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シャックス 名家落ちこぼれの少年は未踏大陸踏破を目指す  作者: 第三者臨海
第1章 クロニカ編
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第6話 当主の試練



 ジョウン先導の元、シャックス達は走る。

 ややあってシャックス達が、たどり着いたのは表通り近くの路地。


 その路地に馬車が止まっている。


 レーナは、他にも信用できる協力者を見つけていたのだ。


 レーナはその人物をマルコと呼ぶ。


 新たに合流した男性マルコがレーナに頭を下げて、馬車に乗るように言う。


「早く中へ、すぐに出発します!」

「ありがとう。このお礼は必ず!」


 レーナは言葉少なにお礼を言って、シャックス達を先に乗り込ませる。


 レーナが乗り込んだのは最後だ。


 すぐに出発した馬車は、内部に人がいる事など考えもしない速度で、表通りを爆走した。


 馬車の内部は物理的にも精神的にも暗かったが、ニーナとフォウが会話で明るくする。


「急な事でびっくりしちゃったけど、これであの嫌な家とおさらばできるのね」


 ニーナはこれで平民として生きられるのだと、前向きな発言をして家族を励ました。


「新しい家に着いたら何をすればいいんだ? 平民のマナーを学ばなくちゃな。手づかみで食事とかするのが普通なのかな」


 フォウも、同じようにならった。


 そんな二人の顔を見て、レーナは少しだけ微笑んだ。


「二人とも優しい子に育ったのね、嬉しいわ。無理に明るくさせちゃってごめんね。こんな頼りないお母さんで」

「そんな事ないわ。お母さんはよくやってるもの」

「そんな事ない。母さんはしっかりしてるよ」


 レーナとフォウの言葉が重なる。


 シャックスもレーナを励ますために大きく頷いた。


 レーナは悲しそうな顔で首を横に振る。


「お母さんはしっかりなんてしていないわ。今こうしていても、もっと良い方法があったんじゃないかって、出来る事が他にもあったんじゃないかって思うもの」


 レーナは馬車の窓を見つめる。


 その向こうには夜の暗闇が広がっていた。




 夜は深まっていく。

 もうそろそろ日付が変わる頃合いだった。


 そのまま馬車は、町を出て、街道を走っていく。


 そして、人気のない森の中にさしかかった。


 その森はゴースト系のモンスターが出る事で有名な森だった。


 比較的弱いモンスターが多く、一般市民でも命を落とす事が少ないため、気軽に歩く事ができる。


 しかしさすがに夜中に人影はない。


 そんな森には黒い木がたくさん生えていた。


 雑草や植物も黒い色の物が多い。


 そのため人々からは漆黒の森と呼ばれている。


 この森の特徴は、屍を放置しておくと、アンデット系のモンスターになってしまうという点だ。


 命を落とした動物や人間が、モンスター化して他の動物や人間を襲うのだ。


 モンスターよりそちらの脅威が高いため、定期的に衛兵や冒険者などが巡回していた。


 シャックス達はそんな森の中を馬車で通るが、森の中間地点で襲撃を受ける。


 馬が嘶いて馬車が急停止。

 窓から外を見ると、進行方向に何台もの馬車が止まっていた。


 それらは、通せんぼするように停車していた。


 その馬車から降りてくるのは、ワンドとアンナとサーズ。


 そして、ワンド達の味方である、何人かの使用人だった。


 使用人達が炎の魔法で、こちらの馬車に火をつける。


 こちらの馬車はすぐに燃え盛ったため、内部にいたシャックス達は外に出るしかなかった。


 シャックスは、繋がれている馬を解放し、頭を打って気絶している御者マルコを見る。


 ジョウンにマルコの怪我を見てほしいと、ジェスチャーで伝える。


 怪我は大した事がないと分かったので、待っていれば目覚めるはずだった。




 シャックスは、視線をワンド達の方へ向ける。


 レーナがワンドに話しかける。


「悲しいけど、ニーナじゃアンナには勝てないわ。だから当主の座は譲る。それで良いでしょう? こんな所までわざわざ追いかけてくるなんて」

「当主になるのなら、誰の目にはっきりと分かる、明らかな勝利が必要なのだ。狩りは行わなければならない」

「それが子供達の死に繋がるとしても?」


 ワンドは無言で首を縦にふった。


 シャックスは悟る。


 ワンドは何があっても試練を行い、敗者となった者を殺すつもりなのだと。


「アンナ、サーズ。やれ」


 ワンドの一言で、アンナとサーズが襲い掛かってくる。




 アンナはニーナと対面して戦う。


 アンナはニーナへ叫ぶ。


「自分とよく似た顔の劣化品がのうのうと生きてるのって、虫唾が走るのよね。さっさと死んでくれない!?」


 二人とも火を操って戦ったが、ニーナは家族を傷付けられないといって降参した。


「こんなの間違っているわ」


 両手を上げて何もしない姿勢をとったニーナに向けて、アンナは侮蔑の視線を向ける。


「戦いもしないの?」

「だって、私達家族でしょう? そりゃあ、嫌いなところもあるけど。命の奪い合いなんて出来ない。どうして殺し合わなくちゃいけないのよ」

「私はできるわ。時間の無駄ね。負け犬の言葉なんて聞く価値があると思ってるの?」


 嘲笑するアンナは躊躇う事なく炎の魔法を放った。




 サーズはフォウと対面して戦う。


 サーズはフォウへ叫ぶ。


「逃げる事しかできない無能なんかに俺が負けるかよ。どうせ俺が勝つんだから、とっととやられちまえ!」


 サーズは水の水球でフォウを閉じ込めようとした。


 しかし、フォウは足元に発生した水を見て、すばやくその場から飛びのく。


「へぇ、さすが逃げ続けてきただけはあるな」

「お前が毎回嫌がらせしてきたり、ちょっかいかけてくるもんで学習したんだよ」


 フォウは回避をし続けるが、それでも最後にはサーズに捕まってしまう。

 水球に閉じ込められたフォウは気絶した。




 それらを見ていたシャックスは、拳を握りしめた。

 シャックスはレーナに視線を向ける。

 見守っていたレーナは、きつく拳を握りしめている。

 その拳は震えていた。



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