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ポンぺオの謀略

 ラギドは自由交易都市を名乗っており交通の要所に位置して栄えている町である。

 街の中の大通りは石畳で整備され、あちこちに馬車が通り人々に活気がある。

 人種だけでなくエルフ、ドワーフ、ハーフリング達の異種族も、あちらこちらで見かけるのである。


 大通りの建物の壁面には豪華な彫刻が施され、道端には無数の露店が密集していた。

 それから、僕達を乗せた馬車は町の中心部へと走ると豪華な館の前で停まるのであった。


「ここが私の館です。どうぞ入って下さい」


 ポンペオが案内してくれた場所は豪邸だった。彼はかなり資産を持っている商人だろう。


「ふ~ん……とても大きいな」

「ほ~う、豪華じゃのぉ」


 ニルスがキョロキョロしながら言いガラドも感心する。

 ポンぺオが僕とアイラをチラチラと値踏みするように見てくるのに気が付く。


 彼が何か企んでいるのではないかと思い危惧するのである。

 だから、僕はアジェに心の中で相談してみる。


(どうしよう? あの商人は信用してもいいかな?)

『さあね……でも、嫌な奴の様な感じがするけど』

(そう? じゃあ、断ろうか?)

『何かあっても、あたしが居るから大丈夫でしょ』

(うん……そうだね)


 そんなやり取りをしている間にポンぺオが使用人に話しをつけ、こちらにやって来る。


「召使に話をつけたので部屋で、ゆっくりしていって下さい」

「それでは、お客様……お部屋に御案内します」


 使用人はそう言うと僕達を連れて館の中を歩きだす。そして、とある一室に通されるのである。

 その部屋は広くて豪華な家具や調度品が置かれていた。


「ここで少しお待ち下さい」


 彼はそう言って部屋から出ていくと、残された僕達は部屋にあったソファーに座り寛ぐのである。


「ふ~ん……なかなかいい部屋だね!」


 ニルスが呑気に感想を言うとアイラが注意する。


「親切な振りをして後から何か企んでいるやもしれぬぞ、気を抜くな」


 彼女もポンぺオを信頼している訳じゃなさそうだ。

 すると、ドアがノックされる音を聞きつけ僕は返事をする。


「どうぞ」


 すると、使用人が入ってきてポンぺオの伝言を伝えてくれる。それは夕食の準備が出来たので食堂に来てくれという事だった。

 そして、僕達は食堂に向かう為に彼の後ろをついていく。


「この部屋です……さあ、どうぞ」


 そう言うと彼は去っていくのである。テーブルの奥にはポンぺオが座っていた。

 そして、僕達は中に入りテーブルにつくとメイド達が食事が運んでくる。

 その料理はとても豪華で美味しそうで、いい匂いがしていた。


 立ちのぼる湯気には色々な種類の香辛料が使われ刺激的な匂いが鼻腔を突く。それと同時に食欲を掻き立てる。

 更に料理が盛られている皿は薄く精巧に焼かれた白磁で、いかにも高価な代物である。


「さあさあ、熱々の内に食べた方がいいですよ……冷めたらコクが無くなるので」


 商人は直ちに食事をするよう促してくる。彼は僕等が食事に口をつけるまでじっと見詰めていた。


「へ~凄いね! 美味しそう!」

「うむ……確かに美味しそうじゃ」


 ニルスとガラドが感嘆の声を上げる。アイラも無言で料理を黙々と食べるのである。

 そして、僕も一口食べてみる。その味はとても美味しくて思わず目を見開くのであった……。


 暫く食べ進めていると舌が痺れてくる。次にナイフとフォークを持つ指先の感覚が無くなっていく。

 その内、全身も痺れて動かなくなってきた。


「っ……うぅ……体が……」


 僕は思わず呻き声を出し、ニルスとガラドの方を向くと彼等も痺れて苦しそうにしていた。


「あうっ……うぅ……」

「くっ……う……動けん」


 ハーフリングは声も出せずテーブルに突っ伏し、ドワーフは口から涎を垂らしながら唸る。

 そして、アイラも苦しそうで突っ伏していたが商人をギロリと睨み叫ぶのであった。


「貴様……痺れ薬を入れたな……」


 すると、ポンぺオが笑いながら答える。彼は僕達を見てニヤニヤと笑っていた。


「ふははは! まんまと罠に掛かったな」

「な!?……何だと!?」


 僕は痺れる舌を動かしながら聞く。彼は口角を上げ意地悪い笑みを浮かべながら話す。


「私はこの町の奴隷商だよ。お前の瞳と髪色は非常に珍しい……とても高値で売れると思ってな。それと、そこのエルフも瞳が金色なので高く売れる。もっとも2人とも美人だからこそだがな」

