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アジェによってポーションに含まれていた魔力を中和させる

「あ……あれ? 俺は一体……」

「お……おい、俺達は何でポーションをあんなに飲みたがっていたんだ?」

「わ……わけがわからん」


 客の男達は急にポーションへの依存性や常習性が無くなった事に戸惑っている。

 そして、自分達が何故、露店でポーションを買わねばならなかったのか自問自答している。


 自警団のメンバー達は僕が違法な薬物で中毒症状になっていた人達を正常に戻して驚いていた。

 正気に戻った客達を観察しながらリーダーが僕に質問してくる。


「おい、お前……薬物による依存でなく魔力によるものだったのか?」


 僕は頷きながら彼等に詳しく説明する。


「はい、そうです。その魔力で中毒症状に陥り、依存性によって継続的にポーションを買い求める羽目に陥っていたのです」

「なるほど……魔力によって、そんな状態になるのだな……」


 リーダーは考え込むように頷く。そして、露天商に振り返って質問する。


「おい、貴様! このポーションはどこで手に入れた?」


 ハーフリングは慌てたように返答した。


「い……いや! おいらはただ、ある人物に頼まれて売りさばくように言われただけだよ!」


 彼は必死になって否定するが自警団の男達が取り囲む。僕は彼等に忠告する。


「そのポーションを作った者は、魔力の操作に長け金儲けも企んでいたのでしょう」

「ふむ……確かに、そうかもな……」


 リーダー格の男は顎に手を当てながら考え込む。自警団がハーフリングに詰め寄る。


「それで、貴様にポーションを売り捌くように依頼した人物は誰だ?」


 ハーフリングは自警団の尋問にしどろもどろになりながら答える。


「い……いや……それは……」


 彼は答えられず俯いてしまい藁にもすがるように僕を見つめてくる。仕方なしに僕は彼を擁護する事にした。


「まぁ、まぁ……そのポーションは違法ではありませんし。もし、またこのような事が起きて彼が販売に関わっていたら、その時は捕まえて牢屋に入れるなり何なりすればいいじゃないですかね?」

「うむ……まぁ、それもそうだな。おい! そのポーション自体は違法ではないから今回は見逃してやるが後日、聴取するから逃げるなよ!」


 自警団のリーダーはハーフリングにそう言うとメンバーに帰還するように命じる。

 取り押さえられていた客達も解放され、ぞろぞろと帰って行ったのである。

 そして、彼は僕の方に振り返り礼を言ってきた。


「お姉さん……助かったよ、感謝します」

「いえいえ、どういたしまして」


 僕は笑顔で彼に答える。ハーフリングの彼は僕の手を取ると両手で握りしめる。


「お姉さん……この御恩は一生忘れません!」

「えっと……どういたしまして」


 彼の勢いに負けて引き気味に返答する。彼は僕から離れると、ふと思い出したかのように言う。


「あっ! そうだ……まだ名前を教えてなかったね。おいらはハーフリングのニルスってんだ」

「それはそうと……あのポーションに依存性と常習性の魔力を込めた張本人に身に覚えは?」


 ニルスに張本人について質問すると彼は顔を曇らせ口ごもる。


「いや……実は……」

「どうやら訳ありのようだの……」


 ガラドがニルスに問いただそうとすると、彼は慌てたように手を振るう。


「いや~……これは、おいらの問題だから……あんた等が気にしなくても……」


 彼は申し訳なさそうにしながらも頑なに拒もうとした。すると、アジェが僕に話しかけてくる。


『ねぇ……このポーションに込められた魔力を辿って突き止めることが出来るけど……』

「えっ? そんな事出来るの?」


 僕は驚いてアジェに聞き返すと彼女は得意げに答える。


『ええ……あたしが食べた魔力の匂いで使われた場所を特定する事が出来るよ』

(まるで、鼻が利く犬みたいだな……)

