7話 花園の管理人
イザベラさんたちの背中を見送ったあと私もこの場を後にする。
お店の2階で食事をとってたんだけど、そこに妖精みたいに美しい人がいた。
その人は本を読んでいて絵の中だと言われても頷ける。
「あんなにきれいな人は初めてみたな。」
妖精みたいにきれいな人を横目にそのまま階段をおりてここら辺を探索する。
ここは木に草花にかこまれた穏やかな場所。
お店の前には噴水があって小鳥たちが水浴びをしている。
お店の東側には小道が続いてて、何となく素敵な場所に続いている気がして進んでみる。
色とりどりの花がアーチを作っていてその下を通るといい香りがする。
意外とこの道は長くかったから花を十分堪能できた。
この道を抜けると花園が広がっていた。
初めて見る花がいっぱい植わっている。
赤、青、白、紫、黄色、すべての色の花があるみたい!
海軍基地なのにこんな場所があるんだ。
「あ、ピンクの花もあるんだ。」
可憐な花が1輪咲いている。
この花はなんていう名前なんだろう、家に帰ったら調べてみようかな。
この花に見惚れていると後ろから声がした。
「君、ここで何をしてるんだい?」
「え?」
後ろを振り返ると、私に声をかけてきた同い年くらいの男の子がいた。
「あれ、君はさっきの。」
「あの、ここってもしかして立ち入り禁止だったりしますか?」
「え?いや、立ち入り禁止じゃないけど、一人で来る人はいなかったから気になって声をかけたんだ。
一応僕はここの管理人なんだよ。」
「あ、それでここにいるんですね。」
「ああ、それで君はここで何をしてたんだい?女の子が一人で来るなんて不思議だよ。」
「えっと、先ほどまで忘れ物を届けに来たついでに知り合った人とお食事をして、
そのあとにここを見つけたから、、。」
「なるほど、たしかにここは気になるかもね。
花のアーチの道とか一度とお手見たくなる気持ちもわかるよ。」
「ええ!この先に何が続いているのか気になってついここまできてしまったの。」
「そっか、それで君はカリナだったよね?」
「ええ、あなたはリアムだったよね?」
「ああ、合ってるよ。名前を覚えてもらえるなんて光栄だよ。」
リアムはそういいながら私に握手を求めてきた。
彼は焼けた小麦色の肌に碧緑の瞳をもつ好青年だ。
「初めまして、俺はリアム。海軍だけどここの庭の管理人もしているんだ。」
「私はカリナ、最初に会った時も言ったけど、私の家はレストランをやっているの。
よろしくね。」
「ああ、さっき俺が君に声をかけた時に言ってたね。
たしか、テトラペンタだっけ?」
「ええそうよ、とてもいいところだからぜひ来てね。」
「そういえばそこに大佐たちがお邪魔したって聞いたんだよね。」
「もしかして彼らと知り合いなの?」
「知り合いも何も大佐は俺の上司だからね、よく知ってるよ。
ねえ、もしかして君もそこで働いていたりした?」
「ええ、でも少しだけよ。
帽子をかぶった海軍さんに一度料理を運んだだけ、他は特に何もしてないわ。」
「帽子をかぶった海軍、、もしかしてルイのことか?」
「たしかそんな名前だったような、、。」
「帽子が印象的な大佐の部下と言ったらルイしかいないからな、きっとそいつだな。」
「なんで彼は帽子をかぶっているの?」
「ああ、それはあいつがやけに美しい面をしてるからだよ。
帽子を外した途端女性たちに囲まれてさ、それはすごいんぜ。
だからあいつはああしていつも帽子をかぶってるんだよ、女除けのためにね。」
「そうなのね。」
彼はよほどいいお顔立ちなのね、性格はあまり私は好きではないけど。
「なに?なんかあいつにからかわれた?」
「え?なんで知ってるの?」
「いや、あいつと一緒に行った仲間がさ珍しくルイが上機嫌だったて言っててさ。」
「私は上機嫌どころか気分はよくなかったわ。」
「それじゃルイのことはあまりよく思ってないってこと?」
「まあ、嫌いではないけれどできれば会いたくはないわ。」
リアムの口角が上がった。
「そうか、それはよかった。」
「なんで?私はあなたの仲間が苦手だって言ってるのよ?」
「あいつは確かに同僚だけど仲間とはちょっと違うんだよ。
それに、ライバルは少ない方がいいだろ?」
「ライバルってなんのことよ?」
「おいおい、最初に俺らがあった時、君になんて言ったのか覚えてないの?」
そういえば、可愛いねって声をかけられたような。
「悪いけど今日はここに来るからってお母さんに無理やりおめかしされてるだけでいつもはこんなん
じゃないわよ。」
たしかに今日はおめかししてるからかわいく見えるかもしれないがいつもの私はこんなんではない。
この私を可愛いって好いてもらってもなぜだかあまりうれしくはない。
「へー、じゃあ今日は特別な日ってことだな!
