかれているのだ。

それほどまでにこの戦王との戦いは辛く激しいものなのだ。


「さて、そろそろ興も覚めてきたな。がっかりだぞ、よもやそこまで剣が鈍るとは、もう少し踊れないのか」


「残念ながらフォークダンスしか踊ったことはないな。あいにく」


軽口を叩くが、その声は少しばかり震えていた。

この絶対的な力に恐怖している証拠である。

いままでハヤトは恐怖などしたことがなかった。あのペレサの改造人間と戦ったときも、六人の変刀使いと戦ったときも、千を超える龍の大群と戦ったときも、谷で自分が死にそうなときも、決してなにかに怯えることなど一切なかった。

だが、いまこの男を前にして、ハヤトのなかの潜在意識が恐怖しているのだ。

自分では自覚できない恐怖を、体が体現するのだ。


ハヤトはいま自分の手が震える現実を恐怖だと、このとき初めて自覚する。


「俺が、恐怖...」


「我に畏れを抱くは恥じることではないぞ、我は戦王、王の前には万民みな同じ。

我に一矢報いようなどと思い、殺すと宣った強者どもはみな口を揃えこういう。我には勝てぬと」


そうだ、勝てるわけがない。自分もその歴戦の男たちと同じ運命をたどるんだ。

ハヤトは刀を鞘に収めかけたそのとき、城で待つトゥーナの顔がよぎる。

いまここで諦めたら、あいつも家で帰りを待ってるゼロナもみんな死んでしまう。


それは、それだけはなんとしても止めなくては。たとえ自分の命を投げ打ったとしても。


忍オンライン、そのなかで時間限定で全スキルをあげる奥義が存在した。それは使えば剛力を手に入れられるが、引き換えに一時間のログイン不可能エフェクトがかかる、その奥義をハヤトは意を決して発動する。

ここはゲームではなく生身、生身の体でどうなるかは知らないが、それでもやるしかなかった。


「剛力解放」


ハヤトの体が、突如として紅く変色を始める。

それは、ハヤトの血が血管から漏れ出し始めた証拠である。


「来るかっ!?」


戦王がその目に捉えた瞬間に、ハヤトは戦王の間合いどころではなく、刀の届く十分な距離にすでにいた。

そのまま、胴体に向かって横薙ぎに振り払った。

戦王の反応も去る者、瞬時に刀で受け止める。だが、ハヤトの力技によって刀とともに戦王は吹き飛ばされる。


(よもやここまでの剛力を...)


「面白い、面白いぞぉっ!ハヤトぉっ!!」


戦王は叫び散らしながら、ハヤトに向かって刀を構え向かっていった。












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