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露店でハーフリングが売っているポーション

 僕達は街道を真っ直ぐ数刻歩いていく。すると、丘の上に町並みが見えてくる。


「おっ! あの丘の上に見える町がソシニアだぞ!」


 ガラドが嬉しそうに叫ぶ。僕も荷車を押し彼の後を追うのである。

 町に入るにあたって自分の髪の色を怪しまれないようにローブのフードを深く被り直すのであった。


「ここがソシニアの町か……」


 僕達は町の入り口に立つと中へと入って行く。町はレンガ造りの建物が多く建っており商店や露店商等が賑わっているようだ。

 町には冒険者ギルドもあり冒険者達が集まっているということである。ガラドが僕にギルドについて助言してくる。


「仲間を探したいなら冒険者ギルドを当たってみるか?」

「う~ん……」


 自分がレムレス率いる『終焉の刃』に加入したのも冒険者ギルドでの紹介であった。

 ギルドに登録している者には野心家や性根の悪い者、荒くれ者もいたりする。


 彼等の様な者は必然的にトラブルメーカーになりやすいし、パーティの和も壊す。

 だからこそ、却って冒険者じゃない者を仲間にした方が都合がいいと考える。


「ガラドさん、僕はギルドじゃない人を探したいと思います」

「ふむ……そうか、ならば冒険者ギルドには行かずに町中を探すか?」

「はい! そうしましょう!」


 僕は笑顔で答えるとガラドと共に町の探索を始めた。そして、暫く歩いていき裏通りに入っていく。

 そこは表通りと違って人通りが少なく薄汚れていた。ガラドが僕に忠告してくる。


「アベル……あまり治安の良くない場所のようだ、注意するんだぞ」

「はい、わかってます!」


 素直に元気よく返事をするとガラドは呆れるも一緒に付いてくる。そして、裏通りを更に進んでいくと一軒の露店が見えてきた。

 その店には小柄な男がポーションを並べて商売しているようであった。ポーションの色は青色である。


「うむ……ちょっと様子を見てみるか……」


 僕達は小男を観察する。彼は人間でなくハーフリングの様だった。

 ハーフリングとは背丈が子供ぐらいの大きさで好奇心が強い種族である。


 見かけも大人であっても子供の様な愛くるしい外見だ。

 店先で客を装いながら露天商の男を観察する。客と交渉しながら品物を売り捌いているようであった。


「どうだい? このポーション、ついさっき手に入ったよ……飲めば気分爽快になるよ!」


 ハーフリングの男はニコニコしながら呼び込みをし接客している。

 待ちわびていた客達が我先に手に入れようと群がってくる。

 その間にも客が彼からポーションを奪うようにして手に取っていた。


「あのポーションが……やっと手に入ったんだな」


 客の1人が僕の目の前で青い液体の入ったガラス瓶に目を凝らしている。

 彼の顔は頬がこけ、黒目が大きく開いており目の下のクマも目立つ。


 生気の無さを感じ生活に支障をきたしているのかもしれない。

 露天商のハーフリングは客が代金を支払うように慌てて値段を叫ぶ。


「えっと……銀貨1枚払ってくれよ!」


 僕は、このポーションが銀貨1枚もするんだなと思いながら商品を見ているとガラドが小声で注意してきた。


「アベル……あのポーション……依存性が高い代物やも知れぬぞ」

「えっ? なんで?」


 ガラドの言葉の意図が分からず首を傾げていると彼は客達の表情や顔付きに注視する。


「皆、ポーション欲しさに目の色が変わっている……何か違法な材料を使っておるな。一度、手を出したら止められなくなり継続的に求めてしまうのだろう」


 ドワーフの言う通り客達の顔を見ると目が虚ろで顔色も青白くなって生気がない。

 しかも、彼等の体に自分自身のものでない魔力の流れを感知し異変が起きていると判断する。


(これは……魔力で依存性や常習性に陥らされている?)

