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生徒会、ないしょの欠員1  作者: キュー山はちお
1章 53ページ目までに仲間にならないと心配
1/41

1章の1 ぎゃふん(1)

(新しい学校の校歌って、元いた高校の校歌と同じかな? 調べておけばよかったな・・・)

 4月8日、少し肌寒い朝。ひとりの高校生男子が考え事をしながら、バイク(国産、黄緑色フルカウル、並列2気筒エンジン、排気量398cc、父親のお下がり)を走らせていた。男子生徒は2年生となるこの日、隣の県にある泥縄第一高校から、こちらの県の系列校・泥縄第二高校へ転校することになっていた。

 転校する先の校歌が元の学校と同じなどということは、盗作でもない限り、通常ない。しかしこの生徒の場合は、本来は学校ごとにいろんなカラーが出るはずの「制服」「カリキュラム」などが系列の両校で安易に共通化されているのを見知っていて、そんな思いにとらわれたのだ。

(もし同じ校歌なら、オレが系列校から来たと知られる前の始業式でいきなり歌って、クラスメイトをびっくりさせられる)

 生徒は、新しい学校で自分が受け入れられる助けになればと、受けそうなネタをいじましく仕込むのに余念がなかった。

 彼の名はスシ。漢字で書くと「主士」となってある程度かっこいいのだが、「寿司」のような発音はいかんともしがたく、彼が人前で進んで名乗るのはまれだった。

(そりゃそうだよ。ここまでの名前だと、いじるなという方が無理だから)

 それゆえスシは、転校先では自分の名前が一般生徒にあまり広まらず、知っている人だけが知っているとなればいい、と考えていた。

 スシは初めて走る道なのに、調子に乗っているのか、バイクを結構とばしていた。スロットルをついつい開けてしまうのは、新天地での生活が素晴らしいものになるかという期待が、彼を高ぶらせていたからだろう。

 学校まで残り1キロになると、道はけっこう細くなり、歩道がなくなった。学校へ向かって歩く生徒もちらほらと現れたので、スシはバイクのスピードを落とした。

 左前方に、後ろから見て体が大部分隠れるような、登山用かというリュックを背負った女生徒が歩いているのが見えた。

(? すごい荷物。大変そう・・・)

 スシはバイクをさらにゆっくり走らせ、女生徒をじっくり見てしまった。女生徒の後ろからだったからいいようなものの、正面からこんなにじろじろ見てたら怒られるだろう。スシはそのくらい女生徒が気になっていた。

 大きなリュックに隠されて、スシが女生徒についてわかることは少なかった。

(・・・。どんな人だろう・・・)

 スシは、女生徒の横をすり抜ける時に、バックミラーでお顔を拝見できたらいいなと思っていた。スシが注意深く進んで、女生徒が隣に来そうになった時。


 女生徒はいきなりスシの方を振り返り、タクシーを拾うように手を上げた。


 スシはとっさにバイクを止めた。

「あっ!」

 女子生徒は、スシの期待にたがわぬ美少女だった。女生徒がスシに話しかけた。

「あの、もしかして、あなたは転校生の方ですか?」

「はい、そうですけど。よくわかりましたね」

「なんとなく、そうかなって」

「それで、オレに何か用ですかね? 用とかあると、うれしいですけどね」

「あの、バイクでこっちの道から学校へ行こうとすると、途中で向こう側からの一方通行になって通れないんです。別の道に回った方がいいですよ」

「そうなのか。来る前に地図で調べたけど、細かいところは、なかなかわからないからなあ。いやあ、教えてくれてありがとうございます」

 スシは小学校と中学校で1回ずつ転校していて、今回が3回目という「転校のベテラン」だが、教室で紹介してもらう前から女生徒にこんなに親切にされたことはなく、感激した。

