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扉の先は錬金術の研究室

 僕は地下水路の奥にある空間の扉を開けようとするが案の定鍵が掛かっている。


「鍵が掛かっているのか?」


 ガラドが僕に質問すると手を上げて、お手上げであると身振り手振りで意志表示する。


「すいません。錠開けのスキルは無いです……」


 申し訳なく答えると、ニルスが任せろとドヤ顔で自信満々に言う。


「アベル……おいらが開けるよ、調合士をする前は冒険者としてシーフをしてたんだ」

「へえー……じゃあ、頼むよ」


 僕がそう言うと彼は扉の前に立ち、鍵穴に針金のような物を2本差し込んでいく。

 暫く鍵穴を探るようにして針金を回していくとガチャリとした音がして解錠に成功した。


「よしっ! 開いたよ!」


 ニルスが嬉しそうに言うとガラドは感心するように言う。


「ほう……やるじゃないか」

「へへっ……まあね……」


 ハーフリングは照れ臭そうにして答える。だが、扉に手を掛け開こうとするがピクリとも動かなかった。

 ガラドと僕も一緒に扉を開こうと力を入れるが、それでもビクともしない。


「どうやら、鍵以外でも施錠しておるようじゃな――皆離れるんじゃ!」


 そう言って僕とニルスをどかせるや否や戦槌を振り上げて扉を破壊しようとする。


「うぉりゃあー!」


 彼は雄叫びを上げながら扉に向かって戦槌を振り下ろすと、激しい轟音が鳴り響く。

 それでも、扉は衝撃で変形するも開くことはなかった。


「くっ……丈夫じゃのぅ」


 ガラドは戦槌を下ろして溜息をつくと、ニルスがその様子を見て言う。


「無理だよ! ここは諦めた方が良さそうだ……」


 彼は冷静な判断を下すがガラドは納得いかないようで扉を睨み付けている。


「扉に何か魔法が掛けられていないか調べるんで……」


 僕は扉に手をかざし魔力の流れを感知しようとする。

 扉全体に網の目状に魔力が重なっており、更に扉全体を覆うように魔力の層を感じ取る事ができた。


「何か……魔法で押さえつけてますね」


 そう答えると、ガラドは少し考え込むようにして言う。


「ふむ……どうやら強力な施錠の魔法が掛けられておるようじゃのう……」


 ニルスは驚いた顔をして僕に質問する。


「アベルなら解除できる?」

「うん……僕なら可能だよ!」


 そう言うと僕は扉に手をかざして、魔力解除を試みる。


『人間にしては、まあまあの魔力で扉を閉ざしているね』

「これぐらいなら僕の魔力解除で解除できるさ」

『ふ~ん、じゃあ 頑張って!』


 アジェは他人事のようにして応援する。そして、僕は扉に掛かっている魔法を解除しようとする。

 精神を集中させて扉に掛けられた魔力の網の層を1つ1つ、指先で解いていくように解除していく。

 そして、最後の層を解除すると扉はギィーと音を立てて開いたのであった。


「ふぅー……これで開くよ」

『扉に施されていた魔力、そこそこだったね』


 僕がそう言うとガラドとニルスも安堵し、アジェはというと満更でもない感じで喉を鳴らしていた。

 僕達は早速中に入ってみる事にしたのである。


 扉の中に入ると悪臭はしなくなり代わりに薬品の匂いが立ち込めていた。

 部屋の奥から光が漏れており、奥へ進むにつれて光が強くなっていく。


「どうやら、地下室のようじゃ……注意するんじゃぞ」


 ガラドが僕達に注意を促すように言うと僕はコクリと頷く。ニルスも緊張した面持ちで辺りを警戒していた。

 そして、更に奥へと進むと広い空間に出る。


 そこには巨大な錬金釜が置かれており、中には光沢のある銀白色の液体が入っている。

 その液体は脈動し銀色の泡が浮かんでいる。釜の周りには様々な薬品や道具が散乱していた。


「これが……錬金術師の研究室か!」


 僕は目を輝かせながら言う。するとアジェが興味深そうに言った。


『へぇー……ここで薬を作っていたんだ』


 彼女に言われて改めて部屋全体を見回す。ガラドは部屋の奥を見て険しい表情をしている。


「アベル、ニルスよ……あそこに誰か居るぞ」


 ガラドの視線の先には灰色のローブを着た男が立っていた。彼はフードを深く被っていて顔はよく見えない。

 男は現れると、ゆっくりとした声で僕達に話し掛けてきた。


「ほう……まさが、こごを……突き止めるとはな……」


 彼は呂律が上手く回らない感じで喋る。その態度を見て僕は彼が何か病気に冒されているのではないのかと疑う。


「何者ですか? 貴方は」

「わ……わだじは……ルバロ・セレゴだ」


 男の名前に嘘偽りが無い事は解るが、どうして喋りづらいのだろうか?

