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18話 告白してない

「ねぇ、和美と近藤くんって一年のときから付き合ってるけど、切っ掛けとかなんだったの?」


 ファミレスでのこと。

 突然友人がそんなことを聞いてくるのだから、わたしは口からメロンソーダを吹き出しそうになった。


「なんだと言われても」

「特別なこととかないし」


 わたしこと山岡和美やまおかかずみと彼こと近藤恭哉こんどうきょうやは困惑した。

 中学一年生のときからずっとクラスが一緒で。なんだか変な腐れ縁みたいになって。

 中学校のときはそれほどでもなかったけど、高校までも一緒になって、他のメンバーと一緒に遊んでいたりしたら、なんとなくそうなっただけで。


 それをわたしと彼とでしどろもどろに説明すると、あんまり納得がいってないようだった。


「後学のために教えて欲しいの!」

「そうだ、俺にも付き合う秘訣とか教えてくれよ」

「そんなこと言われても」


 昨今は草食化が進んでいるとかネットニュースで騒がれていたりするけれど、他人の恋愛に対してはこんなにも関心が高いのはいったいなんなのか。


「恭哉は覚えてる?」

「いや、覚えてない」

「わたしは、ただ、馴れ初めが、知りたいって、言っているんだよ!!」

「そんなに力一杯言わなくても」


 言葉の端々に力が込められていて、ちょっと怖い。

 そしていちいちあゆむの言葉に頷いている相沢はいったいなんなのか。うっとうしいことこのうえない。


「馴れ初めっていってもねぇ」

「そうそう。気づいたら付き合うかってなってたし」

「なにそれ。意味わかんない」

「そうだ、意味がわかんないぞ」


 あまりのしつこさにわたしはこめかみを押さえる。

 これは説明しないと終わりそうにない気配だ。


「だからね、切っ掛けってほどのものはないんだよね」

「こうちょっとそんな雰囲気になったときに、お互いいると楽しいし付き合うかって感じで、特にどっちかが告白したとかそんなんじゃないんだ」


 そう言うと、あゆむと相沢が変な顔をした。

 雷が落ちたというか、衝撃で目が点になったというか、漫画の効果音で表すなら『ズガーン』とか後ろに書いてありそう。あちら二人は顔を合わせると「そういうことってあるの」「知らない」「すげえ」「すげえ」

 なんだか頭まで痛くなってきた。


「じゃあさ、改めて告白するっていうのはどうかな」

「どうかなじゃねーよ」


 真面目な顔でとんでもないことをぶっ込んでくるあゆむにわたしは思わず突っ込んだ。


「結構ずかずかとお互い言いたいこと言い合っているじゃん」

「えーいやだよ」

「ほら、お互いの気持ちを改めて確かめる的なさ」

「そうだそうだ」

「相沢は黙ってて」

「はい。すんません」

「まあ、言ってなかったし、いいんじゃない?」

「恭哉……!? 本気!?」

「うん」


 なんて、お互いの顔を見合わせると、お互いがなんだかそわそわとし始めた。

 こう、背中辺りがむずがゆくなってきて、段々と恥ずかしくなってきた。

 ヤバイ。ハズイ。

 見合ってから何もいえずにいると。


「付き合って一年も経っているのに、なんでそんな付き合いたてみたいな反応をするんだよ!?」

「見ているこっちまで恥ずかしくなってきちゃった」


 なんて勝手なことを言ってきやがる。

 その日の帰り道。

 ファミレスのことはうやむやになったのだけれど、恭哉が突然口を開く。


「なあ和美」

「なに」

「好きだ」

「…………わたしも好きだよ」


 なんて、顔を真っ赤にしながら帰ったのだった。

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