 女生徒は、うやうやしくスシに名刺を差し出した。

「わたしは前期生徒会執行部で副会長をさせてもらっている、マヤという者です」

「ああ、これはこれは。すみません、でもオレ、社会人の営業の人とかでないので、名刺持ってません。交換できなくてすみません」

「いえいえ、お気になさらないで。わたしマヤは2年です」

「オレも2年の・・・」

「・・・。2年の? ・・・? ・・・?」

 マヤはスシを正面からまじまじと見た。スシの次の言葉を激しく期待しているようだった。スシはどきっとして、マヤをまじまじと見返した。

 マヤの身長はスシと同じ169センチ程度で、女子として高い方か。髪形はロングのストレート、前髪は七三分け。制服のスカート丈や白のソックスは標準だが、その容姿と胸は標準を超越している。靴は女子がよく履くローファー。メゾソプラノのきれいな声をしている。

 マヤはなお、スシを見つめ続けている。

「あの・・・」

「そうですね。せっかくマヤさんに名刺をいただいて、名乗ってもらっているのに。こっちは名乗らないとか、ないですよね」

「何か、名乗るのがいやな事情がおありとか? それなら無理に聞いたりしません」

「いえ。確かにオレは2年の転校生」

 スシは名乗る前に、またためた。

 マヤは真っ直ぐな瞳をスシに向けた。

「そしてあなたのお名前は?」

 スシは、マヤがなぜ自分の名前にここまで興味きょうみ津津しんしんなのか謎だった。しかしマヤがいい人そうなので、きちんと名乗ろうと決意した。

「オレ、スシといいます」

「スシくん。いいお名前ですね」

 予想外のマヤの反応に、スシは面食らった。

「いえ、あの、マヤさん」

「はい?」

「オレの名前聞いて、そういう反応をした人は初めてです。その、なんというか、いやー」

「?」

 名前を笑われ続けたせいで、一般の人が名乗った時のようなリアクションに慣れていないスシだった。マヤにハートをわしづかみにされた気がした。

「あ、マヤさん。あなたのような人ならオレの名前を知ってもらっていいし、むしろ知ってもらいたいですけど。でもオレ、転校をきっかけに、一般生徒に自分の名前を広く知られず、知る人ぞ知るとなるといいなと思っているんですよ」

「はい」

「なので、あんまりあちこちで触れ回らないで下さいね、この名前」

「わかりました。スシくん、これからもよろしくお願いします・・・」

 マヤは、スシの黄緑色のバイクにチラッチラッと目をやった。「この荷物結構重いんですよ」というジェスチャーも混ぜた。しかしスシの方は、転校初日の朝にマヤのような女子と話ができたうれしさでいっぱいで、マヤの動きが何を意味するのか考えてあげられなかった。

