ふぁ〜すトゲ〜む(4)
俺はゲーム開始前を思い出す。
「伊集院以外でめぼしい能力者はいないか……」
伊集院とはマイクロチップを連携させているため連絡を取れるようになっている。別れた後にメッセージでやり取りをすることが出来たため、ゲーム中でも連絡をすることは可能なようだ。
俺は今使えそうな能力者を探している。超パワーなどの能力も場合によっては使えなくもない。だが利用価値は能力の持ち主しだいだ。
俺はB地区の端に向かって歩き出した。
クリアをした場合でもヘルプをし2ポイントを下回れば脱落。ちなみにクリアした時にヘルプをしないを選択するとクリア者の部屋に連れていかれるらしい。ヘルプをするを選択するとヘルプの細かいルールが表示される。ゲーム前に説明された内容がほとんどだが。
このゲームの面白いところはヘルプをするを選択してもクリアに必要なポイントは変わらないし、ヘルプをする人を勝手に指定される訳でもない。つまりヘルプをするを選択してヘルプを行わなくてもクリア出来るというところだろう。周りのこの先敵になりうる者たちを観察するも良し、暇つぶしに使うも良し、仲間を増やすも良し、このヘルプをどう利用しても良いということだ。
少し歩くとB地区の端に着いた。最初にいたのがB地区の中心だからB地区の端から端までの距離は約4km。中心には建物が沢山あり発展していたが、こっちはあまり建物もないな。
B地区の端にはなんとも分かりやすくカラーコーンが置いてあった。隣のA地区に手を伸ばすと透明なバリケードがあり主催者が言っていたようにB地区から出られないようになっていた。俺は違和感を感じた。だが確証はない。1度その違和感はおいておくことにした。
俺は進行方向を90°変えてB地区の端に沿ってまた歩き出した。ゲーム説明がB地区中央のため、はじめから参加者のほとんどが中心にいたからやはり端には人はいないな。
少しすると目の前にもカラーコーンが。さらに目の前には砂浜そして海が広がっていた。しかしバリケードで砂浜に足を踏み入れることは出来ない。そして横に手を伸ばしてもバリケード。今までこのバリケードに沿って歩いてきたんだから当たり前だが。
Wの後、区画整理がされ、今では地区区分は碁盤の目のようになっている。長方形ではあるが。B地区は一辺が約4kmもう一辺が約2km面積約8km²であることがわかった。B地区中央に戻るための最短距離は対角線が2√5kmだから√5km。2kmちょっとだな。俺は走って中心に戻る。
約1km走ったところで俺と同じくらいの年齢と思われる人間を見つけた。周りに他の人間はいない。クリア者のマークもついていない。俺は声をかけようと近づいた。すると足音に気づいたのか目の前の女は振り向いた。明らかに顔色が悪い。こいつは確か、ゲーム開始前にいたな。能力の検討がつかなかったから使えるか判断しかねたやつだな。
「なぜここにいる。」
「あ、あの…………」
沈黙の時間が流れる。
「…………」
女は後ろを向いた。
「…………」
ただ、後ろを向いただけ。どこかへ行くでもなく。
「なぜここにいる。」
女はまた振り向いた。今度は微笑んで。
「いや、なんでもないよ!中心は人が多すぎるからさ、ちょっと歩いてたら誰もいないとこまで来ちゃった。君こそ、どうしてここに?」
「俺はもうこのゲームはクリアしたからな。ヘルプをしようと思って相手を探していたんだ。」
「誰もいないところで?」
「お前はいたけどな。」
「うぅっ…確かに。でも私は必要ないかな。自分でなんとかするよ!」
「そんな顔色悪いのにか。ゲーム開始前はそんなに顔色悪くなかっただろ。声も震えてるぞ。」
「え、そうかな?私は全然元気だよ!元から肌は白い方だったんだよね。君がゲーム始まる前に見たのは別の人だったんじゃない?」
「そういう演技いらねぇ。俺を騙すことはそんなに簡単じゃねぇよ。」
俺は目の前の何かに怯えたような目の持ち主の額に手を伸ばす。
「わっ!」
「熱はないな。」
「元気だからね……」
「肉体的には元気かもな。お前今何ポイントだ。」
「お恥ずかしながらまだ0ポイントでして……」
「そうか。お前、能力は?」
「え、いや、え?」
「能力は?」
「流石に教えられないよ……。敵になるかもだし。」
「対戦は両者の合意の元行われる。そのための握手だろ。お前が合意しない限り俺が対戦相手になることはない。それに俺はもう既にこのゲームをクリアしている。誰かに聞かれる可能性もある。今からマイクロチップを連携させる。そこに送ってくれ。」
「れ、連携!……分かったよ……でもたいした能力じゃないよ?」
「ああ、期待はしていない。」
「失礼だなぁ……」
俺と女はマイクロチップを連携させる。
「ピコッ」
届いたメッセージを表示する。
2月22日3:15
送信者:古巻 時織
件名:能力
私の能力は、『タイムリープ』