屠り
「ここでよかろう」
「お前妙に和風調だよな~まあいいけど」
これはハヤト分身VSピイェの戦いである。
「よくわからんことをいうやつだ。折るぞ」
「折られんのはどっちかな?」
言ったとたんにピイェはノーモーションでナイフを放ってくる。
ハヤトは刀で弾くがそのときにはピイェが眼前に迫っていた。
「折刀・屠」
腰からの抜刀、ハヤトに向かって振り抜く。
「ぬおっ!?」
えびぞり状態になりながらどうにか避ける。
しかしさらにさらに追撃は続く。
「こいつめんどくせえ。てっとり早く片付けたい
明鏡止水」
いきなり武器破壊を目的とした技を繰り出す。
探り当てたポイントに当たると思った瞬間に読まれたのかピイェの剣筋が変わって鈍い金属音が鳴り響く。
「そうか。ここを狙ってきてるのか」
まずいバレた。
明鏡止水はバレては意味がない。相手がそのポイントを知らずにそこで受け止めたときに一撃破壊の一撃を叩きこむことを目的としているのでこれでは効果は半減だ。
「武器破壊の武器が破壊されちゃ適わんな」
「ちっ!...面倒になった」
「どうした?叩き折られずともお前を叩けば終わりだぞ」
ピイェはさらに激しく斬り込んでくる。
ハヤトは珍しく避けることに必死になる。
こいつ以外に強い。
「これで終わりだ」
最高速の突きを繰り出す、しかしそれが好機。
ハヤトは懐に潜り込んで腰から抜き放つように振り抜いた。
ピイェは無理やり刀を持ち替えて逆持ちで受け止める。
「今のは危なかったぞ。俺でなければ死んでいた」
「まだだよ」
ハヤトは受け止められている刀を軸にして後ろに飛んで回り込み回転した遠心力を使って振り下ろす。
が、それもピイェが後手で刀を背に受け止める。
「お前の攻撃はすべて無駄だ」
「いいや無駄じゃない。これで決まった」
ハヤトは懐から宝禄火矢を取り出す。
「ボカン...」
宝禄火矢が爆発。ハヤトは半ば飛びのきながら投げたために爆発からは逃れている。
「やったか?」
黒煙から人影が現れる。
「俺には爆薬は効かない」
なんとピイェの体は無傷だった。
「あの距離だぞ!?効いてないはずが」
よく見るとピイェの体はところどころ金属でできていた。普段は長いローブで隠しているため見えないがピイェは手足のほとんどが金属でできているのだ。
「俺はあの戦争で左腕、両足、体の器官のほとんどを失った、レクスが起こした戦争でだ。
そのときこの義手・義足をつけられた」
「逆恨みもいいとこだな。てめえが弱かったから失った、違うか?」
「やつは俺たちから家族を奪った!体を奪った!未来を奪った!」
「だからそれが違うっつんだよ。未来は自分で掴むもんだ他人にはどうやっても左右されない、左右されたらそれはてめえが選んだ選択の結果だ。絶対他人のせいじゃねえ。
体は未来にへばりついてくる。これも違う
家族だっていつかはさよならだ。いつまでもへばりついてたって仕方ない。遅かったか早かったかの違いだ」
「そんなものは詭弁だ!やつに奪われたものの悲しみがわかるか!憎しみがわかるか!怒りがわかるかァァァァァ!!!!」
ピイェは怒りに満ちて激昂した。
「俺たちはレクスに復讐するっ!!!」
「そのレクスならもういないぜ」
レクスは十年前の事件以降に亡くなったと聞いている。
「そんなことは関係ない。ならばその子孫、家族に標的を変えるだけだ」
「させねえよ」
ハヤトは即座に言い返す。
「あいつはやらせねえ。あいつは俺が支えてやるって約束したんだ」
「ならばともに冥土までいくといい!!!」
「約束だ。絶対守る!!」
二人は同じタイミングで走り出す。
「折断!!!」
「明鏡止水!!!」
このとき頭に血が上っていたのかピイェは失念していた。
そうでなければ武器破壊ポイントで受け止めるなどということはしなかっただろう。
そして明鏡止水は屠を屠る結果となった。
「馬鹿なっ!?」
「俺の勝ちだ」
肩から斜めに振り下ろしてピイェから多量の鮮血が吹き出し、血溜まりを作って倒れる。
「恨みとかって持ってるやつは大抵弱いんだよ。それに頼ることを覚えるからな」
残りは四人だ。




