第九幕・その歌に、万雷のような喝采を
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………前回、大劇場の中で異形のアルラウネと対峙した四人。
果たして彼らはこのアルラウネを前に、どう立ち向かっていくのでしょうか………?
「なっ………何なのよ、これぇ!?」
その異形に真っ先に叫び声を上げたのは、親である筈のブルーローズでした。
「何って………君がしたのだろう!?」
「知んないわよ!何、どうなってんのよぉ!?」
どうやら何が何だか、彼女にも分かっていないようです。四人も困惑していましたが、その内ココルとハック様はひとまずどうにかすべきと考え、臨戦体制を取りました。
「と、とにかく………やっつけよう!」
「うむ、それしか無いな!我が国の音楽、返して貰うぞ………怪物!」
「ちょ、ちょっと待ってよ!無策で突っ込んでも………」
そんな二人をユースケは制止しましたが、二人は聞く耳を持ちません。
「やぁぁーっ!」
「いざぁぁぁっ!」
正面から突っ込んでいく二人。しかしそれを、巨大な蔦が阻みます。
「ビギュァァァァァア!!」
「うぎゃっ!」
「がはっ!」
咆哮と共に振るわれる蔦は、座席を薙ぎ払いながらいとも容易く二人の体を吹き飛ばします。その威力は、さっき戦ったアルラウネのそれとは比較にもなりません。
「うぅ………つ、強い………!」
「な、何ということだ………まさか、これ程とは………!」
あまりに強烈な一撃に、二人は立ち上がることができません。そんな二人を追撃するかのように、アルラウネは蔦を更に激しく振り回します。そこには、何の見境もありませんでした。
「ぐはっ!」
「があっ!」
「うわっ!」
「きゃあっ!」
「あうっ………!」
その激しい猛攻に二人のみならずユースケやゼラニウム、更にはブルーローズまでもが大ホールの入り口まで吹き飛ばされてしまいました。
「う………な、何で………アルラウネは、親を攻撃しない筈なのに………」
「ぼ、暴走………してるんだ………理屈は分からないけど、あの歯車を食べたせいで………」
「うぅ………どうしよう、強過ぎるよ………」
「い、一度退くか………?外で待機している我が兵達を全員連れて来れば、或いは………」
「そ、そうするべき………ですね。なら、ここは………」
「だ、駄目………です………」
助けを呼ぶ為、撤退を考えたユースケとハック様。それに待ったをかけたのは、ゼラニウムでした。
「あの、アルラウネは………大き、すぎます………だから、きっと………外は、ここ以上に………」
「何………?ま、まさか!?」
「………ええ、その子の言う通りよ」
「ブ、ブルーローズ………どう言う、こと………?」
「親だから、分かるの。あの子………餌を求めて、国中に根っこを広げてる。つまり、今は………」
「………兵達は、暴れ回る根から国民を守らねばならない。連れて来れる戦力は居ない、か………」
「でも、どうしよう………?僕達だけで、どうやったらあんなのを倒せるのかな………ユースケ、何かある?」
ココルは縋るように、ユースケに問いかけます。しかしユースケは苦い顔で、首を横に振りました。
「いや………駄目だ、思いつかない。僕に思いつくのは、奴をこの大劇場ごと燃やすことくらいだ………」
「な、何と………いや、しかしこうなってはそれもやむなしか………?」
四人の間に諦めの空気が漂い始めたその時、一人の少女が突然その場に立ち上がりました。
「………私が、何とかしてみるわ」
「………ろ、ローズちゃん………?」
「元はと言えば、私の責任だもの。親である私なら、もしかしたら攻撃されずに近づけるかもしれないし………最悪、殺されたとしても親が死ねば子であるアルラウネは元の無害な花に戻る筈よ」
「そ、そんな………駄目、駄目だよ!」
「………ゴメンね、ゼラ。貴女の言う通りにしておけば、こんなことにはならなかった。
自分達の勝手な欲の為に、流され易い貴女を利用して………挙句の果て、こんな迷惑をかけて。本当、馬鹿なことをしたわ。
だからこれは………その、罰なの。罪を犯したら、罰はきちんと受けなくちゃね」
そう言って、ブルーローズは寂しげに笑いました。
「気にしなくて良いわ。それに………こんな最期なら、格好良いじゃない?誰かの為に命を捨てる、なんてさ」
「そんな、そんなの………」
「〜〜〜っ、巫山戯るなぁ!」
責任を取る為、死を選ぼうとする………そんなブルーローズを呼び止める、強い怒声がホールに響き渡りました。
「………えっ?」
「巫山戯るな………巫山戯るでないぞ、少女よ!」
怒声の主は、ハック様でした。ハック様は表情から怒りを露わにし、叫びます。
「死など、償いでも何でもない!責任として死を選ぶなど、愚か者のすることだ!
