一方通行
「ゾル爺~!取ってきたぞ~!」
「おう。こっちに持ってきてくれ」
ハヤトは採取を終えると急いでゾルの元へと戻った。
もちろん鉱石を落としてくるなどという初歩的なミスはしていない。
「お前ホントに取ってきたのか?」
「この通り」
背中に積んだ鉱石の山を見せる。
「よく倒したな」
「爺さんなんで俺が倒したって知ってんだ?」
ゾルは鉱石を取って来いといったが採取方法は提示していない。つまり多数の採取方法が存在するのだとハヤトは思っていたのだが。
「あいつから鉱石取ろうと思ったら殺すしか方法ねえぞ」
「なんせ俺らみたいな小さいのが乗るだけで体揺さぶって振り落とそうとするだろ」
ハヤトはなるほどとおもった。確かにあれだけ暴れては採掘もできはしない。
もっというとあのレムクリスタルみたいな鉱石を体中に貼り付けてるようなやつだ
ハヤトのような攻撃方法がなければ討伐は困難だ。
価値が高い鉱石というのも頷ける。
「とにかく依頼達成だ」
「あんがとよ。これでしばらく生活に...ゴホン、最高の剣が作れるぜ」
「今冒頭なにか言わなかったか?明らかに生活って言ってたような気がするんだが」
「き、気のせいだ」
ごまかそうとするがハヤトは半眼で見つめ続ける。
「とにかく素材は十分だ。あとは任せな」
「性格はともかく腕は保証するぜ」
「息子のくせにいっちょ前に言うじゃねえの」
「親子っ!?似てね」
そろって悪かったなと返されてしまった。
こういうところは親子だなと思う。
「それで?どれくらいでできるんだ」
「三日ぐらいだ。そしたらまたこいや」
「頼んだぜ」
と言った瞬簡にタイミングがいいのか悪いのかハヤトの体が煙に取り込まれる。
「今かよ~!!!」
ボフンと消えてしまった。
いつものお呼び出しである。
いつものお呼び出しでトゥーナの部屋に口寄せされてしまった。
ハヤトはずっと決めていたことがある。
次に口寄せにあったら鈴の口寄せ契約を解こうと。
口寄せの煙があるうちにトゥーナに接近、そして手に持っていた鈴に触れることに成功する。
「解」
契約の解除が済むと急いで部屋から退散する。
その間約三秒間のことだった。
「久しぶりだな。何の用だよ」
「えっとねハヤト。その...」
今日のトゥーナは何かがおかしい。態度というか接し方がどこかいつもと違いどうも汐らしい。
「この前のこと...」
「この前?」
「貴方があんなに嫌がるなんてしらなくてそれで...その」
「何の話だ?」
「もう!言わせないでよ馬鹿っ!貴方に抱きついたことよ!!!」
窓の外からでは見えないがおそらくトゥーナの顔は羞恥心で真っ赤だろう。
だがハヤトは。
「抱きついた?いつの話だ。俺はお前に触れた覚えもないが」
ハヤトはあのときの記憶だけをキレイさっぱり忘れているので何のことかわからない。
「覚えてないの?」
「知らない」
「貴方あれだけ怯えて...」
「怯えた?」
「私が触るだけで人が変わったようだったわよ」
トゥーナが事実を一つ一つ教えていくがハヤトには記憶がないので他人事もしくはトゥーナの勘違いにしか聞こえない。
あれはフラれた瞬間のフラッシュバックをしないようにと脳が作り出したハヤトの他人格なのだろう。
他人格の記憶を持っていないハヤトに聞いてもすべては無駄なのだ。
「俺が怯えて...ねえ。お前なにしたのマジで」
「だから謝ってるでしょ」
「一回も謝ってるとこなかったが?別にいいけど用件は?」
「実はね、最近領地増えたでしょ?」
「ああ聞いたよ」
ロッツにすべての事情は聞いている。
「実はね。その増やした領地から戦力提供の要請が激しくて貴方に行って来てほしいの」
「そんだけ?」
「それだけ。でもすごく多いわよ」
「どれぐらいだよ」
「二十...くらい」
「すみません辞退させてください」
二十の間にはすでに『す』の字を言いかけていた。
「二十ってどんだけ戦争してんだよこの世界」
「だから貴方に手っ取り早く片付けてもらおうと思って」
「お前は俺を何だと思ってんだ」
「私の飼い犬...ゴホンゴホン。ウィリアナの最強戦力よ」
今思い切り犬って言わなかったかこの女。
「さあいきなさい。馬車馬のごとく走り回って戦争を解決してきなさい」
ブラック企業はどこまでもブラックだった。
「しょうがねえな。口寄せの術」
ハヤトは一匹の烏を呼び出す。
「なにかあったらこいつを飛ばせ。すぐに駆けつけてやる」
「いいわよ鈴あるし」
「何言ってんだ。鈴使えねえぞ」
「はあっ!?なんでよ」
これにはたまらず驚きの声を上げる。
トゥーナはそういえばさっきハヤトがなにやら叫んでいたことを思い出す。
「さっき契約の解除をしたからな。もう呼び出しは不可能だ」
「ちょっと!それじゃあ私が困るじゃない」
「あれじゃあ俺が困る」
互いに利益を求めて口喧嘩となってしまった。
「とりあえず行くからな。頼んだぞ烏」
アー。と頼りになるのかならないのかわからない返事を聞いてからハヤトは消えた。
「残念でしたね姫様」
「フローラっ!?」
今この部屋にいるのは自分だけだとおもっていたので急に人が現れたことに驚いた。
「実はあの方には外ではなく中に入っていただきたいのでしょう?」
「....いつからバレてた?」
「あの方が来てからの姫様はとても輝いておられます。先代国王が亡くなって戦さ続きで笑うこともなかった姫様が笑顔で話されるのを見ていると、私まで笑顔になります」
「でも私はハヤトに拒絶される...」
「なんどでも弾かれればいいのです」
「フローラ?」
「貴女をあの方が拒むのなら何度でも拒まれ、それでも歩み寄って、そして拒絶できない存在になってしまえばいいのです」
フローラは意外にもハヤトとトゥーナの関係に賛成で応援までするほうだった。
「ありがとフローラ。私はあいつの心に絶対入って見せる」
「その意気です」
フローラはやる気に満ちたトゥーナを見て微笑んでいた。
「ちょっとあの方が羨ましいですね」
そして三日後...
「ゾル爺できてるか~?」
言われた通りに刀を取りに来た。
「おう、ハヤトか。できてるぞ、持ってけ」
できたという刀は机の上に無造作においてあった。
一応大事なものだから保管には気をつけてほしいものだ。
「じゃっ!しばらく帰らねえからロッツによろしく」
「お~」という返事が返ってくるのを確認するとハヤトは走って出て行った。




