21話 めんどうなイベント
「テーマは環境問題と動物です」
中学校の授業。
先生の言葉にわたしこと青木千夏は重々しくうなだれた。
昨今問題になっている環境問題を自分たちなりに調べて発表するということだ。
席順で四人一組の班になって、まずはテーマを話し合い、それから図書室でそれらのことを調べる。時間は今日を含めてもう一限ある。
「何のテーマにする?」
「好きな動物でも言う?」
「じゃあ猫」
「じゃあ犬」
「まじめに考えて!」
こういうときに佐伯さんみたいに仕切ってくる人がいると助かる。
正直、こーゆー小難しいことはわたしには無理なのだ。考えれば考えるほど熱っぽくなって、知恵熱でも出てきそうだ。わたしはあまり頭が良くないのだ。
すでにくらくらとしてきた――気分になった――のだから気の持ちようというのはばかにならない。自分でも無意識にぽつりと。
「ウミガメとか」
なんて言葉が出た。
「それ良いんじゃない。海洋プラスチックっが問題になっているって聞いたことがあるし。採用。別のテーマが良い人いる?」
「さんせー」
「俺もそれがいいべ」
「じゃあ、図書館行こっか」
「ういーす」
「はーい」
みんな同意する。
そしてわたしたちが図書館へと移動している最中。何故か神原拓也くんが妙にウキウキしているように見えた。
「なんか楽しそうだね」
「うん。楽しい」
こんな小難しいことが楽しいだなんて。すごくすごいなーって思う。
この学校の図書館は結構でかい。そして本好きの図書委員や教員などが集まっているらしく、本のラインナップがかなり充実している。一般文芸からライトノベル。あとは誰が読むんだよという専門書などが置いてあって、正直、それぞれの趣味で増やしているに違いない。
他の班もすでに調べているようで。
わたしたちもとりあえず各々がウミガメをテーマにした新聞記事とか実用書とかを調べることになった。それをまとめて発表しようということになったのだ。
正直気が重い。
賢くないわたしに賢そうな内容というのがあまりあっていないのだ。こんな重たくて難しそうなテーマだなんて頭からもくもくと煙が出てきて発火して、しまいには図書館を火事にするに違いない。わたしが本に這いつくばるように読んでいると、同じ班の神原君が何冊か本を抱えてやって来た。
わたしが死にそうな顔をしているのに対して、彼の顔は実ににこやかである。
いったいなにがそんなに楽しいのだろうか。
それがあまりにも気になって調べ物にも手が付けられなくなりそうで、わたしは彼に尋ねたのだった。
「楽しそうだね」
「うん。青木さんと一緒に出来てすごく楽しい」
屈託のない笑顔でそう言い切ったのだった。
ちょっとだけ、この授業が前向きに出来る気がした。