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地下水路に潜む錬金術師を探し出す

 その夜、ニルスは僕達に夕食をもてなしてくれていた。


「アベルの姉さん、ガラドの旦那……遠慮なく食べてよ!」


 テーブルの上には料理が並べられており、どれも薬草やハーブの香りを放っている。

 中には苦そうな匂いや臭そうな匂いが食卓を漂い食欲を減退させる。


「あの……ニルス……この料理は……?」


 僕は恐る恐る質問すると彼は笑顔で答える。


「ああ、それは肉や野菜への調味料として色々な薬草を使った物だよ!」

(うっ……やっぱりか)


 肉や野菜から漂う得体の知れない不快な匂いに本能的に危機感を覚えるのである。

 ガラドが嫌そうな顔をし舌を出す。どうやら臭みが強いようだ。そんな彼等の様子にニルスは首を傾げる。


「あれ? 食べないの?」

「うむ……儂はあまり、薬草を使った料理は好まんのぉ……」


 ガラドが正直に言うとニルスはショックを受ける。そして、少し拗ねたような態度で言った。


「おいらが作った料理は健康に気を遣っているんだ! 不味いなら食べなくていいよ!」


 そう言うと彼は自分が作った料理をバクバク食べ始める。その様子を見て僕は呆気にとられてしまったのである。


(食べてみるか?)


 彼の料理に配慮して覚悟を決めると、一口食べた。すると、口の中に苦味と辛さが広がっていく……。


「うむっ?……思ったより美味しい!」

「えっ!? 本当か?」


 僕の感想を聞いてびっくりするガルド。どうやら、彼の料理は薬草やハーブの苦味と辛みが効いていて癖になる味であった。

 その様子を見て、ガラドも一口食べると同様に言う。


「ふむ……これはなかなか、いけるぞ」


 彼も気に入ったようでバクバク食べ始める。ニルスも嬉しそうに僕達に料理の感想を求める。


「ねぇ! アベル、ガラド……気に入ったかな?」


 僕は笑顔で答えると彼は満足そうな様子で食べる様子を見詰めるのであった。

 そして、食事が終わり後片付けを手伝った後、僕とガラドは工房でニルスは寝室で休む事にした。


 ニルスは僕達に、おやすみの挨拶をし寝室へと向かい、僕とガラドは工房の椅子に座った。

 2人で明日の行動について話し込む。


「ガラドさん、ニルスが言う地下水路を調べれば錬金術師が隠れていると思いませんか?」

「うむ……確かにそうだな。しかし、何処の地下水路か目星はついておるのか?」


 ガラドは、この街にある複数の地下水路を手当たり次第に探し回るには時間が足りないと懸念していた。


「そうですね……でも、大丈夫です。先ほども言ったように僕には魔力が匂いとして嗅げるので、それを頼りに探せば大丈夫だと思います」

「そうか……ならば、明日に地下水路を探すかのぉ……」


 ガラドはそう言うと椅子から立ち上がり工房の灯りを消して毛布を被って椅子に座る。

 僕も同様に椅子に座り毛布を被って休む事にした。暫くして、頭の中でアジェが囁いてくる。


『ねぇ……アベル』

「んっ? 何だい?」

『明日になったら……悪い奴等の魔力を思う存分食べて良い?』


 アジェは、どうやら魔力を吸い取りたくて仕方がないらしい。


「ああ……別に構わないけど」

『やったー! お腹一杯になれればいいなー!』


 僕の許可が下りると彼女は嬉しそうにする。しかし、その会話に割り込む者がいた。


「おい! アベルよ!」

「……はい? 何ですか?」


 ガラドである。彼は毛布を被っていたが顔だけ出して僕を見ている。

 彼には僕が独り言を呟いて不気味に感じられていたのであった。


「誰かと話していたようだが、それも独り言なのか?」


 どうやら、アジェと話していた事が独り言として聞こえていたようだ。僕は慌てて否定する。


「あっ! すいません……頭の中で、もう1人の自分と自問自答しているんです」

「ふむ……そうか、変わっておるの……」


 ガラドは訝しげな表情だったが、これ以上追及する気はないようで再び眠りにつくのであった。


(はぁ……危なかった)


