鉱石竜グラレム
「悪かったって機嫌直せよ俺も姫様に命令されたんだ」
「あいつ俺で遊んでやがるのか?」
「たぶん違うと思うけどな」
フランツだけはトゥーナの意図を理解していた。一応家庭もちなのでそういう理解力はあるのだろう。
「まあまあ着いたから。ほれ」
ハヤトは鍛冶屋というより工房のような場所につれて来られた。
「親父~!いるか~?」
「なんだよ誰だよ昼寝の邪魔すんな」
ロッツに呼ばれて中からでてきたのは立派な白髭を蓄えた老人だった。
「ロッツか。何のようだ」
「客だ客。客をつれてきてやったんだよ」
「昼寝邪魔するような客はいらねえよ」
この爺さん商売する気ねえよ。
「まあいい。どいつだ?」
「こいつだよ」
「あんたにこいつを直して貰いてえ」
ハヤトは刀をさしだす。
「こいつはラーマの爺が作ってた武器に似てるな。こいつも爺の武器か?」
「いや。俺のだ」
「じゃあ諦めな。直らねえよ」
「なにぃ~!!!?」
まあ当然だろう。なぜなら根元からポッキリと折れたのだから。
「なんとかなんねえか爺さん」
「作り直すしかねえな。新しく」
「やっぱりか~...」
元気出せよとロッツが肩を叩いてくるがそれだけで心は折れるか壊れるかしそうだった。
「しょうがね。いますぐ作ってもらえるか?」
「そりゃ無理だ」
「ここは素材は自分で持ち込みだ。この偏屈爺のリクエストの素材とってこいってこったな」
老人は「誰が偏屈だ」と怒っていたが十分偏屈だ。
「何をとってくればいいんだ?」
「ここから東の山にグラレムっていうドラゴンが居やがんのよ。そいつの背中にある鉱石を四十個ほどとってきてくれ」
「四十!?」
驚きの声をあげたのはハヤトではなくロッツだ。
「親父本気か?」
「ああ本気だ」
グラレムの背中の鉱石。通称レムクリスタルはダイヤモンドの数十倍の硬度もとつといわれており。また非常に獰猛な性格であることから採取は困難でかなり高価な鉱石だ。一個で貴族の一年間の生活を支えることができるといわれる幻の鉱石である。
「親父!無茶だよ!グラレムは昔軍隊でレムクリスタルを取りに行こうとして軍を壊滅させたドラゴンじゃねえか。しかもたった一体で」
えっ!?そんなやつの取りに行くの?
軽い気持ちで取れると思っていたハヤトには衝撃だった。
「これだけは譲れねえ。この剣見ろよ刃がガタガタだ、さては激しい戦闘を繰り返した証だ。だったらあの鉱石は絶対に必要だ」
嫌がらせでもなんでもなく職人魂からそういう武器を作りたいという思いからの依頼だった。
「わかったよ。行って来てやる」
「わしはゾルじゃ皆はゾル爺と呼ぶ」
「ハヤトだ。金はねえけど必要なら馬鹿な姫様に請求しといてくれ
行って来る」
ハヤトは東の山に向けて走って出て行った。
「元気じゃの~。ロッツお前もあんなころあったの~」
「やかましい。そういう時期は終わったんだよ」
「我が息子のくせに情けない。どうじゃ今からでも跡継がんか?」
「やだね」
親子そろって難物だった。
「ちくしょう遠いな~・・・」
グラレムの居るといわれた山まではおよそ十キロもあり本来なら日帰りでいくのだがそんなことをしている暇はハヤトにはない。
_____KYUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO
どこからともなく大地が揺れるような咆哮が鳴り響く。
「なんだ?」
音のするほうをみると山が動いたではないか。
「嘘だろ...?」
そして首が生えて山は巨大な龍となった。
____KYUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO
泰山鳴動という言葉を的確にあらわしている状況だった。
「マジかよ...」
まだ二キロちかくも離れているというのに迫力が存分に伝わってくる。
_____ズシン。ズシン。
龍が歩くたびに大地が揺れて足元を揺らす。
生き物のこの質量も巨大を象徴するファクターのひとつだ。
「やっと足元まで来たけどこいつ全部鉱石でできてんのか?」
よく見なくても体が真っ赤に光って見える。これは赤い鉱石がマグマの熱で反射しているからだ。
そして目当ての鉱石は背中にびっしりとそびえている。
まるで剣竜とよばれるステゴサウルスの背びれのようだ。
「とりあえずちゃっちゃと持って帰るか」
あくまでハヤトの目的は鉱石の採取であって決して討伐などではない。
ハヤトはさっそく背中に飛び乗って鉱石の採掘を開始するが。
_____KYUOOOOOOOOOOOOOOO
感づかれたのか体を揺さぶって振り落とそうとする。
巨大な生物が体を動かすとそれだけで自然災害に相当するのですでにあたりの森林はめちゃくちゃだ。
「うおおおおお!!!お~と~さ~れ~る~!!!」
案外余裕そうだ。
「このこいつっ止まれ。火遁・花火」
火力を詰め込んだ弾がグラレムの体のなかに染み込んでいってなかで爆発を起こす。
_______KYUAAAAAAAAAAAAAAAA
痛みにもがいて断末魔の悲鳴を上げる。
が、その声はだんだん小さくなり首を地に落として倒れ死んだ。
「悪いな。石もらっていくぜ」
殺すつもりはなかったグラレムに謝罪しつつ鉱石のはぎ採りを始めた。