 彼の手を注視すると震えていたのである。もちろん、それは恐怖や怯えによるものではない。


「ルバロさん……貴方は病気に罹っているのではありませんか? だから、上手く喋れないのではないですか?」


 僕はそう質問すると彼は首を横に振る。そして、再び口を開いた。


「わだじは……病気では……ない」

「……」


 どうやら、彼は病気ではなく何か別の理由があって上手く喋ることができないようだ……。


「ニルス……この症状に見覚えは?」


 僕がそう質問すると彼はじっくりと錬金術師を見据える。暫くしてハッとし気付く。


「これは……もしかして……水銀に冒されているんじゃ?」

「水銀?」


 ニルスが言う水銀とは何かと問う。彼は錬金術師達が扱っている薬品の原料だと説明する。


『アベル……あの男、もう長くないようね……』

「えっ? 本当かい?」


 アジェに言われてルバロを見詰め彼の魔力の流れを感知する。

 すると、僕の目を通して彼の体から発せられる魔力が銀色をしていた。


 但し、その魔力は目詰まりを起こし彼の全身を侵食している様な状態である。

 しかも心臓が銀色の塊に置き換わっている様に認識でき、それが血管を通して全身に送り出されているようだ。


「ルバロさん……何故、そんな体になってまで研究を続けているんです? どうやら、貴方の命は長くないようですけど」


 僕は彼にそう質問すると、ルバロはニタリと笑う。そして、震える両手で顔を覆っているフードを外す。

 彼は老いており顔は土気色で指先は黒ずんでいる。誰が見ても、この錬金術師の寿命は長くないだろうと解る。


「ぞれは……わがっている! もう……わだぢの命は……長くない」


 ルバロも自分の命が尽き欠けているのを理解しているようだ。

 彼が何を思い、何の為に研究をしているのか気になった。


「何故です? 貴方は命と引き換えに何を作ろうとしているのですか?」


 僕が質問すると彼は重々しく答える。


「ぐふっ……水銀は……賢者の石には……欠かせない……不老不死になるには……不滅の肉体が必要だ」


 咳込みながら言うと彼は錬金釜の方へと移動する。どうやら、その中には彼が言う不老不死に欠かせない物があるようだ。


「落ちる! 危ないぞ!」


 ガラドがそう叫ぶとルバロに駆け寄ろうとするが、僕はそれを制止した。そして、彼に言うのであった。


「貴方は……死ぬつもりですか? それとも……何かを完成させたのですか?」


 僕の言葉にルバロはピタリと足を止める。暫くしてゆっくりと振り返りながら答えた。


「わだじは……水銀という……肉体を得る……故に……成し遂げるだろう」


 そして、彼はニルスを一瞥しニヤリとして言う。


「ニルス……お前の……師匠のレシピ……触媒として……完璧だったぞ」


 彼の眼はニルスを嘲笑うように、不敵な笑みを浮かべていたのであった。

 ルバロと言う名の男が言った言葉にニルスは衝撃を受けていた。


「おいらの……師匠のレシピが、この為に必要だったのか……」


 僕は驚きを隠せないでいると、錬金術師はゆっくりと錬金釜の方へと歩いて行く。


「釜の中に落ちる気ですか?」


 錬金釜の縁まで近付くと彼は身を投げようと片足を上げていた。僕は慌てて彼に向かって叫ぶ。


「止めるんだ!」


 ルバロは錬金釜の中へと落ちようとしている。だが、彼は顔をこちらに振り向け目を見開き口元をニヤリとさせた。


「自殺するのでは……ない……完璧な……存在となるのだ!」


 そして、彼は錬金釜の中にある水銀の海へと落ちてしまったのであった……。

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