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ゲーマー忍者の異世界無双   作者: 世捨て人
四章・策略の求婚者
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絶望の底へ

「姫様っ!!!」


バタンッと壊れたかと思うほどの音を響かせて、フローラが飛び込んでくる。


「何よそんなに慌てて」


「ついにあのお方が」


「ついに来たわね外道の皇帝」


皇帝とかかっこ良さ気な単語がついてるが、外道という単語で台無しである。


「姫様、いけません」


これを姫としてよくないと思ったのか、フローラが叱る。


「あれは皇帝などといいものではありません。ただの屑です屑」


何気にフローラも容赦なかった。先ほどのはトゥーナの罵り方が甘いというほうで叱ったのだ。


「いいえ、あいつは塵よ塵。焼却場に持っていったほうがいいわ」


「いえいえ持っていくと言わずに、今すぐに焼き討ちにするべきです姫様」


「それもそうね。ハヤトが帰ってきたらやってもらお」


トゥーナは、今もハヤトがフォーゲイザーの護衛をしていると思っている。

ましてや、谷へと投げられたなどとは知らない。


「愛する殿方ですものね。恋の火種は大きくですか?」


面白がってフローラは、小悪魔的な笑みを浮かべて弄っていると、トゥーナが顔を紅潮させて黙り込むので「これはこれは」とさらに面白がっていた。


「さっきから散々に言ってくれるね」


「あら居たの?あまりのゴミぶりに全然気づかなかったわ。フローラ、焼却場へと案内して、あと管理人と護送人も呼んで」


相手を目視してから、わずかコンマ三秒で罵詈雑言を浴びせる。普段のトゥーナならまず絶対しないだろう。


「まったくますます棘を増やして、キレイな薔薇にこそ棘はあるものだけどね」


そういって薔薇を取り出す。それを見て「うえぇ...」とか姫にあるまじき行為で、嫌悪している様子を示す。


「あっでもキレイじゃなくても棘はあるんだよ」


「知ってるわこのゴミ屑ペテン師!!!!」


手短にあった灯台を一直線に放り投げる。

フォーゲイザーは首の動きだけで、それを避けて見せる。

そのときの得意げな顔が鬱陶しかったのか、直接股間に蹴りを入れる。


「ぐぉぉぉぉぉぉぉ...」


「聞いたフローラ?あいつ自分のことを悲鳴にして伝えてるわよ。愚王って」


「姫様はしたないですよ。そういうときはお顔がめり込むほどのパンチです」


どっちもはしたないことは変わりない。ダメージを与える部分が上か下かになっただけだ。


「い、いいかげんにしろよ...」


さすがにフォーゲイザーも黙ってはいなかった。


「どうしたのよドMゲイ様」


「誰がドMゲイだっ!!」


もう体裁関係なくツッコまざるを得なかった。


「本当にゲイ様?」


「だから違うと言っているっ!!」


「何しに来たのよ馬鹿王。ツッコミするために来たなら帰ってよ、そうでなくても帰ってよ」


「選択肢ないな...。ゴホンッ、トゥーナ王女。僕と結婚してください」


フォーゲイザーの目的は最初からこれ一本と決まっている。

そしてトゥーナの返事も一つと決まっている。


「帰って。貴方には興味がないの」


これで何回も断っている。


「これで二百回目だ」


「二百回目ならいい加減諦めなさいよ」


「僕は絶対に諦めない。必ず君を僕のものにしてみせる」


「二度と来ないで」


トゥーナの拒絶を、ツンデレかなにかと勘違いしているのか、顔を綻ばせてまた来るよとか言って出て行こうとする。


と、そこであることに気づく。


「ハヤトは?」


いつもなら、影から茶々を入れてくるはずの、ハヤトの声が聞こえて来ない。


「彼はね…」


くるりとこちらを振り返って。


「死んだよ」


顔はあくまでも悲しそうな顔で、だが心の中は残虐さに満ちていた。それもそのはず。ハヤトを殺したのはこの男なのだから。


「うそ...ハヤトが...死んだ?」


「この目ではっきりと見た。崩れた崖から落ちた彼の姿を」


即席で考えた嘘にしてはよくできている。


「そ、そんな...」


全身から力が抜けたように、ストンッと膝から崩れ落ちる。


「姫様っ」


「フローラ、しばらく一人にして。この人に泊まる部屋を案内して」


「はい...」


こんなトゥーナを見るのは初めてなので、フローラであっても戸惑ってしまう。

かつて父を失ったときでさえ、こんな風にはならなかった。


「こちらです」


フローラは今フォーゲイザーを近づけてはいけないと、遠ざけるように連れて行った。






トゥーナは床に座り込んだまま動けずにいた。


ハヤトが死んだ?。なんで?どうして?一人にしないって約束したのに。

あれは嘘?

また一人?私には誰もいない?一人?独り?ひとり?

嫌だ。嫌だ。助けて誰か。誰が?ハヤト。もういない。ハヤト助けてよ。


トゥーナの心は、もう押せば折れそうなぐらいに弱っていた。







(ようやく気の強さが抜けたか。あと一押しで...)


フォーゲイザーは、与えられた部屋でひとり、勝利の余韻に浸っていた。


(しかしあのハヤトとかいう男を殺れたのは奇跡に近かった…。何者なんだあいつは...。まあ、しかし死んでしまっては屍としかいいようがないな)


「フハハハハハハハハ!!!!!」


高尚な高笑いが、部屋の中で反響してさらにフォーゲイザーの優越感を助長していた。







その頃...


「ごふっ!!!」


ハヤトは口から大量の血を吐き出す。

それも、臓器のいくつかが潰れたと思えるほどの。


谷底に落とされても、まだハヤトは生きていたのだ。

元々ハヤトの体は、成層圏から落とされるようなことをしなければ、死ぬような体ではない。問題は腹に埋まった弾丸だ。取らなければハヤトといえども失血死する可能性がある。


「くそがっ...影...分身...の..術...」


残り少ない生命力を使っての、影分身を行う。


「やるぞ」


「頼むぜ...分身...」

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