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22話 雪だるま

こんんちは。

暑くなってきましたが、冬のお話です。

「雪だるまを作ろう!」


 突然のことにぼくこと、吉竹冬樹よしたけふゆきはびっくりした。

 窓の外に同じクラスで昔から近所に住んでいる白川しらかわみなえちゃんが立っていたからだ。ちょっとしたホラーシーンみたいだ。


「急にどうしたの?」

「ほら、こんなに雪が積もったから。せっかくだから!」

「まだ着替えていないんだけど……」

「はりーあっぷ!」

「はーい」


 思いついたことを思いついたままにする子だけれども。ふう、とぼくは息を吐いた。

 たしかにこの辺りでは珍しい。こんなに雪が降り積もるなんて記憶に無い。

 外から見える景色はまっしろで、まるで自分の家の周りじゃないみたい。家族で行ったスキー場ほどではないけれど、それでも十分すぎるほどだった。


 ぼくは段々とわくわくしてきて、いそいそと服を着替える。

 そのままぱっと外へ出ると、もこもこの服を着たみなえちゃんが、不思議な笑顔をうかべていた。漫画の擬音にすると、にたりって感じの。


「フユは胴体作って。わたしは頭作るから」

「いいよ。すっごいでっかいの作るね」

「いっひっひ、フユもやる気があるじゃない」


 ゴロゴロと小さなかたまりを転がしながら雪玉を作り始める。

 最初のうちうまく固まらずぽろぽろと崩れてしまったのだけれども。ちょっとずつ雪を集めていってそれから転がしていけば玉になっていった。はじめから転がそうとしたのが失敗だった。

 ぼくが順調に雪玉を大きくしていったとき、みなえちゃんはどのくらい出来たのかと見てみると。


「うわぁ、ぼくよりでっかい」

「あ、手が止まっているよ」

「ちょっと、それ頭にしたら大きくない。それじゃあ、持ち上げるのが大変だよ」

「それもそうね。じゃあ、フユの雪玉を頭にしましょう」

「う、うん」


 胴体を作っていたはずがいつの間にか頭になってしまった。

 それはいいけど。

 ぼくたちは雪玉の形

 を整えより丸くしてから、


「「せーの」」


 二つの雪玉を合体させた。

 それから顔を描いたり、自分たちの手袋で手を作ったり、うちの猫くらいしか入れないかまくらを作ったり。

 雪だるまはちょっと不格好だけれども、良い顔つきをしているように見える。


「いろいろなの作ったね」

「ちょっと疲れたよ」

「数日で消えちゃうんだよね」

「でも、思い出には残るじゃん」

「うわぁ、フユのくせにちょっと良いこと言ってる」

「ひどい。みなえちゃんのその言葉にぼくは傷ついたよ」

「ごめん」

「う、うん」


 ぼーっとその作った物を眺める。

 あれからもう一個作った雪だるまを隣に置いた。

 両方とも不格好で、バランスが悪いせいで、ちょっと片寄ってしまったけれども、どこか寄り添っているように見えた。ふと、隣のみなえちゃんがスゴク気になった。

 みなえちゃんもおんなじ気持ちなのか、ぼくのことをちらちらと見ていて、そのとき、ふっと、お互いの手が当たってしまったんだ。


「…………」

「…………」


 ぼくたちは何も言わずに手を繋いだ。

 ふたりとも、きんきんに手が冷えていて、まったく暖はとれなかったけれども、どこか、とても暖かかった気がする――――

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