忍び山道を行く
ハヤトが一週間の休暇もとい睡眠の間にトゥーナの元には一通の手紙が届いていた。
「姫様!!バール王国から書状が」
トゥーナの執務室の扉を勢いよく開けてトゥーナの世話係の使用人フローラが飛び込んでくる。
「何?またあいつなの」
「またあの方です」
この会話から察するに書状の中身はわかっているようだ。
「はぁ...いいかげん諦めてくれないかしら。あいつの護衛に国の予算回すの無駄でしかないのだけど」
「姫様が誰かとご結婚なさればよいのでは?」
とこれを聞いた瞬間トゥーナの顔が高潮する。
「ちょっとフローラ!!」
「冗談ではありませんよ?」
「なんで疑問形なのよ!そういう話はまだ早いからっ」
フローラはこうして狼狽するトゥーナを見て遊んでいるようだ。
趣味が悪いとはこういう人をいうのだろう。
「とにかくっ。今すぐハヤトをここに呼んで」
「はいかしこまりました。愛しの人を呼んできますね」
「最後の余計っ!」
「で?なんで俺呼ばれたの?」
寝ているところを手紙がきたという理由で烏に起こされてしまったハヤト。もちろんご機嫌斜め89°で、ほとんど傾きすぎて直角だ。
「ちょっと護衛行ってきてほしいな~」
「帰るぞ」
ご機嫌斜め89°は容赦ない。
「お願い行ってきて。貴方が一番国費使わなくて済むの」
「金の話かっ!!」
頼みごとするにもダイレクトに金の話を持ち出してくるあたり最悪行かなくていいとまで思っているのだろう。
「だってあいつウザイんだもんっ」
「もんっじゃねえんだよもんっじゃ。お前絶対そういうキャラじゃないから」
キャラって何?トゥーナが首をかしげて聞いてきたが説明するとさらに疲れるのでまた今度ということでとりあえず逃げた。
「ウザイって知ってるやつなのか?」
「貴方に行ってもらおうと思ってるのはバール王国。山に囲まれた背山臨水ができているってしかとりえのない国よ」
背山臨水とは昔の国づくりにおいて強国となる基本的な建設ルールのようなもので、山がなければ攻め込まれやすくなり、また水がなければ国が栄えない。
逆にそれが両方そろった国は強い国になりやすいということで背山臨水は当時重く用いられた。
「てことは山登りか。絶対いかねえ」
五歳の山登り以来山登りは止めると決めてあるのだ。なぜか止めたくなった。それは爺とのことを思い出すと少し辛くなったことがあるからだ。
それだけハヤトにとっては爺といたたった五年、それより短い時間が貴重で、またかけがえのない記憶なのだ。
「そんなこと言わずに行ってきてよ。終わったら一ヶ月休暇とっていいから」
その一言にハヤトの耳がピクピクと反応する。
一ヶ月。その単語はハヤトにとっては魅力だった。
なぜならいまでさえ休日返上なのだ。
「だ、だまされねえぞ。ど、どうせまた休日に呼び出すんだろ?お、お見通しだ」
「その割には声上擦ってるわよ」
精神が揺さぶられているのがバレバレだった。
「...っち。わかったよ、行ってやる。ただし破ったらこの国出て行くからな」
最低限の脅しだった。
「わ、わかってるわよ?」
「なぜに疑問形?不安しかないんだが」
結局渋っても行かされることになる。
「うわ、ガチで山だ」
ハヤトはバールへの道のりと言われた山を登り続ける。
意外にも険し目の山で、一般人が登るのはキツイように思う。
さらに言うと整備もされた様子もなく、馬車が一台通るのがやっとだ。
よくこれで何年も使ってるな。
ハヤトは逆に関心していた。
これを見ると地球がどれだけ楽な環境であるかがわかる。
青い緑。さえずる鳥の声。森から飛び出してくる熊のような猛獣...。
「GURRRRRRRRRRRR...」
どうやら腹を空かせて降りてきたようだ。
しかし腹が減っているのはハヤトも同じ。
「熊...鍋...」
熊を見た瞬間にハヤトの目は得物をみつけたライオンの目に変わる。
それを感じ取った熊は食われると思ったのか一目散に逃げ出した。
しかしそれを逃がすハヤトではない。ましてや、久しぶりの食料を逃したりはしない。
後ろから山形にクナイを投擲し、鼻先に刺さる。
熊の弱点は鼻であり、ここを叩けば熊は倒れる。
そして今は刃物を刺したのでおそらく感覚まで麻痺している可能性がある。
案の上倒れて動く様子がない。
「熊...鍋...」
ハヤトは横たわる熊の首を落として解体して土遁で作った鍋で炊き始めた。
もちろん鍋の内側には防水加工をしているので十分炊くことができる。
「熊ってのもいいな...もしゃもしゃ。食ったら...もしゃもしゃ。いかねえと...もしゃもしゃ」
もしゃもしゃと音を立てて食べるその姿は品も何もないがそんなことを気にする人間はここにはいない。が、草むらにはいた。
ガサガサと草むらを揺らして現れたのは先日であった少女だった。
「あっ君は」
「こんにちは。また足増したね」
「はっ?」
突飛な挨拶に多少ではなく面食らい、頓狂な声を上げる。
「まちがえました。また会いましたね」
どうやって間違えたのだろうか。
「ははっ...個性的な挨拶どうも」
「こんなところで何を?」
「何日かぶりの食事だ。まともに食ってないからな」
「そうですか....じー...」
少女は鍋を興味深々な様子で眺めると、とうとう腹の音まで鳴ってしまい、恥ずかしさに赤面する。
「食うか?」
少女は何を言うでもなく一回コクンと首肯して鍋を囲んだ。
「君名前は?」
「ゼロナ」
変わった名前だな。
ハヤトからしてもあまりゼロナとかいう名前をつける話は聞いたことがない。
「俺はハヤトだ。よろしく」
「・・・」
黙ってしまった。あまり友好的な性格ではないということだろうか。
「鍋。美味かったか?」
コクンと首肯する。どうやら一般的な挨拶程度の会話しかしないようだ。
そしていきなり立ち上がると。
「ごちそうさま。さようなら」
それだけ行ってどこかへ走って行ってしまった。
聞いた話題が悪かったのかと頭を悩ませるがそんなに悪い話題ではなかったと思うので単純にいくとこへ行っただけだろうと楽観的に考えることにした。
「あとどれくらいだ?」
こんなときに頼りの相棒は寝ている間の世話で疲れたとか言って休暇中である。
主があれなら使役している動物もあれである。
仕方なく道を抜けていくと。遠くのほうに大きな町が見える。
「あれか...」
はい。少々ボリューム増しました。
いや~感想きましたって報告書いてあるのいいですよね。なんかやる気でますよね。
ちょっとお願いなんですが。
感想書くとき、面白かったとかいう感想じゃなくてどこがよかったこうしたらいい
とかのアドバイスみたいなのがほしいです。
もちろん面白かったも励みになるのでありがたいんですが、やっぱり読者様の声も聞きたいなと思ってます。
できればでいいのでお願いします。