「オレ、マヤさんと同じクラスだといいなあ」

「同じクラスですよ。1組でしょう?」

「え? 同じクラスなんですか! でも、どうしてそんなの知ってるんですか?」

「あ、いえ、うふふ」

「?」

「いえ、その、生徒会役員だと、一般生徒が知らないことも知ってたりするんですよ」

 スシはマヤの言うことが何か変とは思ったが、このマヤが同じクラスというだけで、とてつもなく幸せな気分になっていた。

「マヤさん。じゃあオレ、バイクで向こうの道から回りますね」

「スシくん」

「なんでしょう?」

「スシくんに質問です」

「質問ですか?」

「あなたが今日から通う泥縄第二高校について、あなたが知っていることがあれば、聞かせてください」

「あ、はい。生徒会は、生徒会長だけが選挙で選ばれて、副会長以下の選挙はない。残りの役員は生徒会長が選任する」

「あっ。・・・。他の系列校にまで、そんな一見どうでもいいような豆知識が伝わっているんですね。で、その豆知識の続きとかは・・・?」

「え? ああ、会長が男子で副会長が女子、あるいはその逆となった場合、」

「・・・」

「それは、会長が副会長に告白して副会長がそれを受け入れたとみなされる」

「えー? そこまで他の系列校に知れ渡ってるんですか? しかもそれが学校の予備知識で真っ先に出てくるんですね・・・」

「いえ、その部分は、続きを知っているかと聞かれたから言っただけです。オレの心の一番初めにあったわけじゃないですよ」

「そうですか。そうですよね」

「そうですよ」

「では次の質問です」

「まだあるんですか?」

「スシくんは、今までに特定の異性と付き合った経験はありますか?」

「特にないですけど」

「即答ですね」

「なんでマヤさんは、そんなことをオレに聞くのでしょう?」

「それはですね、スシくんにそういう経験があれば、女の子の洋服を買うのに付き合ったり、ふたりきりの時にふざけて女の子の服を着せられたりして、女子力が高まるかと。女子力が高ければ今後の活躍に役立つかと・・・」

「活躍?」

「あ、いえ、こっちの話です。でも確かにぶしつけな質問でしたね。すみません」

「なんだかよくわからないけど、そろそろ学校に急がないとまずいですよ、マヤさん」

「歩きだと通れるけどバイクは通れない道があって、わたしはそっちを通ります。学校へはそっちの方がだいぶ近くて、スシくんが通る道とまた合流しますから、登校中にまた会えるかもしれませんね。わたし、3・4時間目にはクラスにいますので、またその時に」

 マヤは、再びチラッチラッとスシの黄緑色のバイクに目をやったが、またもスシは気付かなかった。マヤはあきらめたように力なく笑った。

 スシはバイクにまたがり、マヤに一礼して走り去った。

 マヤは残念そうにつぶやいた。

「あー、行ってしまいました。でもまあ、いいです」

 スシの方は、黄緑色のバイクを走らせながら、マヤとの会話を振り返っていた。最後にマヤにされた妙な質問によって、スシの胸は異常に高鳴っていた。

(マヤさんが異性と付き合ったことがあるかと質問してきたのは、ひょっとして、遠回しに、わたしが最初にあなたと付き合う異性になってもいい、と言っていたのではッ!)

 スシくん、それは違うんじゃないかな。

(マヤさんはことによると、オレに告白されれば検討する、あるいは告白されることを待っている、そういう意思いし表示だったのだろうかッ!)

 スシくん、それはないでしょ。

(困るなあ、初対面だというのに!)

 スシくん、何考えてんだか。

 スシはバイクが通れる方の道へ大きく迂回うかいして学校に向かった。

 信号待ちをしたりして、10分以上走った。

 そのうちに再び、歩きの生徒がまた多くいる、もとの歩道がない道に合流したので、そーっと走った。

 前方に、さっき見た大きな荷物が歩いているのが見えた。

(あ、ほんとだ。また会えた。歩いて先回りしたマヤさんだ)

 スシは、クラクションを短く鳴らして通り過ぎようと思った。


 荷物を背負った女生徒は、道のすみっこからいきなり中央に出て、両腕で大きなバッテンをつくってスシのバイクの前に立ちふさがり、力ずくでスシのバイクを止めにかかった。


「スシくん!」

「ぎゃふん!」

 スシはあわててブレーキを掛けた。思わず口から「ぎゃふん!」と出た。バイクは後輪が跳ね上がる「ジャックナイフ」と呼ばれる状態になって、なんとか止まった。

「あっぶね! 危ないですよマヤさん! たまたまオレの運転技術が卓越たくえつしていたから良かったようなものの。それと、オレの名前あんまり口にしないでくださいな」

 スシは女生徒と目を見合わせた。

「あれ?」

 スシが「マヤ」と呼びかけてしまった女生徒は、マヤではないようだった。スシは、こんな荷物を運んでいる女生徒が複数いるとは思わなかったので驚いた。

「マヤさんかと思ったらマヤさんではない。きみ、誰?」

「きみ、誰って、ごあいさつねえ。わたしは前期生徒会で生徒会長をやっている、クロハ会長という者よ。2年」

「生徒会長をやっているクロハ会長って、『会長』がカブッている観があるけど、まあいいか。オレも2年だよ。でもクロハさん、その荷物、マヤさんが持ってたんじゃないの?」