『あたしを犬なんかと一緒にしないでね! これでも神なんだから!』


 犬と同列に扱った事にプンプン怒っている様子が頭に浮かぶ。

 こんな態度を示すアジェは神でありながらも人間臭さが滲み出ていた。


「……じゃあ、ニルス……僕はポーションに込められた魔力を辿って犯人を突き止めることが出来るけど……」

「えっ? そんな事出来るの? わ……わかったよ。実は、おいらの師匠のレシピが奴に盗まれて……それを元に脅迫され仕方なく作っていたんだ……本当は止めたかったけど」


 ニルスは観念したように話すと諦め顔になり、僕は彼の師匠のレシピが盗まれた事について詳しく聞いた。

 彼の話によれば、その師匠は薬草等からポーションを作る調合士で弟子のニルスに技術を教えていたのである。


 ある日、師匠が病気で死去した時に錬金術師が師匠のレシピを持ち去った。

 レシピを返して欲しければ言う事を聞くように脅されていたのである。

 それを返して貰えるまで否応なしに違法ポーションを作らされていたのだ。


「なるほど……その師匠のレシピが盗まれた事で脅迫されていたんだね」

「ああ……でも、もう限界だよ。奴に強要されて作ったポーションは違法な代物で中毒症状を引き起こすし……実は心が痛かったんだよ」


 彼は俯きながら辛そうに話すと僕は彼の肩を軽く叩いて励ます。


「わかった……じゃあ、僕が犯人を突き止めて君の師匠のレシピを取り返すよ!」

「えっ!? お姉さんが?」


 ニルスは驚いた顔をする。僕は頷いて彼の師匠のレシピを取り返す事を約束したのである。


「そうだよ、僕の名前はアベル……ドワーフはガラドさん」

「うむ……儂も困っている者を放っておけんのぉ……」

「あ……ありがとう! アベル、ガラドの旦那……」


 ニルスは感謝の言葉を述べると涙を流して嬉しそうにしている。僕は彼の手を握り握手をした。

 そして、僕達は犯人を突き止めるために行動を開始する事にしたのである。

 だが、外は夕方になり暗くなり始めていた。


「ニルス、その錬金術師が潜んでいる場所は知っているのかい?」

「いや、知らないんだ……奴は、おいらが住んでいる工房に現れてはポーションを作るよう命令してくるんだ……」

「そうか……今日はもう遅い。では、明日にでもその錬金術師の居所を探りに行くかの」


 ガラドが提案するとニルスが慌てるように言う。


「けど、居場所が判っても……奴は用心深いから護衛や錬金術で造り出した人造生物が待ち構えているんじゃないかな?」

「ふむ……確かに、その可能性はあるのぉ」


 ニルスの言葉にガラドも同意する。ただ、今日はこれ以上何かをするには遅いので僕は2人に提案する事にした。


「じゃあ、今日は遅いから宿をとって明日に備えましょう」

「うむ、それが良いかもしれんの……」

「それなら、おいらの工房に泊まっていけば? 3人泊まっても大丈夫だよ」

「えっ? いいの?」


 彼の申し出に驚き聞き返すと彼は笑顔で頷く。そして、僕達は宿より工房で休む事にしたのである。

 僕はガラドと共にニルスに連れられて彼の工房へと足を運んだ。


 そこは町外れにある小さな石造りの一軒家であり、中に入ると様々な調合器具や小瓶と薬草等が所狭しと並べられている。

 部屋の中には甘くも時には刺激的な匂いも漂っている。その中にはハーブの匂いもあるようだ。


「ここが、おいらの工房さ! 師匠が亡くなってから1人でやっているんだ」

「へぇ~凄いね……ところで、ニルス……その錬金術師はどんな人物なんだい?」


 僕は工房を見渡しながら彼に質問すると彼は困った顔をする。


「それが……奴の素顔を見たことがないんだ……」

「えっ!? それはどういう事なんじゃ?」


 ニルスの返答にガルドは驚いて聞き返すと彼は俯き加減で話し始める。


「奴はいつもフード付きのローブを着ていて、顔を一切見せないんだよ……だから声しか聞いてない」

「ふむ……用心深い奴だの……」


 ガラドが腕を組みながら呟くと、僕も同感だった。すると、ニルスは何かを思い出したかのように言う。


「あっ! でも……あいつの声は異常なほど喋りにくしていたよ。それとローブからは下水の匂いがしていたから……地下水路が怪しいと思うんだ」

「なるほど……じゃあ、明日は地下水路を探してみようか?」


 そう言うとニルスは嬉しそうに頷く。彼は調合士をしているから常人よりは鼻がいい筈である。


「そうだ! おいらも、アベル達の探索に同行するよ」

「えっ!? でも、危険かもしれないよ……」


 僕は心配になって忠告するが彼は首を横に振って否定する。


「構わないよ! それに、アベル達が居なければ師匠のレシピを取り戻せないかもしれない……」

「そうか……わかった。じゃあ、一緒に行こう!」


 ニルスの言葉に納得し、明日に備えて休む事にした。僕達は彼の工房で休む事になったのであった……。

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