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奴隷商による下品な品定め

「ちっ! バルバラ! このエルフを大人しくさせるんだ!」


 ポンぺオは舌打ちをして角が生えた女に指図する。彼女は大柄で筋肉質である。

 アイラは、その間にも目にも止まらぬ速さで次々と他の配下も殴り倒していくのであった。


 目にも留まらぬ速さで拳を連続で繰り出し配下は何も出来ず打ちのめされる。

 しかし、バルバラがアイラの腕を掴み捻りあげると彼女は苦痛に顔を歪める。


「くぅ……この!」


 アイラはバルバラに腕を掴まれながらも後ろ足で腹部を蹴り上げるが女は平然としていた。

 まるで分厚い肉の塊を蹴ったような感触に彼女は愕然とする。


「ッ!?」

「このエルフ……女にしては強いな!」


 バルバラはそう言うとアイラの腕を更に捻り上げ、もう片方の腕で彼女の首元を掴む。

 そして一気に持ち上げると強引に牢屋の壁に投げつける。

 アイラは壁に叩き付けられ呻き声をあげるのであった。


「ぐあっ!」


 彼女はそのままズルズルと床にへたり込むのである。並外れた力は技を凌駕するのである。

 そして、苦悶の声を上げるアイラを見下ろすようにポンぺオがバルバラに言う。


「よし! もういい……悪戯に商品を傷つけるな。これ以上傷付けたら価値が下がる」


 ポンぺオはそう言うと配下に指示をだす。配下達はアイラを引き摺り縄で後ろ手に縛っていく。

 縛られている途中、バルバラと呼ばれた女の首元を見ると黒い革製の首輪を嵌めていた。


 僕は抵抗しなかったので前手で縛られ、後ろ手に縛ったアイラを無理矢理引き起こし連行する。

 そして、ポンペオの執務室に連れていかれるのである……。


「女共を部屋へ連れていけ!」


 ポンぺオが配下に指示すると僕は縄で縛られたまま執務室へと連行される。

 そして、部屋に入ると室内は豪華な調度品や高価そうな壺等が並んでいた。


 壁際には大きな机があり、その上には書類の山が幾つもある。

 その手前にある彼の豪勢な机の前に立たされるのであった。


「さて……お前達はこれから商品として売り払うのだが……」


 ポンペオは対面に座ると僕等を値踏みするように見てくる。


「う~ん……金色の瞳のエルフは希少だから、まぁまぁ、いい値段で売れるだろうが……お前の方はどれぐらいになるかなぁ? うへへ……」


 彼は僕の髪の毛を掴み下品に嗤いながら言う。僕は思わず顔をしかめ彼を睨み付けるが、彼は全く動じない。

 そしてポンぺオは僕とアイラの全身を舐め回すように見てイヤらしい顔をする……。


「お前達の体に傷が付いていないか私自ら裸にして確かめてみようでないか」


 そう言うとポンぺオは舌なめずりをして、ゆっくりと近付いてくる。


「くっ!……この不埒者が!」


 アイラが怒りの表情で叫ぶと彼は余計ニタニタしながら言うのである。


「ふははは……いい表情だな! そんな表情をされると余計に興奮するぞ」


 その言葉に配下達もニタニタ顔になるがバルバラは、ばつの悪い顔をし拳をギュッと握り耐えていた。

 そして、ポンぺオは僕等の側まで来ると手をゆっくりと伸ばしてきて僕のローブに触るのであった。


「ほ~う……ローブの中はどうなっているのか……?」


 彼は屈みローブの裾を捲ろうと手をかける。

 その時になって僕は背筋がゾッとし気色悪くなって叫ぶのである。


「汚い手で触るな! やめろー!」


 僕は縛られた状態でジタバタと抵抗するが虚しく無造作にローブの裾を捲り上げる。

 商人は裕福な貴族や豪商に売り飛ばす為の価値を見定めようと確かめてくる。

 しかし、彼の手が途中で止まる。


「……あ?」


 ポンぺオの目が点になるのである。

 捲り上げられたローブの下、細くしなやかな脚の付け根に現れたのは、女性が身につけるような可憐な下着ではなかった。

 それは、見紛いようもない男性用下着だった。


「な……何だこれは……? 男の下着……?」


 あまりに場違いな光景に彼が呆然とするが、僕は恥ずかしさで一杯になり顔を真っ赤にする。


「うう……ジロジロ見るな! 恥ずかしいじゃないか!」


 するとポンぺオは、ハッと我に返り怒りの表情で怒鳴り散らす。


「これは何だ!? 何故、男の下着を穿いている!?」

「……元男だよ」

「嘘を吐くなっ!!」


