泣き空
掲載日:2025/11/03
空が泣いている。
君がいなくなった日も、たしか、こんな雨だった。
傘を持たずに歩いた。
わざとだ。
濡れた方が、少しだけ格好がつくような気がしたから。
本当は、ただ、誰にも見られたくなかった。
濡れているのが涙なのか雨なのか……
そんなことを誤魔化せるだけで、もう救いだった。
君は最後まで静かだったね。
まるで、僕の愚かさを全部知っていたみたいに。
「あなたは、いつも空を見てばかりいる人ね」
と君は言った。
あのときの声が、今も耳に残っている。
いや、もう残っているというより、焼き付いて離れない。
心の奥で、ゆっくりと、痛みに変わってしまって。
ああ、空が泣いている。
僕のかわりに。
泣くことを忘れた僕の代わりに。
それでも君は戻らない。
どれほど空が泣こうと、君の笑い声は降ってこない。
ただ、街が濡れるだけ。
僕だけが、時間の外で立ち尽くしている。
ああ……
もし……
もう一度だけ会えるなら……
僕はきっと何も言わない。
「愛していた」
なんて。
そんな陳腐な言葉は、君の手を心を汚すだけだ。
だからせめて、今日くらいは、空と一緒に泣かせてほしい。
君を忘れられない僕のために。




