闇の策略師
ハヤトの前方数キロ先に大きな国が見える。あれが目的地バール王国だろう。
そして今回のハヤトの任務というのが。
『バール王国国王フォーゲイザーをウィリアナまで護衛してくること。
もし道中おかしな行動をした場合は問答無用に国を滅ぼす、もしくは国王を殺しちゃっていいわ』
という感じで頼まれたのだ。
「どんだけ嫌なんだよあいつ...本当に建前か」
ブツブツと文句を垂れながら山を降りていく。
「お兄さんこっちだよ」
降りていこうとした矢先に近くを通り過ぎようとした老人に声をかけられる。
「あんたは?」
「わしはただの老いぼれじゃ。バールに行きたいんじゃろう?
そこの森を抜けていけば抜け道に行き着くよ」
そういって少し森の開けた場所を指差す。
「ありがとな爺さん」
「気をつけなされよ。いきなり攻撃されてもな」
森を抜けていくとバールの裏側に出る。
「マジで抜け道か。どうなってんだこれ」
不思議な森だと思う。真正面から違う方向にいくと裏手に行き着くのだ、どんなルートを通ったかもわからない。
「さて、城までいくかな...っ!!!」
歩きかけたハヤトを闇討ちでもするかのように後頭部に刃が迫ってきたのでハヤトは忍刀を半分だけ抜いて受け止める。
「何者だ」
「・・・・」
「質問に応じる気はなしか」
回し蹴りで蹴り抜く、敵が飛びのいて避わしたことで距離が開く。
そしてハヤトは振り返って敵を確認する。
「誰だ」
敵は仮面をした剣闘士ともとれる格好をした男だった。
「剣先は悪くない。それを支える戦闘技術もな」
「誰だか聞いてるんだが?」
「答える必要はない。なぜならここでお前は死ぬっ」
高速で走り出し、針ほどしか太さのない剣、レイピア特有の最大の攻撃、突きを繰り出す。
レイピアとは斬るよりも突くを目的として作られた中世ヨーロッパにおける基本武器だ。
そして今、最大速での突きがハヤトに向かっている。
「死ねっ!!」
突きが眼前に迫った瞬間、ハヤトは体を逸らし、レイピアは跳ね飛ばした。
「くっ...」
ハヤトは手を押さえる敵の仮面を斬り飛ばした。
仮面がカランコロンと音を立てて転がる。
「お前はっ!?」
その顔はついさっき見た老人のものだった。
「気づかれてしまいましたか」
「どういうつもりだ」
「国王の命により、護衛の者を試して来いとのことです。」
「試す?俺を?」
「はい。私はバール王国国王側近執事、スクレールと申します。昔は剣闘士をやって居りまして、腕には自信があって挑んだのですが。これほどとは」
額の汗を布で拭いながらさっきまでの気迫が嘘のようなやわらかい雰囲気で話す。
「そっちの王様は用心深いのか?」
「いえ、今回の護衛が一人と聞いてましたので。裏を取るために
しかしこれなら合格でしょう」
「合格不合格なんててめえに決められることじゃねえんだよ」
ハヤトは殺気を強める。
「お前さっき殺す気なかっただろ。こいよ、殺してやる」
「お戯れを今の貴方とやる気はありません」
それを聞いて「つまんね」とか言って殺気を収めてしまった。どうやら敵対心の有無を確かめるハッタリだったようだ。
「では案内いたします」
「ここにございます」
「おう」
とうなづいて一秒で王室の扉を蹴り破っていた。スクレールの口はあんぐりと開けて開いた口がふさがらない状態だ。
さらには中にいた女中まで同じ状況だ。
「俺がウィリアナからの使者ハヤトだ!」
「は、ハヤト様!!!何をやっておられるのですか」
「ん?ああ、邪魔だから蹴飛ばした」
ハヤトは悪いとも思ってはいない。
むしろ壊してもいいものとさえも思っている。
「スクレールいいよ。壊れたらまた作り直してくれれば」
奥から落ち着いた声と足取りで誰かが歩いてくる。
「初めまして。僕がこの国の国王フォーゲイザーだ」
「ハヤトだ」
階級がどうとか関係なく敬語とか使わないのがハヤトがハヤトたるゆえんだ。
「その扉の請求はウィリアナでいいのかな?」
「いいぜ」
関係ないことをいいことに快諾。後でトゥーナに怒られるとかは考えてない。
「だそうだ」
「はい。しっかり請求しておきます」
声とは裏腹にそうとう怒っているようだ。そのあとの苦労とかを考えれば当然だ。
「それはそれとして。こうして護衛が来たことだし出発は明日にしよう
今日はここに泊まっていくといい」
「そうか。世話になる」
「フォーゲイザー、首尾は?」
「ああ。問題ない
彼がそうなんだろ」
暗い一室でフォーゲイザーと何者かの二人で話している。
もう一人の男は灯りすら持たずにいるので顔の判別すらもつかない。
「ああ。やつが今トゥーナがもっとも信頼する戦力だ」
「じゃああいつを倒せば」
「容易くお前のものになるだろうな」
フォーゲイザーは不気味に口角を吊り上げる。
「やっと僕のものに。ウィリアナのトゥーナ、一度は手にしたいと思わせる絶世の美女。それを僕が手に入れる
そして...」
「俺がウィリアナを手に入れる」
「僕たちの悲願のために」
「悲願のために」
二人は拳を合わせて何かを誓い合った。
そして翌朝、バール王国国王一行は国を出発した。
自分え書いててこれはどこへ向かっているのだろうかと思うことが多々あります。
怖いな自分で思ってても直せない状況。
次はどうなるかハラハラした展開がかければいいんですけどね。
毎回がどうなるかわからず自分がハラハラしてます。
戦々恐々とはこういう精神状態において使うべきですね。
それではまた明日...かも。
 




