第一話
私は呪われた…
…僕はいつからここにいるのだろう。
朝起きたばかりでどうしようもなく動かない体が気に入らなく、ついふざけた事を考えてしまう。
僕は『生み出されてから」まだ1週間経ったばかりだ。
隣に寝ている、僕と同じぐらいの年の少女を救うため。
先ほど言ったように僕は生み出されたのだ。彼女の使った魔法によって、作り出された。外見は彼女と同じぐらいの年という設定にしたらしい。
僕が他の人間と圧倒的に違うところといえば、『戦闘力』というところだろうか。僕は呪われた彼女を救うために生み出されたのだ、弱くては意味がない。
「ん…起きてたの」
彼女が目を覚ます。まだ朝の5時ぐらいなので起きるには少し早そうだった。
「今起きたところです」
僕はそれに敬語で返す。彼女は僕の生みの親…飼い主のようなものだ。僕はそれに従わなければならない。
残念なことに僕には前世の記憶が残ってしまっている。
僕の前世は魔法も使えないような普通の人間だったらしい。
そのおかげで言葉を話すことが出来たし、常識もわかるようになったのだが、ここは全く別次元の世界だった。
僕のいた世界と全く違うところは、この世界にいる誰もが自分独自の魔法を使えることができ、またそれで生活や戦うことが許されているというところだ。
彼女はその魔法によって、呪われてしまった。
呪いの内容は、『誰かを殺さなければ気がすまない』という呪いだった。
残酷で酷く気持ちの悪い呪いだった。
その呪いは彼女の兄に突然かけられてしまったらしい。
彼女の兄は優しく落ち着いた性格だったのだがある日突然暴れだし、彼女に呪いをかけた後逃走。行方がわからなくなってしまっているらしい。
彼女は兄のことを恨んでいて、その復讐のために僕は造りだされたのだ。
全くアホな話だと僕は彼女の戦闘協力者だが思ってしまう。復讐なんてしても何も変わらない。事実は事実だ。
だから復讐など本当は事実を受け入れられてない証拠で、それは時間が経つにつれて同時に消えていくものだと勝手に思っていた。
だが実際は違ったらしい。彼女は兄のことを忘れられなかった。
優しかった彼が意図的に自分に呪いをかけたということを受け入れるなど、簡単なことではないしそれは身近な人であれば尚更だ。だから復讐以外に手段がないのだ。自分を落ち着けるための手段でもあるのかもしれないが…それは彼女自身が一番わかっていることだと思うから、僕には全く理解はできない。
「兄の復讐をして、どうするおつもりなのですか?」
つい勝手に口が動いてしまった。
僕は前世からこういう性格だったらしい。
頭であまり考えずに行動しているとても悪い癖である。しかし何故か直すことが出来ない。恐らく一生付いていく癖だと思う。
「当然…呪いを解いてもらうわ、それと私になんでこんなことをしたのか…私は兄さんの事をすごく慕っていたの。日々の生活の中でも兄さんはとてもかっこよかったわ。兄さんは魔法の天才だったの」
この世界にとって魔法とは本当に身近なもので、日常生活には欠かせないものとなっている。
仕事も魔法、生活も魔法。
人々はそれを不思議とは思わない。
この世界は元々そういう世界だからだ。
そして彼女の兄はその魔法の天才だったらしい。
「魔法の天才…具体的に、何をされていたのですか」
「何かを作ったり、何かを生み出す力よ。例えば魔法を使って人間を生み出すことができた。物理的なものも現すことが出来たし、だから呪いを作ることも出来たと思うわ…。私はどう頑張っても、あなたを生み出すことぐらいしか出来なかった。それぐらい呪いを作ることは大変だし、軽い気持ちでは出来ないのよ。呪いは自分の『強い気持ち』と引き換えに作ることができるって本に書いてあったわ。つまり、強い気持ちがあればあるほど強い呪いを生み出すことが出来る。だけど元々何かを生み出すこと自体とても難しい事だし、呪いを生み出すことは犯罪になっていて、それを誰かにかけるなんてバレたら確実に死刑だわ。」
「では何故、彼は死刑になっていない?警察などは動かなかったということですか?」
「バレたに決まってるじゃない。だけど兄さんを見つけることは未だに出来ていない。恐らく変装をして暮らしているのか、元々この世界にもういないのかのどちらかよ。」
「この世界にいない…となれば、復讐をしに行くことは無駄になるのでは」
「いいえ、兄さんはまだ死んでいないわ。私の呪いが解けてないもの…」
どうやら呪いはかけた人が死ぬと自動的に解けるシステムになっているらしい。それは人が死ぬことによってその人に宿った魔法も消えてなくなってしまうから。彼女は呪いを解くために兄を探しにいく…いや、兄を殺しにいくのだ。
「わかりました…僕はそれの協力をすればいいわけですね。でもあなたの兄は強すぎる。私がここから見てわかるほどにあなたにかかっている呪いは酷く大きい。それほど強い相手なのに僕は倒すことが出来るのでしょうか」
「わからないわ…負けたらあなたも死んでしまうかもしれない。もし死ぬことになったら私を恨んでもいいわよ。私はそれぐらいの覚悟であなたを生み出したのだから」
彼女の心はとても強い。
恐らく長年呪いにかけられているせいかもしれないが、それは彼女の長所だと思う。
「恨みませんよ…あなたの役に立つこと、それが私の存在価値なのですから」
そういって僕――『黒田』は、決意を告げる。
自分を生み出してくれた、彼女――『凛』に向かって。