突然の来訪者
あのあと朧呼び出してヴォイスに操られていたときの事を聞いた。
「なぜかあのものの声に耳を傾けたくなった。そしたら急に意識が虚ろになった」
この回答では少し漠然としすぎている。そこでハヤトは別の質問をしてみる。
「操られている間、何か感じなかったか?」
「頭の中に手を突っ込まれて掻き回されている、胸糞悪い感覚だけだ」
どうやらドラゴンには感じるものはなかったらしい。
「わかった。ありがと朧」
「うむ」
そのまま煙となって消えてしまった。
これで手がかりはなくなった。
「直接本人に聞きだしてやる」
ハヤトは拳を手のひらに当てて戦う意志を示す。
「さて...」
ハヤトは何かを思い出したように自分の血を手のひらに塗り始めた。
そして...。
「口寄せの術!」
煙幕とともに黒い鳥、烏が召喚される。
「無事勝てたようだな主」
自分は知りませんよといわんばかりの抑揚のない声で話しかける。
「どこの誰だったかな?戦闘開始一分もしないうちに水流にやられて俺を空中へと放り出したのは」
ハヤトが空中でドラゴンたちに襲われるハメになったのは、烏が消えたことにも責任の一端はあるのだ。
そうでなくても襲われたのだが。
「烏に蜥蜴の相手をしろというのか?」
「得意だろ?蜥蜴遊び」
烏が得意なのは蜥蜴遊びではなく蟲を集めてくるほうだと思うが、面倒に思ったので烏は突っ込むのを止めた。
「わしを呼び出した理由は?」
「言っただろ。お前は俺の補佐をしてくれって、隣でも肩でもいいからいてくれないと俺が困る」
もう少ししっかりしろと言いたくなったが、何も知らない世界で一人で行動させるのもどうかと思ったのでNOとは言わなかった。
「そういうことなら」
バサバサと翼を羽ばたかせてハヤトの肩にふわっと飛び乗る。
「これでよいか?」
「ああ」
うなづいた瞬間にトランシーバー越しにトゥーナの声が聞こえる。
「何してるの!!早く帰ってきなさいっ!私への報告先決じゃないかしら?」
「お母さんかあいつは」
若干鬱陶しげにトランシーバーに向かってつぶやく。もちろん向こうには聞こえないようにだ。
「うちの姫様はお怒りだ」
「それは主が悪い」
「うっ...」
少し痛いところを突かれたが気にしない。なぜならハヤトのハートはすでに穴ぼこだらけだから。
「おっそい!!!」
戻った途端に予想していた通りトゥーナに怒られた。
「っんだよ...せっかくドラゴン倒してきたのによ」
「お疲れさま。じゃあ片付けよろしく」
「はぁっ!?聞いてねえぞ!!」
相変わらずトゥーナは部下には厳しい、いや限度を越しているような気も。
「ちっきしょあの野郎…」
悪態つきながらもやってしまうあたりがハヤトもお人好しだ。
「主よ」
「なんだよ」
「いつになったら面と向かって喋るのだ?」
さっきもやっぱり部屋の外から話かけていた。
やはり恐怖症から脱することができない。
「いいい、いつだろうな...」
この声の感じからして、遠い未来が訪れるか否かだろう。
「別にわしはよいがな。どうでも」
烏にとってはハヤトがどういう性格してようがどうでもいい。ただ頼まれた補佐をやるだけである。
一応領分は弁えている。
「さっさと帰って寝る」
ハヤトの就寝周期は、一週間起きて一週間寝るといった一ヶ月の半分しか活動してないが、一週間起きてしかも戦闘もするという過酷なスケジュールなので、睡眠時間の確保は何より大事なことだ。
「ではさっさとせんとな」
「マジで眠い...」
正直言うと戦闘始まった瞬間にまぶたが閉じかかっていた。
武芸者は敵を見ただけで眠気が吹き飛ぶそうだが。
ハヤトはどんどんドラゴンの死体を焼いていく。ドラゴン自体の体が大きいので篝火のように燃えさかる。
なんだか送り火のようだ。
「・・・終わった。帰ろ」
疲れた足取りでフラフラと自宅へ帰る。
自宅へ帰るといないはずの人がそこにいた。というか元より人はいないはずなのに人がいる。ハヤトは警戒して足音を潜める。
(だれだ...確実に侵入者だよな。あとは味方か...それとも...)
ハヤトはタイミングを見計らって一気に飛び出し、接近、人影へと刃を向ける。
「何者だ。ここでなにしてる」
近づいたことで顔がよく見えるようになったので注意深く顔をみてみると、丹精に顔の整ったまだ幼い女の子だった。
幼女に刀を向けるのも無粋かと思い、刀を納める。
(まさかの幼女っ!?)
「貴方はここの人ですか?」
少女は首をかしげてたずねてくる。
「ああそうだよ」
ハヤトがこの少女とまともに話せるのに違和感を感じるだろうが。ハヤトのボーダーラインはハヤトがフラれた幼馴染ぐらいが最低ラインで、言ってしまえば同年代、一つ下くらいは範囲内だ。
そこより下だと恐怖対象にはならないらしい。
「すみません。迷ってしまいました」
「迷った?」
迷うぐらいなら森を歩くなと思ったが、やむにやまれぬ事情というやつがあるのだろう。
「迷っていたところ。森の中に奇妙な隠れ家のようなものを発見したのでここで人がくるのを待たせていただきました」
「あっそ。悪い、お前の力にはなれそうにない。俺はここ以外の場所あんまりしらねえから」
「そうですか。とても残念です」
その声の沈んでもいない淡々とした感じからは残念さが微塵も伝わってこない。
そこでハヤトがとりあえずウィリアナの道のりだけ教えると。
「わかりました。ありがとうございました」
それだけ言って出て行ってしまった。
「なんだったんだあいつ」
「さあ?」
烏と顔を見合わせて考えるが思いつかないのでハヤトは寝ることにした。
         
話が進まないな。もうちょっとテンポよくいきたい。多分今回恐ろしくむだな地の文混ぜた気がする。
次からストーリー動かしていこうかな
 




