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ゲーマー忍者の異世界無双   作者: 世捨て人
六章・戦王の鍵
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監視せよ

ハヤトはトゥーナに呼び出されたので、城へと出向いていた。

あまり気は進まないが、行かないとあとからうるさいのでしかたなくではある。


「来たぞ」


いつもどおり窓の外から声をかける。

しかし返事がこない。


いつもであれば「遅い」と一秒の間もなくいわれるところであるのだが、今日は何も言ってこない。

おかしいと思って中を覗くと誰もいなかった。


「あれ?お~い」


と呼んでもだれもこないので、珍しく城の中を散策することにした。

普段はそこまで城の中を歩いて回ることがないので、かなり新鮮ではある。


しばらく歩いていると、近くの扉がガチャっと音を立てて開き。


「遅い」


と、トゥーナに出会ってしまう。


「悪かったな遅くて。これでも昼飯途中で切上げてきてやったんだが?」


本当のところは、きっちり完食していたがトゥーナを少しは悪いと思わせるための嘘だ。


「あっそ」


と、これも特に意味がなかったことに、心のなかで落胆する。

下手な嘘までついたのに。


「それより話があるから中に入って」


「お、おう」


落胆したショックから立ち上がれていないので、一瞬返事にラグが出る。


入った部屋は特に何の変哲もなく、およそ作戦会議などというものには使われないであろう部屋だった。

もともとトゥーナは自ら戦線に立つぐらい軍略もできるので、作戦を考えるのはトゥーナ一人で十分なのだ。


よって会議用に設けられた部屋などは存在しない。


「とりあえず座って」


促されて素直に座る。

と次の瞬間には、なぜかトゥーナは真横に椅子を持ってきて座っている。


「なぜに隣、そしてなぜに赤くなってる?」


「いいじゃない別に、ここには私と二人だけなんだし」


二人だけというワードに、ドキリと心臓が脈打つのがわかった。


(こいつは俺のことを異性としてみてないのでなかろうか。別にいいけど)


と盛大に勘違いしているが、心の声まではトゥーナに聞こえない。


「それで話なんだけどね。実はついさっきここから少し離れたところにあるカインっていう国が滅んだのね」


滅んだとかあっさり言うものだから、ハヤトは少々面食らうがどうにか持ち直す。

というか、日常的に国が滅んでいるこの世界は大丈夫なのかと疑問を抱きたくなる。


だが今は戦国時代の真っ最中、しかももっとも戦乱の風が強い時期なのだ。

国は滅んで当たりまえが、この世界の人々の共通意識である。


「で、そこを滅ぼしたのが例の戦王の信者たちね」


「なるほどな。そいつらは何を目的に動いてるんだ?」


「なんでも殺す前に鍵はどこだって聞いて回ってるらしいわ」


「鍵...」


何の鍵かはわからない。戦王にそんなものが必要なのか、そもそも戦王は死んでいるのか、はたまた封印されていて鍵を使って復活するのか、鍵とはただの喚喩表現で本当は別の物体ではないのか。


いろんな憶測が流れるが、情報が少なすぎて答えが纏まらない。


「何も情報はないのか?」


「えっと....実はね...その...持ってるの...」


ものすごく言い難そうに、たどたどしくトゥーナが言う。

じれったくなって聞いてみる。


「持ってるって何をだよ」


そこでハヤトは、聞かなければよかったと、後悔することになる。


「鍵...」


その瞬間ハヤトの中の時間が止まった。

ただ思考だけが、ぐるぐるとめまぐるしく飛び交っている。


(えっ、こいつなんて言った?鍵を持ってる?そりゃ持ってるだろ鍵ぐらいな。

鍵...鍵...そもそも鍵ってなんだっけ。紙を食う奴、いやそれは山羊だってうがあああああああああ)


ついに思考までもが時を止めてしまった。

さらには崩壊までも。


「トゥーナお前なんでそんなこと黙ってたんだよ」


「だ、黙ってたわけじゃないのよ。ただ....」


「ただ?」


「聞かれなかったから答えなかった...だけ」


「十分悪質じゃ阿呆っ!!」


これにはハヤトもキレた。


「いやだって...」


「だってじゃない。ったく、それのせいでどんだけの人が死んだんだろうな」


と言うとトゥーナは俯いて、目をうるうると光らせる。


「だって...知ったの...つい...さっきだし...」


とうとう泣きながら、グチをこぼしてしまった。


「わかったわかったから。俺が悪かった、言いすぎた」


さすがにここまでになると、イケナイことをした気分になって謝る。


「で、その鍵はどこにあるんだ」


「奥の部屋に仕舞ってある...」


「これからどうする気だよ。確実にここ狙われるぞ」


「えっ?逆に狙われないほうが不思議だけど」


何を言ってるんだといわんばかりの口調で言ってくる。


「それどういうことだ?」


「戦王が死んだと言われているのがここなのよ。そしてそのあとにウィリアナ王国が建った。つまり、ここは戦王の信者にとっては聖地なのよ」


キリスト教でいう、イエス・キリストが死んだ場所が聖地であるかのようなものである。

キリストの場合は蘇っているのだが。


「迷惑な話だな」


「とにかくハヤトの任務は鍵の死守。二十四時間体制で見張ること」


「それって兵士の役目じゃ...」


「今日はハヤトは城に泊まり。わかったっ?!」


強制的に泊まりにさせられた。どうせ寝るところが地べたかベッドに変わるだけなので、あまり大差ないし、着替え用の荷物ももってはいないので別段問題はない。


「でもほら、俺ゼロナがいるし...」


「わ・か・った?わかったと言いなさい、いや言え」


最後は隠しもせずに命令形だった。

ハヤトはもう逃げられないと見て降参した。


二十四時間におよぶ監視デイズの始まりである。






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