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ゲーマー忍者の異世界無双   作者: 世捨て人
五章・ゼロの暗殺者
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誘い、それは是か非か

トゥーナは今日はいつもと違い、部屋ではなく墓地を訪れていた。

トゥーナの両親、レクスとライラの墓参りのためだ。

この世界においても、墓参りという概念は存在するが、基本土葬である。


そして両親の墓は城の裏手に、ひっそりとつくられていた。それなりに大きいが。


「お父様、この国は大きく変わってる。ちゃんと約束は果たせそうです」









『トゥーナ。私がもしいなくなったらどうする?』


『お父様いなくなるの?』


『私だっていつかはいなくなる。それは明日かも知れないし今この瞬間かも、それともかなり遠い未来かも知れない』


少しさびしそうにレクスは言っていた。と思う。


『いやっ。お父様、ずっといっしょにいて』


『できないことは約束できないよトゥーナ』


この頃のトゥーナは、わがままばかり言ってよく父を困らせる娘だったということを、トゥーナは覚えている。

もう少し賢かったらとか後悔していないでもない。


『できるもんっ!』


無理難題を言うものだ。レクスも子供のいうことだと半ば諦めている。


『無理を言うものじゃないよトゥーナ』


『だって。お父様がいないのなんて嫌っ!』


『さっきもいっただろう。いつまでも一緒にはいられないって、だから一つだけ約束してくれ』


『なあに?』


『私がいなくなったこの国を、トゥーナが変えてくれ。ちゃんと好きな人と結婚して、国中が笑顔になれそうなそんな国に』


『う~ん...よくわかんないけどわかった。約束』


トゥーナは小指を差し出す。


『頼んだよ』


レクスも小指を出して指切りで約束を交わした。おそらく最初で最後の約束だったろう。

そしてそれから数日してから、レクスは死んだ。





「私はちゃんとお父様との約束を果たします」


(そういうことか...)


と影から観察しているのは、例によって見回りにきたハヤトだ。

こっそりとトゥーナの様子を監視しているつもりだったが、変なことを聞いてしまい、複雑な心境に変わる。


「気になられますか?」


いきなり声をかけられて攻撃態勢に入る。

が、声の主はフローラだった。


「すみませんいきなり声をかけて」


「いやこっちもすまなかった」


「私とは面と向かって話をなされるのですね。嫉妬されますよ」


「少しは気をつけているつもりだったんだけどな...」


ハヤトもだんだん免疫がついたのか、ついてないのか、見るだけなら問題はなくなった。触れるまでいくとアウトだが。


「あんたは家族とかいないのか?」


「家族は15年も前に娘を失ってから一人です」


(15年...)


どこか引っかかるものがあったのだろうか。

15と言う数字について、考えこんでしまうハヤト。


「あっハヤト!」


トゥーナもこちらの存在に気づく。

あいつも気配読めたのか。


「何してるの二人で」


「立ち話」


「井戸端会議です姫様」


示し合わせたように答える二人に、釈然としない様子のジト目で睨みつけてくる。


「何もなかった?」


「何もなかった」


「なにもありません」


これもまた息ぴったり。案外トゥーナを弄り倒してるだけあって、気が合うのかもしれない。


トゥーナは面白くないという顔を浮かべて、ため息。そして。


「ハヤト。あなたに言いたいことがあるの」


「俺に?」


フローラが「まさかっ?」とか言ってすごくわざとらしい反応は無視することにする。


「こ、今度お祭りをやるから。あ、あなたも来なさい」


ようするに祭りの誘いだった。

ハヤトとしては別に仕事でもないので、断ることもできるがあえてOKしておく。

国のことについてあまり知らないのを、ハヤトはよくは思っていなかったからだ。


「しかし何でまた今の時期に祭りなんだ?」


「あさってから鎮魂祭、死んだ人の魂を弔うためにお祭りをするの」


お盆のちょっと派手なバージョンという解釈にしておいた。正直鎮魂祭とかいわれても、内容がまったく掴めないからだ。


「そっか。そういう風習だもんな」


「ハヤトは違うの?」


「俺が生まれたところじゃ、鎮魂祭じゃなくてお盆っていって。死んだ人の魂が現世に帰ってくるから、その間ゆっくりさせてあげようってことで、一応祭りっぽいのはやってたような気がするけど。

基本的に踊りを踊ってるだけのさびしい祭りだったよ」


お盆であっても関係なく、ゲームしてた男がいうことではない。


「そうなんだ。ちゃんと死んだ人も大事にするんだ」


「死んだ人もな」


ハヤトの身内で死んだ人といえば、爺だけで他はみんなぴんぴんしている。

ハヤトはそこだけが不思議だったが、まあどうでもいいことだ。


だから死んだ人を大事にするとか言われると、爺を大事にするとしか認識がいかないのだ。


「と、とにかく言ったからね。ちゃんと来なさいよ?」


「あ、ああ…」


なんだかこんな殺伐とした世界であるのに、平和ボケして祭りなどやってていいのだろうかと思ってしまう。

それで言葉に詰まってしまった。


「じゃあ…な」


少しきまり悪そうにハヤトは姿を消した。


「姫様」


フローラがどこかまじめそうな声で声をかける。トゥーナが振り返ると。


「どんまい」


トゥーナはイラッとしたのかフローラとにつっかかって三十分費やした。

こうしてみれば、まるで時折喧嘩する仲のいい親子のように見えるのだが。



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