第29話 再会
数日が経過。
祭りは数日にわたって開催されるため、今も町は賑わっていた。
そんな中、その町の祭りに参加するために、国の要人がやってくるという情報がシャックス達に伝わってくる。
その人物は、名前のあるもので、引退したかつての騎士らしい。
第一陣の探索隊で生き残った人間でもあるという。
ヒルズという名前のその男は、現役騎士の最中に探索に行き、その後騎士を引退して政治家になったという異色の経歴を持つ60代の男性だ。
街にやってきた彼と顔を会わせたシャックス達は、想像より逞しい見た目に驚いた。
出会ったのは街の中の屋台で、ロックが串焼きを頬張っていた時だった。
「なるほど君たちが噂の探索隊の、そして生き残った……」
ヒルズはシャックスに興味津々だったが、突っ込んだ事は聞かなかった。
背景で、食事のために未だ口を動かしているロックにナギが注意をしているのを横目で見ながら、シャックスはヒルズを観察する。
確かに戦いの経験のある人間特有の身のこなしをするなと考える。
人混みの中でも、しっかりとした足並みで歩いてきた彼は、シャックス達とまた話をしたいといった。
遠ざかっていくヒルズを見ながらアーリーが「そういえば」と呟いた。
「グリードさんから聞いたことがあるんだけど」
それは過去のヒルズに関しての情報だ。
第一陣探索参加者である彼はしかし、表向きには探索隊のメンバーにはなっていない事になっている。
それは、荷物に紛れて密航していたからだった。
未踏大陸にたどり着いた後は、策を弄して生き延びていた。
魔道具によってモンスターに変身する事ができた彼は、未踏地域を冒険し、探索を生き残り、いかだを作って帰って来たらしい。
そんな彼はミザリー達とは出会わなかったため、エルフたちの情報は国には伝わらなかった。
彼の経歴を聞いたシャックス達は驚いて、口を開けるしかなかった。
護衛は要らないかもしれない、とシャックスは思ったが、仲間たちも同じように考えたらしくロックが「俺達いるか?」と呟いた。
祭りの最中、街の治安維持活動の一端を担っているらしいヒルズとはそれからも、何度か顔を合わせる事があった。
貴族社会でいきる者らしい、しっかりとした服装をしていたが、実際に会って話してみると、ヒルズは話しやすい人間だった。
奢り高ぶる面もなく、貴族ではないアーリーやロックにも親しく接した。
ヒルズは「若い頃不良貴族として有名でよく町で遊んでいたためだろうね」と、言う。
彼がそうしていられたのは長男が家を継ぐ予定だったからだ。
三男であった彼は、長男になにかあったとしても、次男がいるからと言われ、気楽に生きてきた。
しかし、長男は町の暴漢に襲われ死亡し、次男は病でこの世を去った。
その結果、三男である彼が責任ある立場にならざるを得なかったという。
「こんなに跡を継ぐことが大変だとは思わなかった。兄たちは苦労していたんだろうな」
死者と話せるなら、謝りたいとヒルズは後悔の言葉をこぼした。
家族を失った事のある点で後悔を残しているシャックスには、彼の気持ちが少し分かる気がした。
そんなシャックス達は、これまでに集めた情報で裏組織ダークネスの狙いに見当をつける。
アンナは表ではやっていけないから、裏社会で生きていくつもりだった。
それで、組織の者達と共に、だんだんと難しい仕事をこなしているところだったのだ。
アンナには、ある意味向いているかもしれないと、シャックスは思った。
人を殺めたりするのに抵抗がなく、罪を罪だと思わないからだ。
そのシャックスの気持ちを示す通り、アンナの順応は順調で、裏社会では評価が上がっているという。
同時期にワンドはその話を聞いて、頭を痛める事になっているが、シャックス達には知らない事だった。
シャックスとナギが他の仲間に礼儀を教えて、ヒルズが滞在しているホテルへ再度訪問する。
「緊張するぜ。礼儀とか常識とか今まで考えた事なかったからな、あんまり」
一番の問題児ロックの成績は少々怪しかったが、ヒルズならば多少のトラブルがあっても目くじらを立てたりはしないだとうと、シャックスは考えていた。
ホテルに向かった後、要人である政治家ヒルズに挨拶をして、護衛させてもらう。
話はとんとん拍子に進み、障害などはなかった。
「それにしても、短期間でよく礼儀作法を密につけたね。特にロックくんは苦手そうに見えたけど」
「えっと、ナギっていうスパルタ教官がうるさくて」
「はは、熱心に何かを教えてくれるのは良い仲間の証拠だよ、大事にしなさい」
ダークネスの狙いはヒルズにある。
企みを阻止するためには、彼を守らなければならない。
長期戦も見込んで、シャックス達は即席の勉強会を開いていた。
それは貴族社会のマナーや知識などをつめこむためだ。
シャックスとナギは、貴族のマナーがこんな所で役に立つとはな、と言いあった。
そんな努力が実を結んだのか、それとも祭りの空気で細かい事に目くじらを立てるものがいなかったのか、シャックス達は貴族の要人の護衛として、ミスなく過ごした。
そんな中、状況が動く。
日付が変わる頃合い。
部屋の前で見張りをしていたシャックスとアーリーが足音と物音に気付いた。
夜中に襲撃者が来たのだった。
ヒルズが泊まっている建物の、どこかの階の窓ガラスが割られいくつかの足音が接近してくる。
守りをかためて、ヒルズの部屋に入ったシャックスとアーリー。
ややって、その部屋にたどり着いたのは一人の人物。
「まさか、落ちこぼれのあんたと戦う機会が訪れるなんてね」
シャックスは、再会したアンナと戦う。




