ふぁ〜すトゲ〜む(6)
「というかお互いの能力もわかった事だし終わらねーか。」
「俺の能力わかったのか?」
「いや、お前じゃない女の方だ。こいつは有名だからな。だよな、超人気国民的アイドルの古巻時織さん」
そう言いながら及位はアプリに入力した。
なるほど。こいつが勝てない理由はこれか。
「あはは〜バレちゃったか。あ、功八君、別に隠してたわけじゃないからね!?さっき言おうとしたんだよ!?」
「わかってる。お前が勝てない理由も理解した。」
「そっかそっか、ごめんね、勝ち目なくて。」
こいつ……。プロなだけあるな。
「早く入力を済ましてくれ。」
「じゃあ、終わるか。」
俺はアプリを起動して及位の名前と能力を入力する。
入力者:神代功八
対戦相手:及位陽心
対戦相手の能力:他人の心を消す
俺が入力し終わると及位は既に入力していたため、しばらくすると仮想空間から現実世界に意識が戻る。
俺の勝ちだ。いや、古巻時織、こいつの勝ちだな。
「ピコッ」
俺のマイクロチップと隣から通知音が聞こえた。
アプリを開くと2.5ポイントの表示があった。
「功八君!!見て!!1ポイント入ってる!!」
「お前の力だろ。大した演技力だ。」
「あ、れ、?バレてた??」
「バレバレだ。満足するのは俺を騙してからにしろ。」
「厳しい……」
「時間が無い。あと1ポイント取らないといけないんだ。次行くぞ。」
「う、うん!!」
俺と時織は敵を探しにB地区の中央に向かって歩き出した。
「そういえばお前、女優としての活動はどれくらいだ?」
「うーん、アイドルやりながら女優やってたからなー。でもね、地上波のドラマとかにも結構出てたんだよ?」
「それって凄いのか…?」
「地上波出るのってめっちゃ大変なんだよ!?」
「そうなのか……。ちなみにお前の能力は何だと認知されてるんだ?」
「私誰にも言ってないんだよ?でもね、なんか音程1回も外さないから声を操るとか音を操るとか言われてたんだよね…。私めっちゃ練習して外さないようにしてるだけなのに。」
「なるほどな。」
「反応薄っ!?」
「あいつでいいか?対戦相手」
「あ、うん。えっ!?ひっ!」
「ん?どうした、あいつだとなんか不都合があるか?」
「いや、なんでもないよ、大丈夫!」
「体、震えてんぞ。何かあんだろ。戦ってからなんかある方が困る。」
「うっっ……。じ、実は、あの人と私毎回戦ってて、毎回あの人のせいで繰り返すことに……。」
「あいつの能力、わかるか?」
「超パワー」
「で、なんでお前は怯えてる?」
「あ、あの人が……。」
今までとは明らかに様子が違っていた。つくり笑顔すらできない、うちにある恐怖を隠しきれない、そんな様子だった。
「ゆっくりでいい、話せ。あいつはお前に何をした。」
「わ、私のことをっ、の、能力使って殴って…それで、えっと……それで……。」
「ピコッ」
通知が来た。
「悪い、メッセージを確認させてくれ。」
2月22日3:48
送信者:神
件名:あトぢょッと
くリあシャ950人、あト50人でぇ〜ス
ゲームスタートが2:32でそこから1時間16分で950人か。
単純計算でいけばあと4分でゲームが終わる。もちろん今残ってるヤツらの知能を考慮すればもう少し時間はあるだろうが。やむを得ないか。
「悪い、俺が今からすることを許してくれ、必ずお前を守るしクリアもさせてやるから。」
「い、功八君……?」
俺は時織の腕を引っ張って目の前の男と握手をさせた。
すると、俺らの意識は仮想空間に飛ばされる。
「ちょっとちょっとタイムリミットが迫ってきたからって強引すぎじゃない?いきなり僕の腕掴んで握手させて勝手に対戦相手にしちゃってさあ。」
「でもあなたはさっきから俺らの方見てましたよね。俺らと戦う気満々だったんじゃないですか?勝負していただけますね?」
「はいはい分かった分かった。僕の名前は等々力迅翔。君は?」
「俺は神代功八、こいつは」
「古巻時織。聞いてない聞いてない。僕は君は?って聞いたんだよ。君さ、一応急いでるならそういう無駄な時間無くした方がいいよ?」
「そうだな。じゃあ終わるか。」
俺はアプリに等々力の能力を入力した。
入力者:神代功八
対戦相手:等々力迅翔
対戦相手の能力:超パワー
「ええっ!もう終わるの?」
「ああ、もう入力も終わった。」
「でもさ、知ってた?このゲームって話す時間が5分、入力する時間が5分最大で10分かかるんだよね。つまりさ残り人数が50人の今10分たって現実世界に戻ったところでゲームは終わってるんだよね。」
「それ即ちお前もゲームをクリアすることはできないということになる。」
「あ、僕?僕はね、どっちにしろクリア出来ないから大丈夫!」
こいつ、やっかいだな。