泣き空
空が泣いている。
君がいなくなった日も、たしか、こんな雨だった。
傘を持たずに歩いた。
わざとだ。
濡れた方が、少しだけ格好がつくような気がしたから。
本当は、ただ、誰にも見られたくなかった。
濡れているのが涙なのか雨なのか……
そんなことを誤魔化せるだけで、もう救いだった。
君は最後まで静かだったね。
まるで、僕の愚かさを全部知っていたみたいに。
「あなたは、いつも空を見てばかりいる人ね」
と君は言った。
あのときの声が、今も耳に残っている。
いや、もう残っているというより、焼き付いて離れない。
心の奥で、ゆっくりと、痛みに変わってしまって。
ああ、空が泣いている。
僕のかわりに。
泣くことを忘れた僕の代わりに。
それでも君は戻らない。
どれほど空が泣こうと、君の笑い声は降ってこない。
ただ、街が濡れるだけ。
僕だけが、時間の外で立ち尽くしている。
ああ……
もし……
もう一度だけ会えるなら……
僕はきっと何も言わない。
「愛していた」
なんて。
そんな陳腐な言葉は、君の手を心を汚すだけだ。
だからせめて、今日くらいは、空と一緒に泣かせてほしい。
君を忘れられない僕のために。




