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今日から学校と仕事、始まります。②莞

運転免許を返納する時は、お疲れ様とかじゃない

作者: 孤独

ドゴオォッ


最近、交通事故が多い。特に高齢者による交通事故。

年齢による体の衰えと感覚の鈍化、勘違いというボケ。さらにこれまで車を運転してきたという、自信がそーいう事を引き起こす。運転免許の自主返納も勧められている時代にもなった。


ああ、どうか。


一般家庭にも自動運転が浸透される生活にならないものか。



「コラーーッ!なにぶつけてくれるんだーー!」


三矢が運転する車は、信号待ちのところに後ろから思い切りぶつけられた。ブレーキまったくなしの衝突。

ブレーキの踏み間違い。怪我人が出なかったのだけが、救いである。


「あ、ああぁっ……」


事故を起こした高齢の運転手は混乱気味。だが、三矢の車だけにぶつかっただけで済んでいるのは幸いか。周囲の人達は、大惨事にならなくてホッとはしている状態で、眺めている。


「俺、不幸だよ!車が傷付いてんじゃん!」


運転手はパニック状態でオロオロするしかない。当て逃げされてさらに事故を起こすかより、マシ。相当、低いハードルでの対応をしている。ひとまず、警察を呼んで事故対応をしてもらうのと。


「あんたは怪我してないんだよな?救急車も呼ぶぞ!」


念のため、救急車も手配。

細かい事故の原因なり、補償なりはまた後日となる。


◇        ◇


「は?交通事故を起こしてない?」

「おい!昨日ことを覚えてないとか、ふざけんな!」


警察官と三矢は、唖然としている顔だった。

お互いに体だけは無事だった。ここからは保証の話しとなったわけだが、


「儂が運転してたという証拠がどこにあるんじゃ!」

「ドラレコあるし、写真とか撮ってますよ」

「なにがドライブレコーダーじゃ!!写真ってなんじゃーー!」

「略称分かってる時点で、ボケられてねぇーじゃん」


運転していた人は自分がボケていて、事故なんて起こしていないと、訴え始めた。名誉毀損だとも言ってきているわけだが、三矢と警察からしたら物損事故、過失運転が余裕でとれる。

三矢の車が買ったばかりの新車であり、かなりの請求額だった。おまけに自分の車も結構な破損。保険も利いてはいるが、ちょっとビックリの額。なにより運転手にとって最悪なのは、10対0の完全敗北。三矢は何も払う必要なしであった。


いやほんと、死亡事故にならなくて良かったと思いたいのに、こんな言い訳をされるとは思わなかった。


「儂は車なんかもっとらん!あれ、息子の車じゃ!儂やってない!だから、儂じゃないもん!」

「息子さんの車で事故を起こすんですか……」

「おいおい。見苦しすぎるぞ、ホント。っていうか、”だから”とか使うな」


確かに車の本当の持ち主は違った。


「爺ちゃん。俺の車だって!親父のは別じゃん」

「わわわわ、どどど、どっちでもええんじゃ!!黙っとれ、孫!」

「あ、お孫さんの車でしたね。今、確認とれました」

「孫が買った車で事故を起こすなよ、爺!!」


今時、珍しく。20代の子が車を買っているという……。これはもう、車を買ってくれとお願いする車業界さんもお怒りの事故であった。

お孫さんの方はしっかりしているのか、責任を感じているのか。


「爺ちゃんに鍵を貸しちゃった俺の責任もあります。車を貸す人間にも責任はあるんですよね」

「……そうですねぇ。あなたの責任も問われます」

「あ!じゃあ、爺ちゃんが勝手に鍵をパクッたとかにしてください!」

「それでも変わらない」


事故を起こしていないからこそ、冷静なんだろう……。

お孫さんの方が話しを仕切る感じで対応してくれる。ああ、ホントにこーいう時。子供やお孫がいるのはいいものだと、まだ独身の三矢はヒシヒシと感じる。老いた自分を助けてくれるのは、自分が産んだ子供だけなのかって。

一方で……


「儂はやってない儂はやってない」

「年取ると大変だな」


免停の経験があっても、未だに自分はミスをしておらず、完璧な運転ができると思っている人ほど。


「爺ちゃん。車を運転するのはもう辞めな。もう鍵、渡さないけど」

「だから!儂は事故なんか起こしておらん!」


現実を受け入れたくないんだろう。

幾度とそんなことはあったろうに。


「これはなんかの夢じゃ!だ、騙されておるんじゃ!孫!」

「そー思いたいけど、俺の車壊れてるしね。ってか、壊されてるんだけど」

「お爺さん、免許の返納をしてください。今回は物損でしたけど、下手すれば殺人になりましたよ」

「わ、儂の運転が危ないとでも言うのか!こいつが避けないのが悪いんじゃ!」

「赤信号で停止中の車がなんで避けれんだよ!むしろ、もっと危ねぇ!事故を起こしてるの、お前!!」


現実的なことじゃないことが起こる。そんな日常ばかりだ。

ひとまず、自分自身の車の買い替えは


「まー、爺ちゃんが死んだ時の金で、新車を買うようにするから安心してくれよ」

「孫、辛辣だな」





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― 新着の感想 ―
[良い点] コメディ調で、楽しく読めましたが、実際ありそうで、しゃれにならない話ですよね。
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