第22話 エルフとの交流
その日は、土砂降りの雨が降っていた。
未踏大陸に嵐がやってくる。
シャックス達が住んでいた場所とは比較的にならない程、風は強く吹き荒れ、立ち並ぶ木々はしなっている。
モンスターたちも出歩かなくなり、木陰や岩の影、洞窟などでじっとしていた。
雨宿りを場所を探していたシャックス達は、とある種族を見つける。
小走で先に進んでいくと、エルフが姿を現した。
先発の探検隊もエルフの姿を遠くから見た事があると聞いていた。
だが、交流はしなかったらしい。
エルフはフェニックスを手なずけたシャックスに興味を持ったようだった。
「おまえ、神の鳥に気に入られている。その鳥、我らの守り神」
フェニックスは、エルフ達にとって神聖な存在だった。
ちなみに、フェニックスはなかなか懐かない種族らしいことが、エルフからの話で後で分かった事実だった。
エルフたちは、聞きなれない言語を話すため、意思疎通が難しかった。
単語だけは、なんとか聞き取れたため、シャックス以外はそれらをつなぎ合わせて、彼らの言いたい事を推測するしかない。
だが、シャックスがテレパシーの能力で意思疎通を図る事が成功する。
シャックスには、エルフの話が滑らかに聞こえた。
「テレパシーって便利ね。こういう時、シャックスがいてくれて助かったわ」
アーリーにそう言われて、シャックスは虚を突かれた顔になる。
話せないという事がこのような面で役に立つこともあるのだと、シャックスは少し嬉しく思った。
エルフの里に連れて行かれたシャックス達。
エルフ達の中には、鍛えた者達が多かった。
出迎えた者達は特に筋骨隆々だったため、アーリーたちが不安がるが、シャックスが「彼らに敵意はない」と伝える。
ロックは呑気にも「見習いたい筋肉だぜ」と呟いて、ナギに呆れられている。
シャックス達はエルフの案内で、里の中で一番大きな木の建物へ連れていかれた。
そこにはたくさんの料理が並べられていた。
エルフ達はシャックス達に友好的な態度で接するという事が良く分かる光景だった。
シャックス達は彼等からは、丁重にもてなされる。
シャックス達がてこずるような大型のモンスターが食材になっていて、食卓に並んで驚く。
「あの食材にされてるモンスター、私達散々避けてたやつよね。エルフってすごいのかしら」
アーリーが驚いた顔で呟いている。
用意された大量のご馳走は、持て成しのためでもあったが、もともと、力比べの祭りがあったため、食材があったらしい。
シャックス達は、最初に話をしたエルフの青年リューンと以降も親しくしていく。
リューンは紫の髪に琥珀の瞳をしている。
200歳以上の年齢だ。
近寄りがたい雰囲気があるが、整った美形の青年で、人間にも通じる美を備えていた。
エルフには人外めいた美貌の持ち主が多いが、リューンのそれには親しみを感じる要素があった。
それはリューンが後にシャックス達に話す事だが、遠い昔に未踏大陸に流れ着いた人間の血を引いている事が影響していたからだった。
シャックス達が料理を食べている間、他のエルフ達は建物の外で話をしていた。
建物には換気のための窓があるが、エルフ達が覗き込むようなことはしない。
客人に失礼をするような礼儀知らずは恥だと思われているからだ。
エルフの女性が「人間をもてなすのは久しぶりだわ」と言う。
すると同じ年代くらいの女性が「そうね。里に来たのはかなり前の事だったもの」と続けた。
他のエルフの男性が「そういえばミザリーを見かけなかったか?」と尋ねる。
その問いに、大柄なエルフの男性と小柄なエルフの男性が答えた。
「あのお転婆ならまたどっか冒険してるんだろ」
「この間も抜け出してるところ見たぞ」
その会話を聞きつけたのは、子供のエルフだ。
彼らが会話にまざった。
「いいな。俺達も冒険したい!」
「私も外に出たい!」
そんな子供達に対して投げかける言葉は、どんなエルフも同じだった。
「「「駄目だ(よ)」」」
エルフ達は閉鎖的な環境でずっと生きてきた。
このままで良いとは思っていなかったが、軽はずみな他種族との接触がトラブルを招き起こすことを知っているため、慎重にならざるをえなかったのだ。
食事が終わった頃、シャックス達は筋骨隆々なエルフ達から力比べをしないかと誘われた。
断る理由がなかったため、シャックス達はその誘いを受けた。
エルフはみな強かった。
里のコロシアムで戦いを見て、シャックス達は圧倒されるばかりだった。
シャックスは、彼等と手を組むことを考えた。
そして、探索の終了後に都の者達から、彼等の里が荒らされない事を願った。
エルフたちは打ち解ければ気の良い者達だったからだ。
大陸が踏破された後、彼らのように外界と接触していない者達がどうなるか、不安があった。
ナギが文献に残っているエルフは臆病で人見知りだと言っていたが、時代を経て他種族の血が混ざる事で性格が変化したらしい。
未開大陸には、数百年前まで好戦的で陽気な鬼族が存在していたため、その影響だという。
だが、種族の絶滅の危機に瀕し、それを哀れに思ったエルフたちが手を差し伸べたのだ。
鬼族との血が混じった影響で、本来のエルフよりもほんの少し開放的な性格になったのだろうと推測する。
そんな話をした後、コロシアムで戦う事になったシャックス。
礼儀を重んじるエルフたちは、対人戦では戦いを一気に進めない。
数分間戦って、休憩した後に、再び対戦するという形式だった。
始めて行う戦い方の違いに戸惑うものの、シャックスが勝利。
さらなる歓待を受けた。
その日の夜にシャックスは、ロックと話をする機会があった。
時刻は夜で、空には満天の星。
里の各所には灯りの火があった。
エルフの里の、無造作にも見えるーー岩場に作られた温泉につかった後、ロックが話しかけてきたのだ。
「俺の地元には珍しい種族がいてな。そいつらが苦労していたようだったから、他人事には思えないんだ」
ロックは懐かしそうに目を細めながら続ける。
「昔から、そういう種族の奴を見ると、つい構っちまうんだよな。他の人間からは呆れられる事が多いけど」
ロックは頬を掻いた。
「大した交流もないけど、つきあった時間が長くなけりゃ助けちゃいけねぇのか? 俺は気に入った奴がいれば、時間なんて関係なしに助けたいって思う。それは変な事なのか?」
シャックスは首を降ってこたえた。
「そんなことない。ロックらしくて良いと思う」
ロックは笑いながら「ありがとよ。そういってくれると嬉しいぜ」とお礼を言った。