『彼等の体から微量の魔力が体を駆け巡っているようね……ポーションからも微量の魔力を感じる。その魔力で人々をポーション中毒にしているようね』


 アジェが頭の中で淡々と分析を述べる。そして、ガラドは僕の肩を軽く叩いて頷く。


「うむ……どうやらあやつは違法なポーションで儲けておるようだのぅ」

「そうみたいだね……」


 僕はガラドに同意すると、さり気なくガラドは露店に近寄っていき客達の行動を観察する。


「おい! 俺にもポーションをくれ!」

「お……俺にもだ!」


 騒然としながらポーションを奪い合うように客達が露天商に押し寄せている。


「あ……ああ! ちょっと待ってくれ!」


 ハーフリングは慌てながらポーションを手渡して金を貰い売りさばいていく。

 そして、1人の客が銀貨1枚を払ってポーションを受け取ると震える手で一気に飲み干し恍惚とした表情になる。


「うう……これだ、これ!」

「このポーションの為に生きているんだ!」


 客達はポーションを飲んで多幸感に満たされ店からふらふらと離れて行く。

 そして、露天商のハーフリングは売りさばけたことに安堵し額の汗を拭うとガラドに気付く。


「あれ? お客さん……このポーション買うんですか?」


 ハーフリングの男は不思議そうに首を傾げたがガラドは愛想笑いをし答える。


「うむ、そのポーション……非合法の代物ではないのかの?」

「い……いや、違うよ! 疲労回復のポーションだよ」


 彼はガラドに言われて慌てるように否定するが、ガラドは更に追及する。


「ふむ……儂の目には普通のポーションには見えないのだがな……」

「いや! 本当に疲労回復のポーションだってば!」


 ハーフリングは必死に否定するがガラドも引き下がらない。

 その時、路地裏に武装した男達の集団が現れると、まだ居る客や帰ろうとしている客を取り押さえ露店の周りに殺到していく。


「おい! お前、このポーションをどこで手に入れた?」

「い……いや……それは……」


 露天商のハーフリングは男達に睨まれてしどろもどろになる。


「あ……あんたら、一体何者なんだ!?」


 彼は恐怖で震えながら男達に問いかけるとリーダー格の男が答える。


「俺達は近隣住民から通報を受けた自警団だ!」


 男はそう言うと懐から1枚の羊皮紙を取り出し広げて見せる。そこには記載内容が記載されていた。

『違法なポーションを売っている露店が在り、飲んだ者に中毒症状が出ているので至急対処して欲しい』

 との事だった。露天商は呆然として立ち尽くしている。リーダー格の男は彼に命じる。


「おい……店の並べてあるポーションを全て出せ! そして、お前を牢屋に送る!」

「なっ!? いや……それは……」


 露天商は首を横に振って拒否しようとするが男達に取り囲まれてしまう。

 そして、リーダー格の男が露天商の男に命令する。


「おい……大人しく縄につけ!」

「ち……違うよ! ある人物から、このポーションを売るように言われただけなんだ……」


 彼は必死に言い訳するが男達は聞く耳を持たない。リーダーが命令する。


「お前が作って売っている代物だろ! じゃあ、誰から頼まれたんだ!」

「うう……お……脅されて……」


 ハーフリングは悔しそうに俯いて口籠っている。僕は彼が事実を言いにくそうにしているのを察知した。

 自警団が彼を取り押さえようとした時、僕は彼等に声を掛ける。


「皆さん、彼が本当に中毒性のあるポーションを売っていたのか確認してもいいですか?」

「んっ? お前は誰だ?」


 リーダー格の男が僕を見て問いただしてくる。僕は軽く自己紹介をする事にした。


「僕はアベル……冒険者です。そして、魔力感知と解除するスキルを持つ者です」

「ほう……それで……どう確かめるというんだ?」


 男は僕の発言に興味を持ったのか詳細を求めてくる。僕は彼に説明した。


「客達から本人のものでない魔力を感じます……その魔力を解除して元に戻れば彼が違法な薬を売っていた訳でない証明になりますよね?」

「うむ……確かに一理あるな。よし、やってみろ!」


 リーダーは僕の提案に納得すると自警団のメンバーに指示を出す。

 そして、僕の前に取り押さえられた客達が並ばされ頭の中でアジェと相談する。


「アジェ、客達の体にある魔力を解除できるかい?」

『ええ……出来るよ。あたしが魔力を吸いだし中和してあげる』


 アジェがそう言うと、僕は客達に手を向けて魔力を吸いだしていく。そして、吸いだした魔力を中和していく。

 すると、客達の体から魔力が抜けていき段々と正気に戻っていくのであった……。

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