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ゲーマー忍者の異世界無双   作者: 世捨て人
六章・戦王の鍵
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奪われた鍵

「痛って...あのやろ~本気で殴ることはねえだろ」


ハヤトの頬には真っ赤なもみじが出来上がっていた。

トゥーナに理不尽にも殴られたときのものだ。


「お疲れ様です」


となにやら飲み物をもってきたのは、主犯格のフローラ。

フローラが余計なことをしなければ、ハヤトも殴られることはなかったのだ。


「まったくお疲れだよ」


皮肉がこもった返事を返すと、「あらあら」とか特に悪びれるわけでもなく、ただ笑顔だった。


「あんた相当悪趣味してるよ」


「きゃ~!!褒められたわ」


「褒めてないし、きゃ~はないからその年で!!」


なんだかこのフローラを前にすると、それこそ年の功か、上手い具合に手玉に取られている気がする。


「はぁ...なんか疲れた」


「私はぴんぴんしておりますよ」


「そりゃあな」


ため息の代わりのように呟く。

もはや突っ込む気力すらない。


「姫様は昔から、仲の良い友人や年の近い子供と出会ったことがなく、いつも一人でいらっしゃいました。

だから今が一番楽しいのでしょうね」


年の近しいハヤトだからこそ気兼ねなく話すことができる。

そういう友や、友でなくても誰かが欲しかっただけなのだという。


本当に寂しがりの姫である。


「ところであいつはなんで俺に泊まれって言ったんだ?」


ハヤトは、トゥーナが何を思っていたのかなんて、まったく知らない。

傍からするとただの鈍感男であるのだが。


「馬鹿な人、なんでもないと思いますよ。ただ警護のためと」


敢えて言わずに口を濁しておいた。やはり、自分の口から言わせるのが妥当だと考えたからだ。

ハヤトの方は『?』を浮かべて、なんのことかさっぱりという顔をしているが。


「さて、あと一時間ですね」


交代の時間まであと一時間となっていた。

交代しなくてもずっと座っているだけなので、暇であることを除けば別につらいことはない。


「そうだな...」


「お部屋の用意はしてありますので」


ハヤトはこのときかなり疑いの目を向けていた。

確かに、今特に何かを考えている顔はしていないが、これがもしポーカーフェイスで、実は部屋にはまた何かのドッキリじみたものがあるかもしれない。

実際先ほど一回やられたので、さらに慎重になる。


「あらら、信用はないようですね」


これで信用するのはせいぜいトゥーナレベルの人間信者ぐらいのものだろう。


「では先に言っておきましょうか、別に何もしてませんよ部屋自体には」


部屋以外になにかしたという事か。

ハヤトは考えうる限りの可能性をすべて計算するが、まったく答えが見つからない。


「それではゆっくりとなさってください」


これでゆっくりできるならたいしたものだが、残念ながらハヤトにそんな気概はなかった。


そしてやってきた一時間後...。


「交代です」


「オーケー、頼んだぜ」


交代の見張り番がやってくる。

ハヤトは見張りを任せて、問題の部屋へとゆっくり歩を進める。


「入るぞ...」


自分に向かっての自己暗示だ。

そして突入した。


すると確かにそこには何もなかった。

キレイなベッドがあるだけで、何か特別なものがあるわけでもない。


「なるほど、確かにな」


見たところ何もない、くまなく探しても同じだ。

ならばとハヤトは、天井に張り付いて寝ることにした。

これで何が来ても大丈夫だろう。


そして代わりにベッドには影分身のハヤトを入れておく。


ハヤトが眠ってからしばらくすると、何者かが部屋に入ってくる。

暗闇の中、目を凝らすとそれはトゥーナだ。


この部屋にベッドは一つしかなく、何もしらないトゥーナは寝ぼけた目で、ハヤトがいるベッドへと潜り込んだ。


「なるほど...危なかったな」


影分身でよかったと本気で思った。今影分身を消したところ、トゥーナの柔らかい感触が、全身に伝わってきたからである。


「さて、俺もやっと寝れる」


ハヤトはそのまま眠りについた。





その頃、鍵の安置室...


「へへ、意外とちょろかったな」


「馬鹿っ声出すなよ、バレんだろ」


「悪い...」


部屋には男が二人侵入していた。

それは先ほどの兵士である。

いつの間にか入れ替わっていたようで、ハヤトが居なくなった隙を狙って、犯行に及んだと見るのが妥当である。


この時間帯は皆寝静まり、侵入を報告するものはいない。

たった一人を除いては。


「そこのお二人様どちらへ?」


逃げようと廊下を足音もなく歩く二人に、話しかけるものが。


「誰だ手前は」


「ウィリアナ王国、王族専属メイド兼王国特別兵士部隊部隊長、フローラ」


フローラは普段の様子からではわからないが、槍の名手として有名を馳せたこともある手錬なのだ。

もちろん戦争にはあまりいかないので、こういうときばかりの戦闘になるが、それでも守護者(ガーディアン)としては十分だ。


「どうする?」


「どうするもこうするも逃げるだろ」


言った瞬間に男たちは全力疾走。フローラも負けじと走る。

しかし、メイド服で全力疾走する男たちに追いつくフローラは十分に化け物じみている。


「あの女追いつきやがったぞ」


「こうなったら...」


直後、何か丸いものが転がる。


「まさか爆だ-- 」


城の廊下に激しい爆発と、爆発音が鳴り響いた。



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