3話 メッセージアプリで告白
夕方の教室。
ぽつんと佇んでいるのはわたしこと鈴本伶奈という。
真っ赤な太陽が一階の西の窓から差し込んでくる。正直わたしの目に染みてくる。
美化委員の活動で遅くなってしまった。
月に一回、学校の中と周りのゴミを拾わなければならない。自分たちの学んでいる場所を大切に使いましょうということらしい。結構ゴミが落ちていて、ポイ捨てしなければ拾わなくても良いのになあと思わないでも無い。でも、きれいになっていく瞬間を見るのは好きだ。
「寂しい…………」
この感情を分け与えられる仲間がいない。
みんな部活とか、用があるとかで珍しく早めに帰ってしまった。
まあ、だらだらと学校に残っていると、ゴミ拾いの手伝いをやらないといけない雰囲気になるのだから分からないでも無い。
「でも寂しい…………」
ぽーんと、メッセージアプリからメッセージが送られてきた。
誰だろう。
この孤独感を紛らわせられるなら、誰だった構わない。
「吉竹くんからだ」
結構仲の良い男子。
少し――その。ごにょごにょ。
卓球部に入っていて、もしかしたらちょうど部活が終わったのかも知れない。
すっごい鬼タイミングに、彼が神様か何かに見えた。
『いまなにしてるの?』
『委員会が終わって帰ろうかと思ってたとこ』
『俺も部活が終わったところだよ』
『誰もいなくてさびしーよー!』
『……がんば!』
応援された。
もっと優しい言葉を書けて欲しい。慰めて欲しい。
構って構ってとめんどくさくだる絡みしてしまいそうになる。
『まだ教室に居るの?』
『うん。吉竹くんは教室に戻ってくるの?』
『ううん。荷物は部活先に持ってきてるから』
それから化学の先生の数の数え方がおもしろいよねーとか、他愛もないやり取りを繰り返す。
『実はさ、鈴本に言いたいことがあってさ』
『いきなりどした?』
『他には誰もいないんだよな?』
『そうだけど……』
なんか怖いことを言い始めた。
これ、もしかしていきなり後ろから出てきて「わっ」とするやつじゃない。
こないだ同じクラスのやつにやられて心臓が飛び出るかと思った。わたしはそーゆーびっくり系が大の苦手なのだ。
「ちょっと、驚かせたりしないよ、ね……?」
ホラーでパニックな展開を予想してざわざわする。
流石に吉竹くんはそのようなことをしない奴だと信じたかった。
「は、はやく帰ろうかな……?」
ぽろんとメッセージが届く。
こここ、これ知ってる!
ススス、スマホを題材にしたホラー映画の展開だ!
わたしはこわごわとしながらアプリを開く。そこに書かれていた文字は……。
『窓の外を見て』
なんでそんな的確にわたしの心臓をびっくりさせるような言葉を選べるな。
きゅっと、目をつぶり、ぎゅっと、スカートの裾を握り、怖々としながら、わたしは窓の方向に顔を向ける。そしてゆっくり、ゆっくりと目を開いた。
そこには吉竹くんがすっと立っていて、何か紙のようなものを掲げていた。
「もう、メッセージで送ってくればいいじゃん!」
「ずっと残ったら恥ずかしいだろ!?」
吉竹くんは『好きだ!』と書かれた紙を持って教室の窓の外に立っている。
驚き半分、安心半分。
そしてかーっと熱くなってくるような感情がわき上がってくる。
「取り消しも出来るじゃん!」
「ばっか! 消したくないからこうしているんじゃないか!」
「――――うん」
お互いの顔が真っ赤になっているのは、きっと、夕日のせい。
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