第十一話
「デスマジック…彼に発射だ」
デスヴァーがそう言った途端、デスヴァーの体全身から太いビームが戒省の元に来る。
「当たるもんかよ!」
それをマスターブレードで真っ二つに切る。
「非常に感情的な戦い方だねぇ、よくそんなんで今まで死ななかったもんだ」
「こっちの台詞だ、よくそんな遠距離魔法でマスターブレードに勝つことが出来たな」
「…何だって?」
「よくそんな近距離も出来ないような弱虫みたいな戦い方で、これまで生きてこれたなって言ってるんだ」
「……おい、戒省。
勘違いはシないほうがいいぜ?
俺は別に、遠距離だったとしても近距離だったとしても戦えるさ、本当はな。
だけど俺はあえて遠距離を選んでいる、その理由がお前にはわからないだろう?
ならお前に俺を弱虫という権利はない。
人の事を弱虫と扱って簡単に油断するお前こそまさに『真の弱虫』だ」
「何故そこまでこの件に関して引っかかる。
まさか本当に近距離が出来ないんじゃないのか?」
「……俺が、出来ねぇわけねえだろナメてんのか?」
デスヴァーが一気に戒省に近づく。
「悪いけどお前見たいに融通の効かない武器じゃないんでね!
こっちはどんな戦い方も出来るんだよ…言うなればオールラウンドかな?
だから君みたいに遠距離を恐れたりしないんだ…
悪いけどこの時点で俺の方が勝っている、デスマジック…彼に刃を突き出せ!」
まるで彼の叫び声に反応したかのように勢い良く、ビームと同じような構成で作られた刃が戒省に突き刺さろうとしてくる。
「これぐらいの攻撃、避けなければ――」
「右だ、デスマジック」
命令した途端に、デスマジックの刃が戒省が避けた方向――右へ変更される。
「なっ!?…クソが」
そして、突き刺さった。
幸い、右の肩だったから良かったものであった。
「だから言ったじゃん。
俺の武器はお前の武器みたいに融通が効かないわけじゃないって」
デスヴァーはこの状況でも、狂ったように笑みを絶やさない。
「な、悔しいだろ?
人はそうやって死んでいくんだ…
お前の勉強にもなっただろう」
「勝った気になってんじゃねえ!」
戒省が肩を痛めた体制のままマスターブレードを振り上げる。
「おっと」
それをデスヴァーが避ける。
だが戒省にとってそれは当然予測済みで、遠心力を利用して体を一気に回転させ、後ろを向きデスヴァーに隙を与えないようにしながらまた振り上げる。
「舐めるなよクズが!」
デスヴァーがそれにデスマジックで対抗する。が、物理的に勝てるわけではないので簡単に弾き返されてしまう。
そして、デスヴァーの腹に戒省のマスターブレードが突き刺さる。
「どうだ、これで…」
「いやぁ、本当に痛そうだねぇ」
何故か、何故なのかはわからないが、戒省の背後にデスヴァーが立っている。
背後にである。
「な…じゃあ突き刺したのは」
「マジックだよマジック。デスマジックは攻撃系だけじゃなくてああいう本当のマジックみたいな事も出来るんだ」
「そ、そんなバカな――」
「終わりだ戒省、それじゃあな」
デスヴァーが魔法を発動させ、そして――
戒省の背中から一気に刃が突き刺さる。
「グ……クソが…反応できて…いれば…よかった…のに」
そのまま戒省は倒れ、背中に突き刺さっていた刃はまるで幻想だったかのように消える。
「戒省、戒省!」
「次は君だ、想來…君も彼と同じところに、行きたいだろう?」
彼はその発言の時ですら、笑顔だった。




