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神から貰った力で魔人化した戦士

 回転する刃と化した彼が彼等にまともにぶつかれば肉片となってバラバラになる姿が予想される……。

 しかし、ガラドは迫り来る脅威に対してバルバラを後ろにして盾を構えるのであった。


「儂が止める! お前は隙を見て攻撃するのじゃっ!」


 2人は覚悟を決めて戦士の回転攻撃に備え身構えるのである。

 そして、回転した剣が斬り裂く刃化としミスリルの盾と激突する。


 ガガガガガ!!と剣と盾がぶつかり合う金属音が耳をつんざき、その不快な音に2人とも顔をしかめる。

 接触面に火花が散り、回転の衝撃によりガラドは後方に押し返されようとしていた。


「ぐっ……!!」


 ガラドは苦しそうな声を上げる。このままでは吹き飛ばされてしまうと感じ懸命に堪えようと踏ん張る。

 だが、徐々に後方に押し返されていくのであった……。


「うおりゃああぁ!!」


 ドワーフは雄叫びを上げながら、盾に力を込めるが回転の威力に押されジリジリと後退していく。

 ミスリルの盾は見る見るうちに削れていき、更に回転の勢いに押し込まれ片膝を地面に着けてしまう。


「ぐううぅ……!!」


 ガラドの表情は苦しそうであり苦悶の声を漏らすと、その額からは玉のような汗が噴き出していた。

 そうしている内に剣の回転がピタリと止みウェイドは剣を引くと後方へ一旦飛び退く。


「高速で長く回転していると流石に目が回ってくるぞ……」


 そう言うと彼は少しよろめきながら、ゆっくりと体勢を整えて再び剣を構える。

 戦士が一時攻撃を止めた為、ガラドは命拾いしたと安堵する。


 しかし、バルバラは彼が構えている盾の損傷具合を見て、もう一度回転攻撃を受ければ盾が破壊されてしまうと悟る。

 ガラドも彼女の視線の先を見て同じことを思うのであった……。


「このままでは……まずいぞ」

「ああ、もう一度受けたら盾は壊れてしまうだろうな……」

「どうしたものか……」


 ドワーフは目の前の状況に悲観し途方にくれるのであった。

 だが、そこにバルバラが閃いたとばかりに声を上げる。


「そうだっ!……私に考えがある」


 彼女はガラドに耳打ちして思いついた作戦を話した。


「なるほど……そうじゃな!」


 ガラドは作戦を理解したようで強く頷くと彼等は立ち上がるのだった。

 ズタズタになった盾を構えるドワーフを見てウェイドは嘲笑いながら話しかける。


「そろそろ盾が限界だろ?」

「……」


 ガラドの無言の返答にウェイドはニヤリと笑う。

 そして、再び剣を両手で持ち回転攻撃を繰り出そうと剣を水平に構えるのだった。


「いくぜっ!!」


 戦士は再び足を軸にして回転すると2人に向かって突っ込んで行く。

 その速度は先ほどより速く、目にも止まらぬ速さであった。


 ガラドは身構えて彼の攻撃を盾で受け止める準備をする。

 しかし、ズタズタになった盾で回転攻撃を受ければ木っ端微塵に砕け散ってしまう。


「うりゃあああ!!」


 それでも、ドワーフは気合の声を上げ盾で受け止めるのであった。

 そして、回転剣とミスリルの盾が接触した瞬間――バリバリバリッ!!という粉砕音と共にガラドの盾は砕け散った。


「むうっ……!」


 盾が粉々になった瞬間、ガラドは刃を避ける為すぐさま真横に飛んだ。

 バルバラも盾が砕けた瞬間、垂直に飛び上がると高速で回転しているウェイドを頭上から見上げていた。


 彼女は高速で回転する戦士は、横からの攻撃には強いが頭上からの攻撃には弱いと踏んだのである。

 剣が上方から振り下ろされようとした時、戦士も瞬間的に気付き咄嗟に剣で受け止めるのである。


 ガキーンッ!と剣同士が激しくぶつかり、火花が飛び散る。

 だが、ウェイドの剣も2度の攻撃で刃がボロボロに刃こぼれしてバルバラの上空からの一撃で粉々になってしまう。


「うっ!……何だと!?」


 戦士は叫ぶも竜人族は剣を逆に持ち柄で彼の頭部を打ち据える。


