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ゲーマー忍者の異世界無双   作者: 世捨て人
五章・ゼロの暗殺者
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一時の平和

あの事件から三日。フォーゲイザーが脱走したことは、依頼主にあたるトゥーナにもちゃんと知らされている。


当然の対応として指名手配、さらには打ち倒して首を持ち帰った者には、望みのものを与えるというお触れを出し、国民を焚きつけて標的の存在を、完全にこの世から消そうとしている。


「困ったわね~...」


トゥーナは机に向かって頭を抱える。


「どうされました?」


トゥーナ専属使用人フローラが、困ったと口に出して困っているトゥーナを気遣い聞いてみる。


「ハヤトよ。あいつ一ヶ月休みって勢いでいっちゃったのよ」


「また豪気なことを」


バールに無理やり行かせるための交渉材料として、一ヶ月休暇と口走ってしまったのだ。

しかも破ったら出て行くとまで脅されている。

実際ハヤトは国から出て行っても、今のような暮らしがずっと続くわけで別に生活に支障がでるわけではない。

したがって被害が出るのはトゥーナだけだ。


「あいついなくなるとすっごく困るんだけど」


「二重の意味で。ですか?」


フローラが面白がるように茶々を入れる。


「あ~はいはい二重の意味でね」


トゥーナもやられっぱなしではなく、対抗する術を覚えたようだ。

フローラは少し残念そうな顔で見つめる。


「な、なによ...」


「姫様いつからそのような技を」


「はぁっ?」


「私があの方の話しを出すと、顔を赤らめて恥らう貴方を見て遊んでいたというのにそれなのに…」


「いまとんでもないこと聞いたわ」


一番信頼していた彼女に、ただ遊ばれていたという事実に今始めて気づく。

そして怒り狂った様子で、フローラ向かっていくが、箒の柄の部分で頭を押さえられてジタバタするだけとなる。


「ダメですよ姫様、それぐらいで怒っては。淑女はいつでも笑顔です」


「あんたのせいでしょうが~!!!!」


こうなっては品格も何もあったものではない。


「乱れまくってんな姫さんよ」


いつものように窓から聞こえた声に、トゥーナは即座に反応する。それに一秒とは掛からなかった。


「ハヤトっ!?休みなのにどうして来たのっ?」


「どうしてもこうしても、あんなことあったばっかだから様子見に来た。

別に変わった様子は無さそうだから帰る」


ちょっと見に来てすぐ帰る。ひやかしかと言われそうだが、一応目的はそれだけと決めてあるので。


「えっもういくの?」


「ちょっと傷がまだ治ってないんだよ。あんまり動いたら、また開くから帰っておとなしく寝てることにする」


普通手術のあとというのは絶対安静が原則だが、ハヤトは強靭な肉体により、とりあえず日常生活を送るぐらいのことはできる。

あくまでもハヤトの中の日常生活だが。


「そうなの?残念」


「何が残念なんだ?フローラさんに弄ってもらえないからか?」


最初から聞いていたようだ。

その瞬間、一気にトゥーナは頬を真っ赤に染めてうつむくようにして、恥らう仕草を見せる。


「ど、どこから聞いてたのよ」


「困ったわのところからだ」


「ほぼ全部じゃないっ!!!」


手元にちょうどあったスタンドライトを放り投げる。

が、ハヤトはぺしっと蝿でも掃うように叩き落とす。


このやりとりを見て、うらやましいとかいいながら写映機(地球でいうカメラのようなもの)で、トゥーナの顔をパシャパシャと、奇跡の一枚でも現れたように写真に収めていく。


「ハヤト様、いえ師匠」


何を学ぶつもりだろうか。こんなトゥーナを弄ることしか能のない男から。


「是非姫様を恥辱に染め上げる技を伝授ください」


能をすべていただく気だった。


「俺の修行は厳しいぞ」


修行も何も、ただ単に性格が悪いだけのドSである。学ぶことなど何一つ無く、また鍛える必要も毛頭ない。


「はいっ!姫様の赤面を見るまではくじけません」


「いやくじけて。できれば今すぐに」


「ではいこうか。赤面に向かって」


トゥーナのツッコミは、軽くスルーされたうえに、なぜか師弟関係が成立していた。

ここに史上最も質の悪い師弟誕生である。


「まずは聞かれたくない部分だけを注視して聞く...」


「なー!!!!」


これ以上は危ないと思ったのか、トゥーナが自ら静止をかける。


「なんだよ冗談だろ」


「冗談に聞こえないのよ、かなりリアルにきそうな話しているから」


「冗談ですよ姫様。赤面が見たいのは本当ですが」


「そんなによくも堂々と、本人を前にして本人にいえるわね」


呆れを通り越して、尊敬すら覚えるレベルだった。悪い意味で。


「さて、たっぷり遊んだから帰るわ。気ぃつけろよ」


「う、うん...」


さすがに、ハヤトもずっと護衛はしてられないので、こればっかりはトゥーナに気をつけてもらうしかない。

最低限の呼びかけだった。


ハヤトはいつもと同じように、音もなく消える。


「フローラ」


「はい?」


「その手に持ってるのはなにかしら」


その手には数枚の写真が。


「姫様の恥ずかしい赤面写真の数々です」


「貸して、いますぐに燃やすから」


このあと写真がどうなったかは、炎とフローラの涙だけが知ること。


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