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ゲーマー忍者の異世界無双   作者: 世捨て人
五章・ゼロの暗殺者
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黒幕は人の手で堕ちる

降伏したゼロナを連れてハヤトは一度、トゥーナの部屋へと戻っていた。

ゼロナの処遇を決めるのは、トゥーナの判断が要ると判断したからだ。


「さあ答えてもらうぞ。俺たちを殺すように命令した人間は誰だ」


「フォーゲイザー様です」


あの男か。と満場一致で納得。


「またあいつ?いい加減にしてほしいわ」


「姫様今度こと燃やしましょう。焚刑です」


「いやいやもう塵に変えるわ」


さらさらと恐ろしいことが口から出てくるものだ。

そして実行できるからなお恐ろしい。


「なぁ。とりあえずあのバカ元王をどうこうするかは放っといて、どこにいるのかから聞かねえ?」


このエスカレートしていく状況下で、話が進まないのを拙いと思ったハヤトが、横からストップをかける。


「それもそうね」


「そうですね」


どうにか収まりがついたようだ。

しかし地雷を踏まないように、慎重に会話しないと、また話が戻ってエスカレートが終わらなくなるのを考えると、ハヤトの精神力はいやに磨耗していく。


「で、そこの子娘」


お前もだろ。そう思ったが、さきほど地雷は踏まないと決意したところなので、言わないことにする。


「あんたあのバカの居場所知ってるの?」


「姫様そのような言葉遣いではいけません。もっと『か』の前にあの音を伸ばさないと」


「いやそれさらに感じ悪くなってるから。一応お前ら女王とそのお付きだよな?」


明らかに王家の人間とは思えない会話に、ハヤトも苦言を呈す。


「あっ忘れてた」


「忘れちゃいかんだろ...」


もうハヤトもツッコミ切れなくなる。


「で、どこなの?」


「それは...」







ウィリアナ王国の外れの森。

ハヤトが住む森とは、ちょうど国をはさんで反対側に位置する森に作った隠れ家に、フォーゲイザーは潜んでいた。


(スコープは無事に任務を果たしただろうか)


スコープとはゼロナのコードネーム、スコーピオンの愛称だと自分はおもっているが、周りはまったく思っていない。

実はゼロナでさえもいつか改名したいと思っている。


(ちょっと気になる。だがここで見に行くようなら王失格だ。

しかし気になる)


こうしておどおどしている時点で、王など当の昔に失格である。


(ま、いっか。こうして待っているだけでいいんだからのんびり...)


そんな甘い考えはすぐに崩れ去る。


「随分と余裕そうだな、フォーゲイザー?」


聞きたくもなかったその声に、フォーゲイザーは身を震わせる。


「お、お前なぜここに…」


「俺だけじゃないぜ」


ハヤトの指す方向には。


「そこまでよフォーゲイザーっ!!!」


「トゥ、トゥーナ...姫。なぜだお前らは死んだはず…」


「ちゃんと確認したのか?」


「す、スコープはどうした?まさか...」


「死んでませんよ。ちゃんと生きてます」


ゼロナが歩み出る。


「スコープ。いや、ゼロナ。まさか裏切ったのかっ!!この僕をっ!!!」


「もうやめにしませんかフォーゲイザー様。私たちは負けたんです」


「馬鹿な、そんなはずはあるか。僕は王、生まれついての王...こんなやつらに負けるはずが...」


___タァンッ!!!。


言い終わる前にゼロナが、フォーゲイザーの喉を撃ち抜いていた。


「しゃべりが過ぎましたね。もう貴方は王でもましてや人でもありません」


「この...くそがき...」


フォーゲイザーの体がドサリと音を立てて転がる。


「ありがとうございました」


こんな屑でも、ゼロナにとっては恩人に変わりはないのだ。


「ゼロナ...」


「これでいいですか?」


「不正解だ、馬鹿野郎。少なくとも人としてはな」


本当はハヤトだって褒めてやりたかった。でも褒めればきっとゼロナはこれからも道を間違える。

だから褒めずにあえて不正解と答えた。


「人を殺すことは正義か?」


「いえ」


「じゃあ悪を殺すために人を殺すことは正義か?」


「違うんですか?」


「悪でも正義でも、人を殺したらそいつは人殺しだ。同じように悪なんだよ

お前は、そうならないで欲しい。わかるな?」


「はい」


「よし」


ハヤトはゼロナの頭をわしわしと撫でる。

トゥーナはそれを見て、かなり不機嫌そうなオーラと目でみてくるが見ていないことにする。


「あのハヤトさん。実はまだ片付いてないことが」


「なんだよ」


「フォーゲイザー様には協力者がいたんです。このウィリアナに」


「「「なんですとっーーー!!!!?」」」


ウィリアナの三人の声が重なった。






私の名はレイ。前国王レクスの弟に当たる。

レクスが死に、妻のリラも死に、ついに政権を我が物にと思っていた矢先に、トゥーナにその座を奪われ、そして暗殺を企てようとしたが、いくどとなく阻まれた。


さらには、あろうことかあのハヤトとかいう忍びのせいで、余計にやりづらくなったではないか。


フォーゲイザーの小僧に、トゥーナを上手い具合に丸め込み、ハヤトとかいう男を暗殺すればフォーゲイザーの後ろ盾である俺は、バールとウィリアナ、両方の政権を握れるはずだったというのに。


「まったく。失敗しおってあのガキめ」


「何を失敗したんだろうな」


「それは貴様らの...って貴様っ!?」


おっテンプレな驚き。


「おじ様」


「ひ、姫...様...」


トゥーナの姿を見ると、力を失ったように膝から崩れ落ちるレイ。


「これまでの所業、すべて聞かせていただきました。これから国王として貴方に処断を下します」


「馬鹿なっ!?私を罰する?笑わせる。私は王族の人間だぞっ!!!」


原則王族の人間は裁かれることがない。

しかしそんなルールは、トゥーナの前ではぼろきれに書かれた文字も同じ。


「貴方をコドル島へと流刑にします」


コドル島とはウィリアナが所有する、唯一の島である。周りに島も陸もない完全な孤島で、もちろん島民などいない。


「あんな辺境の島にっ!?この...私を!?」


「今すぐ連れて行きなさい」


近くの兵士に命令すると、もう用はないといった風に、足早に去っていった。


「おいトゥーナよかったのか?」


「あの人はもう王族じゃないもの。あれはただの罪人。情けなんていらない」


「それでも親戚だろ」


「私は国王よ、どんなときでも非常になれる心を求められているの」


その顔には紛れもなく涙が伝っていた。

ハヤトはこんなときに、抱きしめてもやれない自分の弱さを心底から恨み、怒った。


と、思っていたら。


「ハヤトッ!!!」


トゥーナのほうから抱きついてきた。


「いやっちょい待てっ駄目だって、おい...」


「いいから、このまま居させて」


そのときのトゥーナの顔は、ハヤトに埋もれて見えなかったが確かに涙でぐしょぐしょだった。


「ハヤト」


「あ、あががががががが....」


ハヤトは精神崩壊を起こしかかっている。


「まだ私のこと怖い?」





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