地を砕く拳と刈り取る鎌
ハヤト分身とリヴァルは地形が変わるようなというより本当に地形を変える戦いを繰り広げていた。
「拳刀・殴ィィィィィィ!!!!」
ハヤトに向かって拳を叩きつけてそれに反応したハヤトがその場を離れるとハヤトがいたはずの地点を中心として大地が砕け散り、岩山や風穴を開けることになる。
「てめぇ!!地面壊すんじゃねえよ!!あとで修復すんの誰だと思ってんだっ!!!」
これだけ派手に壊すとあとからあのブラック社長から『直しといて』の一言で残業決定である。
「なんだよ。文句あるなら避けるなよ」
「ざけんなっ!当たったら死ぬだろうが、そいつも刀なら斬撃をパンチ力に乗せてると見た。つまり当たったら俺は八つ裂き。違うか!?」
リヴァルは図星だからか頭をポリポリと掻いて。
「そうだ。こいつは拳刀・殴、俺の拳に刀の切れ味をプラスして攻撃力を上げる超近接攻撃用武器だ」
「そんな武器知ってるぜ」
まあ知ってるのはメリケンサックだけどな。しかも使ったことねえし。
ネイルナックルとまあ似たようなもんだがあっちはあっちで愛着持ってそうだから言わない事にした。
「知ってるならバレるのも無理はねえ」
すんません。こっちはバレなくてよかったと心底思ってます。
「まあバレたからって」
リヴァルは真下の地面を叩いてさらに地面を壊す。
「勝てるかどうかは別の話だ」
「てめえこれ以上壊すなっていってんだろうがっ!!」
ハヤトは逆ギレ状態にだった。
「これ以上壊したくなかったら止めてみろよ全力で」
「上等だこのやろう。これ以上俺の睡眠時間削られてたまるか」
「いくぜオラァ!!!」
大地を砕く威力を持った拳がハヤトの顔面に向かって飛んでくる。
ハヤトは拳を刀で受ける。
拳と刀の力が拮抗しているのか互いにカタカタと震える。
やべえ、折れそうだ。
影虎が折られれば望みは消える。そうなれば本体が出張ることになり戦力は一つ減る。
この分身はこのとき本体がひとり倒したことをまだ知らない。
よって本体を呼ぶという選択肢はなかった。
「水遁・打ち水!!」
目に水をかけることで目を潰して自ら隙を作った。
「もらった!!」
「くそったれがっ!!!」
苦し紛れに地面を殴ってその反動で空高く跳び上がる。
「そんなのありかっ!?」
「ありだ。拳骨・殴殺!!!!」
無数の拳の連打を打ち出しながら高速落下を開始する。
「アアアアアアッ!!!!」
ハヤトも飛び上がって刀を構える。
そして刀と拳が再びぶつかる。
「壊刀・縦一閃」
ついにハヤトの刀がリヴァルの拳を切り裂いた。
「ぐああああああっ!!!!」
痛みに体勢を崩したリヴァルがそのまま落下する。
「うぐっ...ああああああ!!!」
痛みに苦悶の声を上げるリヴァル。
そんなリヴァルの首元に刃を突き立てる。
「まだやるか」
「まいったよ。好きにしろ」
「じゃあ好きにさせてもらう」
ハヤトはリヴァルの拳を手当てし始めた。
「お前何を...」
「黙ってろ」
殺し合いをした相手に手当てするなどリヴァルにとっては狂気の沙汰でしかないだろうがハヤトにとっては普通なのだ。
昔から喧嘩して勝ってもこうやって手当てをするのが癖になっていた。
最近は喧嘩自体しなかったし、こっちに来てからは瞬殺だったので手当ての仕様がなかったのだ。
「ほら終わったぞ。どこへなりとも消えろ」
「お前なんで...」
「あんたは本質的には悪い人じゃない...と思ったからだ。そんだけだ俺の目的はここを守ることであんたを殺すことじゃない」
「いい目をしている、信念を持った目だ。また会おう」
「うっせ、早くいけ。あんた脱走囚だろ」
「ではな」
リヴァルは森のほうに消えていった。
「あれで...よかったんだよな?」
人としてよくても忍びとしてはどうかと考えるが今は気にしてもしょうがない。
それより。
「ずっと見てたのかあんた」
「おうおう。リヴァルは裏切ったのか別に構いやしねえけどな。あいつは元々殺しにゃ向いてねえ」
どこからともなくコンルーが現れる。
「いやいやいかんでしょ裏切っちゃ」
続いてウルディオまでも現れる。
「最初から二人で組んでたのか」
「俺たちは殺し屋業界じゃ有名なのよ?」
「知らないかい?」
知るか。俺はこっちの人間でも殺し屋業界に入ったわけでもねえんだよ、紛いのことはしてるけど。
「まあいいや。兄ちゃん遊んでくれよ」
「しりとりならいいぜ。疲れねえし」
「しりとりか、しりとりいいねえ。なあウルディオ」
「ああ。じゃあしりとりの『り』な。り、り、『りんごみたいに斬り落とす』ってどうだ!!!」
いきなり体長ほどもある大鎌をぶん投げてくる。
「しりとりどこ行ったてめえら!!!!!」
ツッコミながらちゃんと刀で受け切る。
「やるねえ。でもいいのかい?刀」
刀を見ると。
「折れてるよ」
先ほどのリヴァルとの戦闘で無理が祟って折れたようだ。
「あばよ」
ハヤト(分身)は一刀のもとに斬り消された。
そしてその情報は本体にも届いた。
「まずいな...急ぐか」




