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ゲーマー忍者の異世界無双   作者: 世捨て人
六章・戦王の鍵
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鍵の行方

城全体を揺るがすような爆音。

その衝撃で、寝ていたものは全員が飛び起きる。


それはハヤトも例外ではない。


(なんだ!?)


ハヤトは意識を半分だけ覚醒させたままにしていたが、残った半分が跳ね起きる。

トゥーナも遅れて起きる。


何事かと城中が大騒ぎだ。そんななか、トゥーナの元に連絡係りの兵士が飛んでくる。


「姫様っ」


「なにがあったの?」


「王城の三階の廊下において爆発。全員就寝していたため、死傷者はありません。

それと、王の鍵とフローラ様が見当たりません」


そこでフローラが、一人で鍵を追いかけていったことを理解する一同。

フローラならば、まぁ大丈夫であろうが、いなくなったというところが心配だ。


「いますぐ鍵とフローラを捜索。まだ遠くには行ってないはずよ」


寝起きだというのに的確な指示だ。

関心しつつも、自分も行かなければと、ハヤトは音もなく気づかれることもなく部屋をあとにした。


「あれ?今だれかいなかった?」


「いえ、自分と姫様以外には」


案外トゥーナの勘は鋭かった。








「ひどいもんだな...」


爆発によって崩壊した廊下を眺めて、呟く。

言葉通りに、普段ならガラス張りで、煌びやかに装飾が施された、美しい廊下であるのだが、今は爆発でガラスも砕け、一箇所には穴が開いている。


美しい廊下は見る影もない。


「さて、どこいったかだが....」


ハヤトは三階から飛び降りる。

もちろん、普通に飛び降りるのではなく、忍び道具のひとつムササビを使う。


ムササビ...忍びが高い場所に潜入するときに使う、ある程度の耐久性を持った布。

体全体に膜を張るようなイメージで、落下速度を減速させ、風に乗って飛行距離を伸ばすこともできる。


ムササビジャンプというものを思い出しながら、ハヤトは穴の開いた廊下から飛び立ち、地面へと降り立つ。


「どこ探すかな…」


とりあえず夜目の効きそうなアイツを口寄せする。


「口寄せの術」


ボフンッと膨れ上がったような白煙とともに、

いつもの烏ではなく、天狗が現れる。


「て、天狗?」


口寄せする奴を間違えたかと焦るハヤトに、天狗が口を開く。


「お初にお目にかかりやすハヤト様、俺は烏天狗の薬師丸次郎坊といいやす。

本日、烏のじい様は急用にてあっしが出て来やした」


烏の代理ということだろう。頭はあまり回りそうにないが、実力は申し分ないはずだ。


しかし、空から捜索するに当たって、頭数が一羽じゃ足りなすぎる。


「口寄せの術」


今度は烏軍団を口寄せ、その数は約千羽。

千羽鶴ならぬ、千羽烏である。


「外にいるメイドみたいな格好した人を探してくれ」


ハヤトの命令に、烏たちが一斉に飛び立つが、暗い夜に黒い体なので、分かりにくいことこの上ない。


「次郎坊、お前もだ」


「あっしは烏のじい様の代わりですので、側に居やす」


天狗はハヤトの側を動く気がないようだ。

千羽に探させたのだから、すぐ見つかるので別に構わないとは思うのだが。


「アー!!」


鳴き声を響かせながら、烏の一匹がクルクルと上空を旋回している。

見つけたという合図だろう。


「行くぞっ」


「分かりやした」


ハヤトと天狗は走ってその地点へと向かう。







ハヤトが目撃地点にたどり着くと、男二人と槍を構えて対峙する、フローラの姿が目にはいる。


「あの人闘えんのかよ」


「ハヤト様、加勢は?」


この質問は自分は加勢したほうがいいか?とこう いう意味で聞いたのだ。


「当然する」


ハヤトはあくまで自分が加勢することしか、頭に入れていない。


そんな主に、天狗は自分の役目を再度問い直す。


「あっしはどうしやしょう?」


「お前も混ざれ」


ハヤトから加勢の命令を受けた天狗は、気分が高潮して仕方なかった。

久々の戦闘に、喜びを感じている。


「行くぞ」


ハヤトは瞬間移動の如く、一瞬でフローラの隣に並び立つ。


「ハ、ハヤト様!?」


いきなり現れたハヤトにギョッとしたが、どうにか素に戻る。


「悪い遅くなった。

俺たちでやるから、フローラさんは下がっててくれ」


「ハヤト様、あれが鍵です」


指差す男の手には、確かに六角錐のクリスタルが握られている。


「あれが鍵?」


普通に鍵のようなものだと思っていたハヤトは、驚いたような表情を見せる。


天狗に至っては、話をまったく聞いていない。

戦闘することで頭が一杯だ。


「さて、じゃあ取り返すとしようか」


ハヤトが男二人を睨むと。

男二人は、顔を見合わせて目で合図すると、そのまま森の中へ走り出した。


「待てやこらぁっ!!!」


ハヤトも追って走り出す。

単純な足の速さで、ハヤトに敵う者はいないが、二人はコンビネーションを使って、鍵を持っているのか分からないようにして、上手い具合に撒いている。


「へへ…あいつも俺たちのコンビには敵わねぇぜ」


「このままあそこまで逃げ切れば…」


「させるかぁ!!!」


ハヤトはムーンサルトで、二人の前まで跳ぼうとするが。

それを狙ったように、無音で弾丸が飛んできた。


ーーーー弾!?


ハヤトはゼロナの一件以来、弾の方向や球数を、空気の振動だけで判断できるようになった。

そのため、顔の近くに飛んできた弾丸でさえも避けることができる。


「ちっ!」


狙撃手は舌打ちをしながら、次弾を装填する。

しかし、ハヤトを前にして一秒かかった時点で時すでに遅し。

胸には深々とクナイが突き刺さっている。

かなり見ていて痛々しい。


ハヤトは仕留めたかなどは気にせずに前の二人を追いかける。


追いかけて森を抜けた先には、無数の武器を手に持った、一般市民とおぼしき人々が群れる光景が、広がっていた。


「こいつはなんの冗談だ?…」


ハヤトも目の前の現実を信じることができないでいる。


「ハヤト様っ」


天狗も遅れて飛んできた。

空を飛ぶくせにハヤトより遅いとは、どういうことだろうか。


「遅い」


「道に迷いやして…」


苦しい言い訳だが、説教する時間も惜しい。

とりあえずは来ただけでも良しとする。


「さて、この状況.…どうしたもんかな」


鍵は敵の手に、それを守る敵は数万を優に越える。

対する味方は二人。

いや、千一羽と一人だ。


「ハヤト様、ここはあっしに」


そういう天狗の目はギラついている。

やる気満々、これならいけるかも知れない。


「いや、俺もやる」


そう言って投げたクナイが開戦の合図となった。





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