というか最初は確かに顔が可愛いって声をかけけど今はちょっと違うぜ?」
「なにが違うのよ?」
「性格も可愛いってこと!」
「なんだか、遊び人の上等文句な気がするわ。それで何人の女の子を犠牲にしたのかしら。」
「さあ、何人だろうな?でも君が可愛いのは本当だよ?」
うわー、このタイプの人間と関わるのは初めてかもしれない。
「ねえ、そんなにかわいい子が好きなら店で働いているマリンの方がいいと思うわよ。」
「マリン?ああ美人で有名な子か!」
「さすが情報が早いわね。」
美人な子の情報は風よりもはやく届くみたいね。
あまりにも清々しい態度に少し呆れる。
「なあ、でもその子だけじゃなくてもう一人の子も可愛いって聞いたよ。
それって君じゃないの?」
「マリンの他に働いてる女の子は私だけだけど、そんな噂知らないわ。」
「ま、自分のうわさってのは意外と自分ではきづかないじゃん。
というか何でそんなに自分に自信がないわけ?君も十分可愛いよ。」
「しょうがないじゃない、周りを見渡せば顔が整った人しかいないし落ち込むわよ。
はあ、わざわざ言わせるなんてひどい人ですね。」
「ごめんってそんな顔で見ないでよ。」
「そんな顔ってどんな顔よ。」
「チベットスナギツネみたいな。」
「なにそれキツネ?」
初めて聞いた動物だけどあまりいい意味じゃないのは分かる気がする。
「まあまあ、そう怒らないでよ可愛い顔が台無しだよ。」
「うるさい。あ、ねえ、あの花ってなんていう名前なの。」
「怖いなあ。この花はたしか、、、忘れた。」
「ここの管理人なのに忘れるんだ。」
「だからやめっててばその顔。」
「何の顔?」
「チベットスナギツネの顔!」
同じやり取りをもう一回してお互い笑ってしまう。
「あのさ、この花の名前はわからないけどこの庭を管理してる建物に図鑑が置いてあるからそれを
みない?」
「図鑑があるの?ぜひ見たいわ!」
「それなら行こうか、飲み物に美味しいお菓子を特別に出してあげるよ。」
「やった、楽しみね。」
「それって図鑑が?お菓子が?」
「どっちもよ!」
花園を抜けて花のアーチとは反対方向へ歩くと小さな2階建ての小屋があった。
扉を開けるとそこにはドワーフの家みたいだった。
「わ、素敵ね!私こういうの物語の絵でしか見たことない!」
「ええ、ここは埃っぽいだけだとおもうけど。」
「あなたには感性が足りてないわ。」
「感性ね~、ま僕は女の子を口説才能はあるかもね~。」
「残念ながらそれが通用してない人がいるみたいだけど。」
「それは現時点ってだけでしょ、みてなよ気づいたら俺のこと好きになってるから。」
「それは楽しみね、あと何年かかるのかしら。」
「ひどいなあ。あっ、そこの椅子に座ってて、今から図鑑を持ってくるから。」
「はーい、ありがとう。」
リアムはギシギシなる階段を上って行った。
カラフルな光がさし込むなと思っていたら、ステンドグラスがあった。
不思議な生き物が描かれていた。
まるで魚のようだけれど、それとは少し違うような。
あまりにもこの世界の生き物とは違うけれど不思議と怖さはなく惹かれてしまう。
「あったよカリナ、これになら載ってるはずさ。
どうしたんだ?それが気になる?」
「ええ、これってなんていう生き物なの?」
「それは確かカプラって言うんだよ。」
「カプラ?」
「ああ、こことは別の世界にいる生き物で、ここに描かれてるのはたしかカプラの始祖?だったはず。」
「へー、初めて聞いたわ。どうしてこんなものがあるの?」
「前の管理人がこれを作ってたみたいだけどこれが実際何なのか俺にもよくわかんないんだ。」
「それならどうやってこれがカプラって知ったの?」
「それは、ここに残された手帳とか日記に書いてあったんだよ。
俺もこれが何なのか気になってそれらを呼んだんだけど、それがカプラって呼ばれる生き物ってこと
以外はよくわからなかった。」
「そうなんだ。」
不思議、初めて見たのに昔から知っているみたい。
「まあ、その話もこれくらいにして、花の名前を探すんだろう?」
「ええ、そうだったわね。」
「じゃあ、これで探しといてよ。
俺は美味しい紅茶を入れてあげるよ、あとお菓子も用意しなきゃね。」
「ありがとう、図鑑も借りるね。」
「ああどうぞ。」
リアムは棚から茶葉を取り出して紅茶を作り始めた。
私は図鑑を開いてピンクの花を探す。
色で探せるようにもなってるのね、すごいわ。
「なあ、紅茶に砂糖とミルクは入れるか?」
「ええ、入れてほしいな!」
「りょーかい。」
いい香りが部屋に漂う。
図鑑にはピンク色はないみたい。
赤色の花ってことにしたら見つかるかな。
うーん、見つからない。
赤じゃなくて、白色とか?
