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ゲーマー忍者の異世界無双   作者: 世捨て人
五章・ゼロの暗殺者
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思いは交錯するも交わらず

「まだ私のことが怖い?」


そんなことをいきなり聞いてこられても、ハヤトとしては答えが思いつかない。


「見て、私はちゃんと触れる。貴方も」


トゥーナはハヤトの手を取ってくる。


「お、お前何を...」


そして唇を合わせてきた、まるで押し倒すかのように。

残念なことに、トゥーナとハヤトの身長差では押し倒すどころかもたれるぐらいが精一杯だ。


それでもハヤトは頭がショートして、今にも倒れそうだった。


「これでもダメ?」


「お、おおおおおおお前、なななななな何をっ!?」


なぜかハヤトのほうが狼狽することになる。


「ハヤトあのね...」


とそのとき。


「あれこんなところでどうしました姫様?」


兵士といっしょに外に出ていたフローラが戻ってきたのだ。

トゥーナからすればタイミングが悪い。


「あっいや別に...」


「な、何もないわよなにも」


これはバツが悪いと、二人してあさっての方向に顔を逸らす。


「姫様...そういうことですか?じゃあハヤト様を縛って二人きりにしてもいいんですよ?」


「「何を理解したっ!!!」」


二人の全力のツッコミが入る。


「それは、姫様がハヤト様を襲おうとしてたところを私が偶然邪魔したと。

申し訳ありません、すぐさまお部屋の用意を(専用の器具も)用意いたします」


理解がいいのか悪いのか、どちらにしても悪い方向に話が進んでいく。


「ちょっと待てっ!今なんか入ってたぞ。なんだお部屋の用意をのあとの一瞬の間はっ」


「さあなんでしょう?」


「なぜに疑問形?ぎゃくにこっちが疑問を感じるのはなぜだ」


なんだかんだで、ハヤトも手玉に取られているのだ。


「じゃあ今すぐ準備してきますね」


「「してこなくていいっ!!!」」


と叫んだところで、フローラはさっさとスキップしながらどこかへ行ってしまった。

おそらく数分後には「準備ができました」とか言って呼びにくるだろう。


「あの余計な気遣いがなければいいのに」


「さて、全部終わったから帰る」


「えっちょっと待っ...」


意外とハヤトの行動は早かった。すでにそこにはいなかった。


「...なんでいつもこうなのかしら」


このときほどトゥーナが運命を呪ったときはなかっただろう。

ハヤトがどこかの王子だったらとか、思わないではない。






ハヤトは木々を飛びながら口を拭っていた。


「あいつなんなんだよ」


「わかっただろう主よ、あの娘の気持ちが。

お前を慕い、大事に思っている。それでもお前は突き放すのか?」


烏に諭されるとどうも腹の立つハヤト。

自分でもどうすればいいか、どうしたらいいかも全部わかっているつもりだが。

理性がそれを許さない。

体が動いてはくれない。


「ワシには関係ないことだ、好きにするといい」


烏までも消えてしまった。


「ちっきしょ...生き辛いのはどこもいっしょか」


ハヤトは自分の人生を振り返って呟く。

思い返すだけで胸くそ悪い人生だ。






「お帰りなさいハヤトさん」


家に帰ると、なぜかゼロナが奥さん風お出迎えで待っていた。


「お前なんでここに...」


「あのハヤトさん一つお願いしてもいいですか?」


「お願い?」


「お父さんになってください」


えっ?お父さん?ちょっと待てお父さん?えっ?お父さん?オトウサン?どゆこと?百歩譲ってまあお兄ちゃんぐらいならありえる。でもお父さん?ワケワカラナイデス。


ハヤトの頭のなかで、お父さんという単語がぐるぐると駆け回っていた。


「あの~...ゼロナさん?つかぬことをお伺いしますがお父さんとは?」


「別に深い意味はないんですよ?ただ私、昔から親がいなくて、だからハヤトさんみたいな人にお父さんになってほしいなって」


あまりに唐突な言葉に、ハヤトも空いた口が塞がらない。


「ダメ...ですか?」


「えっと...これどうしたらいいんだろ...」


そして一時間悩んだ末...。


「わかった...もうそれでいい...。」


ついにハヤトのほうが折れた。

一時間悩んでも、この無垢なる少女を悲しませずに断る口実が見つからなかったのだ。


「よろしくお願いしますねパパ」


呼び方変わってるし。


結局ハヤトに家族が一人増えた。






城では...


「姫様お部屋の用意ができましたよ」


上機嫌にフローラが戻ってきた。が、トゥーナの気はもうそこにはなかった。


「いい、今日は寝る...」


疲れた足取りでフラフラと歩いて、らしくない様子のトゥーナを見かねたのか。


「どうしました姫様。元気がないようですね」


後ろから抱きしめた。

まるで母子のように。


(あれ?なんだか...懐かしい、でもこれは初めてのはず...)


トゥーナはフローラが実母であることを知らないが、やはり母のぬくもりを感じたのだろう。


「悩みもつらいことも全部話してください。私は貴女の力になりましょう」


「うん...」


気づけばなんでも話していた。

隠し事や思うこと、もう話すこともないぐらいに。


「あらあら...寝てしまわれましたか」


ついには話疲れて寝てしまった。


「しょうがない方ですね、どっちも」


そうして静かに、トゥーナのさらさらとした髪をずっと撫でていた。



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