「な!?……ふざけるな!」


 僕は怒りで思わず叫ぶが、痺れて動けない。するとポンペオは更に言う。


「ぐふふ! 価値の高い商品を獲得できて私は幸運だ。おい! 女達は牢屋に監禁して男達は用無しだから、明日にでも殺して埋めてしまえ!」


 そう言うと彼は使用人を呼び僕達を牢屋に運ぶように指示するのである。使用人に混じって異様な風貌の女も入ってくる。

 彼女は頭に竜の様な角を生やし尻からも竜の様な尻尾が生えていたのである。


「バルバラ! その女は非常に価値が高いから丁寧に扱うんだぞ!」


 彼の声を聞きながら僕の意識は無くなっていった……。

 バルバラと呼ばれた女は無言でアベルとアイラをヒョイと担ぎ出す。そして、ポンぺオはニヤニヤしながら見送っているのであった。




「う~ん……ここは?」


 僕は目を覚ますと周りを見る。どうやら牢屋に監禁されたようだ。隣を見るとアイラも居た。

 彼女は僕より少し早く目が覚めたのか既に起きていたのである。

 彼女も僕も痺れの症状は落ち着いているので体は動かせそうだ。


 ふと、何か首に違和感を感じ触ってみると革製の首輪が嵌められている。

 アイラの方を見ると彼女の首にも同じような赤い首輪を嵌められていた。


「アイラさん……大丈夫ですか?」

「ああ、私は大丈夫だが……どうやら、この首輪は魔法を使えなくする魔道具のようだ。試しに精霊を呼び出そうとしたが無反応だった」


 彼女はそう言うと、悔しそうに歯軋りをする。僕は自分の首輪を触りながら言う。


「これで……魔法を封じているのか」


 僕も魔力感知の能力を使ってみるが発動しないのである。

 仕方なく2人して項垂れるのである。その時、ふとアジェの声が聞こえてくる。


『あ~ら、困ってるようね』


 アジェの声が頭に響く。どうやら彼女は、この災難に対して現れたようだ。


(牢屋に監禁されて更に魔法を封じる首輪まで嵌められたけど、どうしよう?)

『そうねぇ……好機が来るのを待ってみたら?』

「待つの?」

『そうよ。チャンスが訪れるかもしれないじゃない?』


 そんな会話をしているとアイラが不思議なものでも見るかの様な眼つきで訊いてくる。


「一体、誰と話しているんだ……」

「あっ……独り言です。そんな癖があるんです」


 1人で呟く事が多いと彼女に説明するもアイラは眉を潜めながらも言うのである。


「まあ、それはいいが……このまま暫く様子を見るか?」

「あ~……その、機が熟すのを待ちましょう……」


 僕はとりとめもなく答えると彼女は怪訝な顔をし首を傾げるのであった。

 2人で暫くジッとしていると複数の足音が聞こえてくる。どうやら誰か来たようだ。

 足音は僕達が居る牢屋の前で立ち止まる。そして、扉の外に居るのはポンぺオとバルバラと配下達だった。


「ふはははは! どうだ……気分は?」


 バルバラに牢屋の扉を開けさせ中に入ってくる。そして、ニヤニヤしながら聞いてくる。

 僕はその顔に反吐がでそうになりイラっとして答える。


「最悪だよ!」

「そうか! それはいい気味だ! 首輪のお陰で魔法が使えまい」


 彼は高笑いするのである。すると、ポンぺオはアイラも見ながら言う。


「このエルフも美人だな! こいつも高く売れるぞ!」

「下品な奴めっ!」


 そんなポンぺオをアイラが睨み付け罵倒するが彼は気にせず話を続ける。

 そして、配下達に指示を出すのであった。


「おい! この女達を牢屋から出して、私の部屋に連れていけ」


 配下達は指示に従いアベルとアイラを牢から出すと手を縄で縛ろうとするのである。

 彼等がアイラを縄で縛ろうとした時、彼女は素早く動き配下の腕を掴み捻り上げる。

 すると、配下の男は苦痛に顔を歪ませ呻き声をあげる。その隙を狙いアイラは男の腹部を蹴り飛ばす。


「うごっ!」


 彼は蹴り飛ばされて床で悶絶するのであった……。

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