「あんまり重くてマヤがかわいそうだから、途中で交代したの。ねえきみ、わたしのこの姿を見れば、普通はマヤと交代したんだと思うでしょ?」

「普通、そうは思わないよ。オレ、あなたの背中側から走って来たし」

 スシはクロハ会長を、正面からまじまじと見た。クロハ会長の身長はスシやマヤと同じ169センチ程度で、女子として高い方か。髪形はマヤと同じロングのストレートだが、前髪は真ん中分け。変装用かと見まがうような大きくて黒いプラスチックフレームのメガネをかけ、制服のスカート丈はマヤと共通。白のソックス、ローファーもまおんなじ。メガネのせいで容姿ははっきりとわからないが、かなりのクオリティなのは間違いなさそうだ。声はマヤに似たメゾソプラノだが、マヤと違って、まくしたててくる。スレンダーなモデル体型でマヤとは違うカッコ良さだが、胸はこの年代の女子としてもそうある方ではない。

「で、マヤさんでないきみが、オレになんの用?」


「マヤじゃないと話しかけちゃいけないのか!」


 スシは、クロハ会長の剣幕けんまくにびびった。

「あ、そういうわけじゃないです。ないですよ。言い方がまずかったね、ごめん。クロハさん、いきなりオレのバイクを止めたりして、なんの用?」

「きみに止まってもらったのは他でもないの。わたしが荷物をマヤから引き継いだはいいけど、重くて重くて。この辺でバイクでも止まってくれるといいのに、とわたしが思ったわけ」

「?」

「ほら、スシくん。女子がこんな大荷物(かか)えて大変だなあとか、普通思ったりするでしょ?」

「え?」

「普通の男の子だったら、バイクの後ろに乗せてあげようかなあ、とか思うんじゃない?」

「え?」

「行き先はどうせ同じ学校なんだし」

「は。今聞いた話を総合すると、クロハさんは自分の荷物が重いから、初対面の人間のバイクを止めて、便乗しようとしたと」

「そう」

「ところでオレの名前、マヤさんに聞いたの? マヤさんにちゃんと言ったのに。この名前恥ずかしいから、あんまり触れ回らないでって」

「マヤから聞いたんじゃない。聞いてはいない。ほら、生徒会長だと転校生の情報が事前にわかってたりするのよ」

「じゃあマヤさんもオレの名前知ってたの?」

「アレは知らなかったと思う(汗)」

「アレて。クロハさん、マヤさんの扱いが粗末だな」

「そうかな? 自覚ないけど。それよりわたし、荷物は重いし、ローファーに慣れてなくて、靴ずれしちゃってきついの。あ、もちろんこのローファー、自分の靴だよ?」

「人から借りた靴かなあとか、誰も疑ってないよ?」

「ねえ、ほら、わたしってばこんなにかわいそうなんだから、後ろに乗せたくなったでしょ」

「いやいやいや。そういうわけにいかない」

「あら、どうして? バイクの中型免許取って1年たってなくて、ふたり乗りできないとか?」

「いや、オレ4月2日生まれ。去年、16歳の誕生日に免許取ったから、1週間前にふたり乗りは解禁になってる。でもヘルメットが自分の分しかないんだ」

「あら」

「そういうわけで、ごめんね。マヤさんによろしく」

「そういうわけで、ごめんね。マヤさんによろしく」

「? マネしないでよ」

「あ、ごめんごめん。これはちょっと、スシくんのキャラクターを研究しようと思ってやってることだから、気にしないで」

「そんなあやしいこと言われると、気にするなと言われても気になるけど」

「おお、そうだ。待って。ヘルメットだったらあるから」

「工事用とか、野球用とかはだめだよ」

 クロハ会長は大きな荷物を道に下ろし、本当に中からバイク用のヘルメットを出した。

「えー、本当だ。クロハさん、なぜこんなものが荷物に入ってるの?」

「これはスシくんのバイクを前期生徒会執行部で活用するため備品として購入・・・」

「え?」

「い、いや、こっちの話よ。ねえ、ヘルメットもあることだし、乗せてよ」

 スシは根負けしたというか、「ヘルメットを持っているなら乗せてもいいか」という気になって、スタンドを立ててバイクを駐立ちゅうりつさせた。クロハ会長の荷物をバイクのシート後端にせ、ロープで厳重に固定した。クロハ会長はバイク用のヘルメットをかぶったことがないらしく、あごひも固定などにもたもたしていたので、スシが手伝った。