 僕も彼と同じように毛布を頭から被り眠る事にしたのである……。




 翌朝になって僕達は起床すると、朝食を済ませてニルスと一緒に地下水路を探しに行く事にした。


「アベルのお姉さん、ガラドの旦那……おいらが作ったポーションを持っていけば役に立つよ」

「ありがとう……でも、戦いになったら危ないから離れてくれるかい」


 僕は彼の好意を素直に受け取りつつも、やはり心配で不安な気持ちになる。すると、彼は笑顔で言う。


「大丈夫! アベルの姉さ……いや、アベルならきっと奴等の居所を暴いてくれるって信じてるよ!」

「そうか……じゃあ、行くよ」


 僕達は彼の工房を出て地下水路を探す為に町中へと繰り出したのである。

 町中を歩いていると、僕はアジェに魔力を匂いとして感知する方法を聞く。


「あのさ……どうやれば鼻で魔力を嗅ぎ分けれるの?」

『ん~……まあ、目を瞑って鼻に集中してみて……そしたら、魔力が匂いとして感じられると思うよ』


 アジェはニルスの質問に適当に答えた。僕は彼女の回答に疑問を感じるも今は敢えて追及する事はなかった。


 彼女の言う通り目を瞑り鼻をヒクヒクさせてみる。すると、微かだが昨日ポーションから感じられた魔力が感じられる。


「ニルス……あっちの方だ!」


 僕は指差して方向を示すと彼は驚いた顔をする。そして、皆に着いてくるように促したのであった。

 頭の中で魔力の匂いが線のイメージとなって導かれるように街中を、あちこち歩いて行く。

 暫く歩くと地下水路へと辿り着く。入り口は薄暗くジメジメしており嫌な臭いが漂っている。


『う~ん……下水の匂いは嫌ね……ドブ臭い』


 嫌そうな顔をして言うアジェの姿を想像するが、僕は気にせず地下水路へと降りていく。


「なぁ……下水から魔力の匂いを感じるのか?」

「ああ、微かだけど感じます」


 僕はそう答えるとガラドも鼻をヒクつかせながら匂いを嗅いでいる。そうする内に、ニルスは何かを確信したように言う。


「確かに……微かにだけど奴から匂っていた下水の匂いがする……」

「そうか! じゃあ、間違いないな!」


 ガラドもニルスの言葉で確信する。すると、ニルスは深刻な顔をして僕等に礼を言う。


「アベル、ガラド……ありがとう! 師匠のレシピを取り戻す為に利用しちゃった……」

「気にしないで。僕だって、自分の意志で君の師匠のレシピを取り返したかったから」


 僕がそう言うとニルスは涙ぐみながら感謝の言葉を口にする。

 そして、僕達は地下水路の中へと入っていくのであった……。


 地下水路の中はジメジメしており薄暗く、壁から水が滴り落ちており、とても不気味で嫌な場所だった。

 おまけに匂いも酷く悪臭で鼻が曲がりそうだ。


「くっ……酷い匂いじゃな……」


 ガラドは顔を顰めて言った。どうやら、ドワーフも人間と変わらず悪臭が苦手なようだ。


『うわぁ~臭い! 早く探しましょう!』


 アジェはそう言うと辺り一面に魔力の匂いを嗅ぎ取るように鼻をヒクヒクさせる。その様子を僕は見守るのである。

 そして、ニルスにも確認を取った後地下水路を進み始めるのであった……。


(それにしても汚い場所だな……)


 そんな事を考えつつも進んで行く。ガラドは地下水路では短槍は使いにくいと考え戦槌を装備していた。


 その為、彼の大きな盾は今回持ってきていない。暫く進むと、通路が分かれており僕達は分岐路で立ち止まる。


「さて……どっちに行けば?」


 僕がアジェに問うと我先にと言ってきた。


『右ね! 魔力の匂いがする!』

「よしっ! 右に行こう」


 彼女の言葉を信じて進む事にしたのである。そして、地下水路を更に進んで行くと広い空間へと出る。


 そこは天井も高く広々としており、水は流れておらずジメジメした嫌な場所で更に悪臭が酷くなっていた。


「くっ……酷い臭いじゃ!」

「うへぇー……こんな所で生活できんの?」


 ガラドは鼻をヒクつかせながら顔をしかめて言う。ニルスも鼻を押さえて涙目になり僕も息をするのも躊躇う程だ。

 空間の奥には厳重な扉があり鍵が掛かっていれば開くことは無理なようだ。


『アベル、錬金術師の魔力……あの扉の奥から匂っているよ』


 そんな僕達の事はお構いなしにアジェは地下水路の奥に見える扉を指差して言う。


「よしっ! 中に入ろう」


 僕はそう言うとガラドとニルスも頷き合い扉に向かって歩き出したのである。

 そして、扉の前まで来ると慎重に開ける事にしたのである……。

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