「がっ!!」


 ウェイドは呻くと白目を剥き、その場に倒れるのである。

 彼は白目を剥いて昏倒しておりピクリとも動く気配はない……完全に気絶しているようだ。


「儂等が勝ったぞ!」

「そうだ……私達の勝ちだ」


 ガラドとバルバラは喜び、手を取り合って勝利の余韻に浸るのである。

 2人共、勝ったのだが気分が高まって威勢よく振舞う様子は見られなかった。


 そして、こちらに向かって戻ってきた。

 僕は初戦を勝利で飾った事にホッと胸を撫で下ろす。


「2人共、お疲れ様!……良い連携でしたね」

「逆に言うと2人掛かりで戦わないと勝てなかったな……」

「神から貰った力は巨大だ……油断するでないぞ」


 労うもバルバラは1人では勝てなかったウェイドの強さに意気消沈していた。

 ガラドは逆に油断するなとアイラ達に向かって忠告するのである。


「そうですね……2人共、怪我はないですか?」

「儂は問題ないが、バルバラが……」

「ちょっとした傷だ、すぐに良くなるさ……」


『竜化』を解いた彼女の左脇腹に裂傷が出来て出血していた。

 竜人族だからか、それほど大した傷かもしれないが人間だと普通に歩ける状態でなく1週間ぐらい休養しなければならない傷であった。


「バルバラさん、僕が癒しの術を使って治しますよ」

「回復の術を掛けてくれるなら、お願いして貰おうか……」

「はい、掛けましょう」

(アジェ……上手く魔法が掛かるよう、お願い……)

『わかってる、ちゃんと回復させてあげる』


 アジェに頼む様に祈ると、彼女は僕の願いを聞き入れてバルバラの傷を癒しの術で治療する。

 見る見るうちに傷が塞がり出血が止まっていくのである。


「おおっ!……傷が塞がっていくぞ」

「これで治りましたよ!」

「ありがとう、アベル……」


 彼女が感謝の言葉を述べると僕は照れて頬を掻くのである。

 そして、アイラとナイアが武闘家との戦いに望むのであった……。




 失神しているウェイドを王国軍の兵士達がレムルスの前まで運んでくる。

 レイラは神聖魔法を唱えて、彼の傷を癒しの術で治療する。


「これで元に戻るでしょう……」

「う~ん……ハッ! 俺は気絶してたのか!?」

「無様に負けたな……」

「負けたのか……」


 レムルス達の冷ややかな視線を浴び彼は気絶する前の事を思い出し心が沈んでいた。


「すまない……図に乗って油断してしまった」

「ああ……初戦敗退だな」

「せっかく、神の力を示せたのに……負けるなんて」

「まあ、そう気落ちするな、次は俺が絶対に勝つからよ」


 レムルスは無愛想にレイラは悔しがるがアーロンは落ち込む彼を励ましている。

 彼はリーダーと聖女の視線から目を逸らすように俯いていた。


「次は、俺だ……絶対に勝つぜ!」


 武闘家が彼等に向かって宣言しレムルス達は頷くのであった。





 次戦は武闘家の男とアイラ、ナイアの共闘である。

 彼と古エルフがお互いに顔を見合わせ、ガンを飛ばし合っていた。


「エルフの女、この前みたいにはいかねぇぞ!」

「ふっ、お前の腕前がヘボイから負けたくせに」

「何だとっ!? ああっ!?」

「戦う前から挑発しないで……」


 アイラが挑発し武闘家が凄んで怒りを露わにする。それを宥めるようにナイアは2人の間に割って入る。

 2人はフンッと鼻を鳴らして距離を取り向かい合う。


「その前にお互い名乗りましょう……貴方の名は?」

「ふん、俺はアーロン・スカヴィル。『終焉の刃』の武闘家だっ!」

「私はナイア・カッラール……魔王軍幹部のダークエルフよ」

「アイラ・イーガン……古エルフの武術家だ」


 お互いに自己紹介が終わると、いよいよ試合が始まるのである。

 3人は皆、素手で武器は持っていない。


 武闘家とエルフ達は拳を構え真剣な表情になっていく。

 アーロンは今から彼女達を完膚なきまでに叩きのめす姿を想像し、凶悪な笑みを浮かべるのであった……。

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