 スシの後ろにクロハ会長が跨ろうとしたが、元々シートはふたりが乗る分の長さしかなく、荷物をくくりつけたことで乗車スペースは極端にせまくなった。クロハ会長がスシの背中におぶさるような、密着した乗車姿勢を取らざるを得なかった。

 クロハ会長はもう自分で歩かなくていいという喜びが勝って、初対面の男子に密着するのもお構いなしだった。

 スシは黄緑色のバイクを発進させた。細い道なのでゆっくりゆっくり走った。 

「わたしは前期生徒会の会長、クロハ会長ね」

「それはもう聞いたけど。2回目も『会長』がカブったのはどうしたものか」

「ねえスシくん、なんかわたしに邪険じゃけんじゃない?」

「そんなことないよ」

「わたしにいきなり名前呼ばれて怒った?」

「そんなことないよ」

「クラスであなたが名乗る前に、生徒会役員が名前を広めたりしないから、安心して」

「オレ、クラスで名乗らないで済むなら、名乗らないからね」

「そういうわけにもいかないと思うけど」

「・・・」

「スシくん、口数が少ないぞ?」

「・・・」

「ひょっとして『乗せているのがマヤだったら良かったのに』とか思った?」

「えっ!」

 ヘルメットの中のスシの顔は、真っ赤になった。

(ひええ! クロハ会長が後ろでよかった・・・。こんなカオ見せられん)

 スシは平静をよそおい、クロハ会長に質問し返した。

「そ、そういえば、この大荷物をクロハさんに引きいだマヤさんは、どこへ行ったの?」

「うっ。・・・。ほ、ほら、歩行者しか通れない脇道わきみちに向かったのよ。ウフ、ウフフ」

「なんか、ごまかしてない?」

「そんなことないよう」

 クロハ会長はほっぺをぷうっとふくらませた。

 スシは、バイクの背中のクロハ会長に多少のあやしさを感じつつも、「女子がこんなに自分に密着してくれるのはいいなあ。デオドラントだろうか、マヤさんとは違った香り。クロハさんもオレと同じクラスだといいなあ」と思っていた。ちょっと調子よかった。

「スシくん、わたしスカートの下はハーフパンツだから、もう少しバサバサさせて走っても平気だよ?」

「そっか。じゃあもう少しだけスピード出そうか」

 バイクのスピードが上がった。クロハ会長は振り落とされないように、スシの体に回した両腕にぎゅーっと力を入れ、自分の体をさらに密着させた。

「あっ・・・」

「スシくん」

「はい?」

「ひょっとして、背中がマヤだったら良かったのに、とか思った?」

「うっ。・・・。ほ、ほら」

「なぜ口ごもる?」

「うっ。・・・。ほ、ほら。そんなこと思ってないから!」

「ごめんね。マヤより部分的に控えめで」

「うっ。・・・。ほ、ほら。そんなこと思ってないから!」

「『うっ。・・・。ほ、ほら』が多いぞ?」

「もう! 助けてえ! あの、このことマヤさんに言わない?」

「約束する。言わない。というか、言う必要がない」

「?」

「ほらあ、どう思ってたの?」

 クロハ会長はいじわるく笑った。スシは、自分の後ろにいるクロハ会長の顔は見えなかったが、どんな顔をしているか想像がついたので緊張した。

「スシくん、ほら、ほら」

「もう! クロハさんにくっついてもらうのもいいなあ、って思ってました!」

 クロハ会長は、意表を突かれたという表情になった。


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