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シャックス 名家落ちこぼれの少年は未踏大陸踏破を目指す  作者: 第三者臨海
第3章 王都編

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第12話 十六歳、王都へ



 シャックスがセブンの家に世話になってから十年が経過した。


 シャックスは十六歳になった。


 誕生日の翌日。


 シャックスは、お祝いパーティーの後片付けをしていた。


 セブンからのプレゼントは今年は十個になっていて、花瓶に活ける花も10年前より多くなっていた。


 酔いつぶれたセブンのために、簡単な昼食を作って、シャックスは家を出る。


 今日は買い出しをする日だったからだ。


 シャックスは町の中で、新聞を買って読んだ。


 そこには国の色々な事が書かれていた。


 シャックスはその記事のとある部分に注目する。


 シャックスは、ワンド達に仕返しをするために、まずは国の中で名前の知れた強者になる事にした。

 そのために、国が募集する大陸踏破のメンバーに立候補しようと考える。


 帰ったシャックスは、さっそくセブンにその事を相談した。


 セブンはシャックスのために、推薦状を書いて手紙を送った。


 国はセブンの手紙を受け取り、メンバーになるための試験について案内状を返送する。


 数日後、その手紙がセブンの元へ届く。


 推薦状が受理された事が書かれて、試験の詳しい説明が綴られていた。


 試験は王都のアリーナで行われるため、シャックスはそこまで行かなければならない。

 王都は、シャックス達が生活している地域からは、かなり遠かった。


 辿り着くには、一か月ほど時間がかかる。


 長くなるが、シャックスは旅立つ事を決めた。


 旅立ちの日、荷物を持ったシャックスにセブンがお守りを渡す。

 カーラからもらったお守り石を、専門の職人に依頼して指輪に加工したものだ。


 シャックスはマスターしたテレパシーの魔法で、セブンに初めて「ありがとう」と言葉を伝えた。


 魔法は少し前にマスターしていたが、最初に言葉を伝えるならセブンが良いと思って、今日まで使わなかった。


 シャックスからの言葉を聞いたセブンは瞳を潤ませる。


 シャックスはお守りを貰い、抱擁を交わしてセブンと別れた。


 シャックスの手には仮面が握られている。




 乗り合い馬車を乗り継いで都へと向かうシャックス。

 その道中では、様々な景色を見た。


 種族の違う鳥たちが共生する湿原や、親子ペンギンが休む氷河。


 雨上がりにかかる、様々なサイズの虹。


 入口から入る太陽の光を、複雑に屈折させて、オーロラのようなものを見せる洞窟。


 旅の合間に立ち寄った場所では、珍しい光景がいくつも見れた。


 その中では、当然モンスターに襲われる事もあった。


 見た事もない巨大なザリガニと戦ったり、通行人を飲み込みかけているイボだらけのカエルと戦ったりもした(通行人はきちんと助けた)。


 それらを見たシャックスは、自分の生きてきた世界は、とても狭かったのだと痛感する。

 前世を含めてもシャックスが移動した範囲はごくごく狭いものだった。


 シャックスは、クロニカ家への仕返しが終わったら、世界を見て回るのも良いかもしれないと考えた。


 旅の中では、このような事もあった。


 シャックスが立ち寄った村の中、性格の悪い貴族の不良少年に絡まれている平民の少年がいた。


 十代半ばくらいであるその少年は、貴族達に脅されて犯罪行為に手を染める所だった。


 その現場を見て呆れたシャックスは、平民の少年を助ける事に決めた。


 クロニカ家の人間だった時の記憶を思いだし、頼れる貴族の家が近くにある事に気付いたシャックスは、その家に手紙を出した。


 ワンドと親交があるにしては珍しく善良な貴族だったため、覚えていたのだ。


 数日後、その貴族の家が動いて、性格の悪い貴族の不良少年達は懲らしめられたのだ。


 彼らは、それぞれの実家から数か月間外に出られなくなっていた。


 平民の少年にお礼を言われたシャックスは、次があっても助けられないから気を付けてほしいと忠告して、去った。


 貴族であった過去が役にたった事は、シャックスにとってはほんの少しうれしかった。




 セブンの家を出てから1ヶ月後。


 シャックスを乗せた馬車は大きな門を通り抜けて都の中へ。


 久々に戻ってきた王都ワンダーアクトは、あまり変わっていないように見えた。


 巨大な枯れ木の内部で生活している人々は活気があり、都は賑わっている。