まったく見つからない、、。
「できたよ、花は見つかった?」
「ありがとうリアム。ううん、残念ながら見つからないわ。」
「そうか、実はここにはそういう花もいくつかあってそれもそのうちの一つかもな。」
「図鑑に載ってないとかあるの?」
「ああ、意外とあるよ。もしかしたその図鑑以外には載ってるかもしれないけど。
わざわざ花の図鑑を買いに行くのもなって、だったらわからずじまいでいいかなって。」
「そうなのね、、。うーん、でもやっぱり気になるわ、本屋さんへ行って見に行こうかしら。」
「わざわざ探しに行くの?すごいな。」
「分からないままってモヤモヤするのよ。」
「俺にはよくわかんないけど、本屋に行くなら俺もついていくよ。」
「え、なんで?」
「だって、俺はここの庭の管理人だし花の形とかも君よりも知ってるぜ?」
「たしかに、、それならいつにする?」
「意外とあっさりと頷くんだね。」
「なに?嫌って言った方がいい?」
「そんなことはないよ!それなら日付を決めようよ。」
「そうね、私は午後ならいつでもいいわ。」
「そっかなら3日後とかはどう?その日は休みなんだ。」
「大丈夫よ、待ち合わせはどうする?」
「噴水の広場は?」
「いいね、そこで待ち合わせね。」
「よかったらそこで昼ごはんも食べようよ、行ってみたい店があるんだ。」
「わかったわ、それじゃ12時くらいに待ち合わせかしら?」
「そうだね、これだともし行けなくなった時不便だからさ連絡先交換しない?」
「やけにスムーズね、手慣れてるわね。」
「そんなんじゃないよ、これ俺のところの電話番号。」
「それじゃ、これは私のところの電話番号ね。」
「まさか最初の出会いから数時間後に連絡先を貰えるなんて。
意外とカリナってちょろい?」
「その電話番号返してもらってもいいのよ?」
「悪かったて、ねえ、そろそろ空が暗くなるけど帰らなくていいの?」
「あ、馬車を呼ばなきゃ!ねえ、電話ってある?」
「あるけど、。」
「借りてもいい?」
「いいよ、ただ昔の電話だから使い方わからないと思うけどって、いうのはいらなかったかな。
ふつーに使えるんだ。」
「一応昔はこれを使ってたからね!」
馬車をお願いしたらあと10分後に来るらしい。
「10分後に来てくれるみたい。」
「そう、それはよかった。10分ならここから門まででちょうどいいかもね、送ってくよ。」
「え、大丈夫よ、迷子にはならないし。」
「そういうことじゃないんだけど、いいから行くよ。」
リアムに背中を押されて小屋を出る。
今度会う日の予定などを確認していたらあっという間に門までついた。
「今日はありがとうリアム、おかげで楽しかったよ。」
「こちらこそありがとうカリナ!俺も楽しかった!また会おう!じゃあね!」
「またね!」
さよならを言うリアムに背中を向けて丁度ついた馬車に乗る。
もう日が傾き始めている、最初は行きたくなかったけど今はとても楽しくて行ってよかったと思う。
「ふわーあ、ちょっと疲れちゃった。」
家に着くまで寝ちゃおう。
行きよりも重い瞼を閉じる。
海の音が遠くなった。