 彼は叫ぶとローブの上から僕の胸を掴んで感触を確かめるのである。


「ちゃんと女の胸が付いているじゃないか! 出まかせを言うな!」

「うっ!」


 男から女性化した胸を揉まれるという屈辱に僕は思わず背筋に冷たいものが走る。

 恥をかかされて自尊心を傷つけられた事に段々と怒りが湧いてきた。


「うう……触るな! この変態!」


 するとポンぺオは、更に激昂し僕の顎を掴み上げると、バチンっと音を立てて頬を平手打ちする。


「ッ!!」

「私を愚弄しおって! 今すぐ下着を剥ぎ取って、ナニがついているか確認するまでよ! もし、ついているなら特殊な性癖を持つ者に高く売り飛ばしてやる!」


 彼は怒りで顔を真っ赤にするも、加虐的な性的倒錯者の目つきをしていた。そして、下着に手をかけ脱がそうとしてくるのである。

 この時、僕の頭の中でアジェの冷たい声がする。


『……汚い。あたしの器に、そんな脂臭い手で触るなんて……不愉快極まりない』


 アジェの怒りに呼応するかのように僕の体が熱くなる。瞳が一層赤く輝き多元色のオーラが全身を纏う。

 そして、彼女の感情が僕の中に流れ込んでくる……。


 全身に力がみなぎり縛られた手に力を入れ左右にこじ開ける。

 多元色のオーラで急激に劣化した縄がブチッという音を立て見事に千切れる。


「な……なにぃ!?」


 ポンペオが驚きの声を上げると同時に危険を感じ離れ、僕は勇気を奮い立たせて彼を睨み付ける。

 そして、首輪に手を掛けると色あせてボロボロになっていく。


「ば……馬鹿な!? 魔力封じの首輪が壊れただと!?」


 彼は信じられないものを見るかのように目を見開き呆然としていた。

 自由になった手からは多元色のオーラが溢れ出る。

 僕はアイラの傍や周りに居る配下達にも手を向けて衝撃波を次々と放つ。


「ぐあっ!?」

「ぐぎゃぁ!」

「ぐぇー!!」


 配下達が一瞬で吹き飛ばされ壁に叩き付けられ床で悶絶している。そして、ポンぺオとバルバラと呼ばれた女だけになる。

 商人は度肝を抜かれて立ちずさむ。僕は彼を見下ろしながら言うのである。


「僕を辱しめた報いを受けて貰うよ」

「バルバラ! 私を守れ!」


 彼の命令にバルバラは最初、命令に拒むような身振りをしたが次第に何かに操られるような感じで、ゆっくりと近付いて来る。

 そして、彼女は僕の前に出て拳を構えるのである。僕は彼女に言う。


「君も、その首輪で操られているんだよね? でも、もう大丈夫だよ……僕が自由にしてあげる」

「……」


 バルバラは拳を構え向かい合う。それでも、僕は彼女の間合いを詰めていく。

 だが、拳が届く位置まで近付くとポンぺオが叫ぶのである。


「その女を殴れ! 私の命令が聞けないのか!?」


 その声に反応しバルバラは拳を振り上げる。彼女は無表情でこちらを見て殴りかかる……。

 そして、無情にも彼女の拳が振り下ろされようとした時であった。


「危ない! 助太刀するぞ!」


 アイラが手を後ろ手で縛られているが僕を押しのけバルバラの間合いの中に入ると息を吐き出す。


「はっ!」


 強烈な震脚が床を踏み鳴らす。踏み抜かれた床から生じた力が足首、膝、腰へと伝わり、一気に増幅される。

 重心を僅かに沈め半身に捻ると右肩から背中にかけて体当たりを放つ。


 その瞬間、ドンッと衝撃音が室内に炸裂した。

 突進の勢いをそのまま反射されたバルバラの体はよろめきさせながら後方へ倒れていく。

 アイラは技を放つと荒い息ひとつ乱さず、その場に重く沈み込んでいた。


「な……なにっ!?」


 ポンぺオは驚愕の表情をして呻くだけであった。

 一方、僕はアイラの技に目を奪われていたのである。


「……今の技? ただの体当たりじゃないよね?」


 僕の問いにアイラは静かに言う。


「この技はエルヴンストライクではないが……武者修行を続けている間に教えて貰った武術だ……」


 彼女は遠い目をして話している。僕はそんな彼女の助力に感謝し笑いかけるのである。


「ありがとう」


 アイラは僕の感謝に恥ずかしくなり視線を逸らす。そして、僕は倒れているバルバラへと近付いていく。


「大丈夫? 君を今から自由にしてあげるよ」


 僕は彼女の首輪に手を触れる。すると、たちまち首輪の魔力を吸収していくのであった……。

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