 今日は市場の日であったため、いくつもの通りに多くの露店が出ており、買い物客で賑わっていた。


 馬車を降りたシャックスは、探索隊メンバーを受け付けているアリーナへと向かう。

 セブンからの紹介状を持っているため、問題はなかった。


 せっかくだからとシャックスは、市場を見て回りながら歩いていった。


 セブンと住んでいた地域より様々な物が高かったが、質は全体的に良かった。


 いくつかの生活用品と護身の武器を購入しながら、シャックスは進んでいく。


 その最中シャックスは、サーズの姿を見つけて隠れる。

 サーズは友人らしき青年と笑っていた。


 近くにシャックスがいるとも知らず、時折り露店を見ながら、冷やかしている。


 たまに因縁をつけたり、クロニカ家の名前を使って、品物をタダ同然でふんだくっていた。


 あまりにも度が過ぎるようであれば、シャックスがこっそり介入しなければならない所だったが、幸いにもサーズ達の興味は長続きしなかった。


 市場巡りに飽きたサーズ達は、通りをそれて、どこかへと言ってしまう。


 シャックスは死んだはずの人間だ。

 そのため、正体を隠すために仮面をつけて歩いていた。


 サーズにバレる心配はないが、シャックスは会いたくなかった。

 人生の中で新しい一歩を踏み出す感情を、踏みにじられたくなかったからだ。




 都の内部は場所によってはかなり人が多かった。

 特に大通りでは歩くのも一苦労だった。


 セブンと一緒に訪れた町や村とは比べ物にならないと、シャックスは思った。

 その中で、掲示板の前に人だかりができているのを見つける。


 探検隊の新聞記事が、都のあちこちに張り出されていた。

 かなり有名な事なのだと知って、シャックスは気合が入る。


 新聞記事の見出しは、だいたいが希望に満ち溢れていた。


「今度こそ大陸踏破へ! 探索メンバー募集中! 一般人でも参加可能!」

「新しい世界の冒険物語が幕を開ける! 現在決まっている推薦者とは!?」

「試験監督には、あの有名な人物も! 今回は踏破確実か!?」


 その中には、サーズの参加に関する内容も書かれていたため、シャックスはため息を吐いた。


 クロニカ家は名家なので、特別扱いでそういった事も時折新聞に載るのだ。




 その後、シャックスはアリーナに向けて歩いていたつもりだったが、道を間違えていた。

 セブンが書いた地図が良く分からない線や記号ばかりだったため、シャックスはそのせいだと判断した。


 地図の隅には子供の落書きのような筆使いで、女性の顔が書かれていた。

 すぐ横にある吹き出しには「がんばれ」と書かれている。


 セブンには絵心がもなかった。前世とまったく同じで。


 一緒に暮らしている間、何度か彼女の絵を見た事があるが、どれも落書きレベルだったのを思い出す。


 旅立つ時に渡された地図を一度チェックしたが、まさかその時は迷子になるとは思わなかったため、書き直させる事はしなかったのだ。


 シャックスは王都で生まれ育ったが、主な行動範囲は王都の隅に立つクロニカ家の屋敷内部と、近くの森だけだった。


 前世の知識もあったが、時がうつり替わりすぎていたため、あてにはならない。


 セブンに申し訳なく思いつつもシャックスは、新しく地図を購入した。


 しかし、現実はシャックスに厳しかった。


 すぐに再び迷子になってしまう。


 一度通りすぎたはずの道に二回辿り着いた時、シャックスは愕然とした。


 落ち込むシャックスに追い打ちをかけるように、黒猫がやってきてシャックスの靴に尿をかけた。


 シャックスは慌てて足をどけたが、少し靴が濡れてしまう。


 黒猫は縁起の悪いものの象徴として有名だった。


 その場を去っていく黒猫を眺めながら、シャックスは疲労感に襲われる。


 新しく購入した地図を眺めながら疲れ果てているシャックスに声をかけたのは、茶色の髪と緑色の瞳の女性だ。


 シャックスと同じくらいの年代の女性だった。


 その女性は屈託のない表情で口を開く。


「あれ、迷子? どこに行きたいの?」


 シャックスはテレパシーの魔法で相手に言葉を伝える。


「アリーナに行きたいんだ」


 女性は驚くが、それ以上魔法について追及しなかった。


「そっか、アリーナね。じゃあ私と同じ。案内してあげるわよ」


 女性の名前は、アーリーという。


「私の名前はアーリー。君は?」

「シャックスだ。よろしく」


 シャックスはアーリーと共に、歩き出した。



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