仮に君が死んでも、救われる者は一人もいない!壊れたものは直らないし、失われた命は回帰しない!残るのは、宙吊りになった怒りと悲しみだけだ!」
「っ………」
「死んで責任を取ろうとするな!生きて、罰を受け続けろ!それこそが、真に責任を取るという事だ!
国主として、この私が君に罰を言い渡す―――」
責め立てるように言葉を投げ―――、最後に、ハック様は言いました。
「―――歌え、少女よ!」
「………は、えっ?」
「君への罰は、歌う事だ!
戦い、命を落とした英霊達に!苦しみ傷ついた、国民達の心に!その歌で、癒しを届け続けよ!
故に、死ぬことは許さん!その名の通り、青薔薇の花言葉を捧ぐに相応しい君の歌声を永遠に奪うことなど………神が許しても、このハック・シューが許可しない!」
強い意志のこもった、ハック様の言葉。それを聞いたブルーローズは、静かに涙を流し始めました。
「そ……そんな、ことで………私は、こんな………」
「………良い。誰にも、文句は言わせん。無論、君自身にもだ。恨むのであれば、このような私情に偏った判決をこの私に下させた自身の歌声を恨め。
………さぁ、それでは早速仕事だ、ブルーローズ君。これより最期の時を迎えるこの劇場に、麗しき鎮魂歌を響かせよ!」
「そ、それって―――」
「うむ、ユースケ君よ!君の策を採用する!この劇場諸共―――奴を、焼き尽くすのだ!執事、火を!」
「………かしこまりました、我が主」
どこからか現れた執事はハック様の命令を聞き、すぐさまどこかへ去って行きました。その背を振り返ることなく、ハック様はブルーローズへと視線を移します。
「さぁ………盛大に頼むぞ、ブルーローズ君」
「………えぇ、それが私の責任なら………やるわ」
すぅ、と息を吸って。ブルーローズは穏やかに、そして寂しげに………歌を、奏で始めました。
「…………♪………………♪……♪…………♪………♪」
心地良い音色に状況も忘れ、その場にいた皆が聴き惚れます。そして、それは―――
「………ぁ、アルラウネが………」
それは、アルラウネも同じでした。その歌声に聴き惚れるかのように動きを止め、静かに目を閉じています。
「今なら………と思ったが、止めておこう。この瞬間に不意打ちなど、無粋と言うものだ」
その場にいた誰もが、その歌声に聴き惚れ………そしてその声はアルラウネの根を通し、国中へ広がって行きます。
「………何だ………?突然、止まった………?」
「何だろう、この声………歌?」
「うん………なんだか、凄く………」
「「「………綺麗だ―――」」」
国中に歌声が響く中、遂に執事からハック様へと火の着いた松明が届けられます。それを手に、ハック様は言いました。
「………さらばだ、カッサイ大劇場よ。いつかの未来で、また―――この歌を、響かせてくれ」
投げられた松明の火は瞬く間に燃え広がり、アルラウネにも火が着きます。
しかしアルラウネは抵抗することなく、静かに炭となって燃え落ちて行きます。
その姿はまるで、眠りに落ちる幼子のようでした。
「………おやすみ、アルラウネ」
歌を止め、ブルーローズがそっと呟きました。そして、その声に応えるように。
「………ピィ」
アルラウネが、小さな声で鳴きました。その声はどこか楽しげで、しかしどこか寂しげで―――
「………何だろうね、この気持ち」
「分かんない………けど、なんだか」
聞いていた者達を、不思議な感覚が包みました。それは大劇場が燃え尽きて、その残骸に捧げられた鎮魂歌の美しさに万雷のような喝采が届けられた後も………消えることは、ありませんでした。
皆様どうも、作者の紅月です。
ご報告なんですが、こちらの作品の投稿頻度を少し下げます。具体的には週2くらいに。
理由として、まぁ私事ですがモチベが完全に消えた………もとい、現在連載中のもう一つの作品に持って行かれたんですよね。はい。
そのせいで書けなくなっちゃったので、頻度を一旦落とすことにしました。
なので、今後は投稿を毎週水曜日・日曜日の同じ時間帯に固定しようかなと思います。ご了承ください。




